- Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
- / ISBN・EAN: 9784065283967
感想・レビュー・書評
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ミステリーでもホラーでもないのに怖くて面白い。あれはなんだったんだろう?って読み終わってしばらく経った後も考えてしまう。
この作品に限らず、今村夏子の作品ってずっと心にひっかかる。 -
新刊が出れば、必ず購入している作家のひとり。
期待通り、おもしろかったです。
表題作「とんこつQ&A」のほか、「嘘の道」「良夫婦」「冷たい大根の煮物」の計4編を収録した短編集。
ぼくは「嘘の道」が大変気に入りました。
小学生の「僕」が主人公。
「僕」には、1つ違いの姉がいます。
そして、姉の同級生の与田正。
この与田正が、学校でも有名な「嘘つき」で、みんなからいじめを受けています。
姉も与田正を毛嫌いしており、両親にもたびたび与田正の悪口を言い、両親も同調するどころか、与田正の親にまで非難の矛先を向けるのです。
むむー。
あるぞ、あるある。
ただ、学校が「いじめをなくそう!」という全体目標を掲げると、児童たちは人が変わったように与田正に優しく接するようになります。
ところが、全体目標が「読書の秋、一人三冊本を読もう!」に替わると、「これまで以上の激しさをもって、与田正をいじめた」のです。
このあたりの展開が、子どもの素直さと、それとは裏腹の残酷さを浮き彫りにして読ませます。
さて、それと前後して、「僕」と姉に、ある事件が起きます。
このあたりはネタバレになるので書きませんが、その後の展開には終始、胸中がざわつき、クライマックスでは戦慄を覚えました。
まさか、こんな結末が待っていようとは!
これが、今村ワールド。
ほのぼのとした物語を楽しく読み進めるうちに、気付けばとんでもない陥穽にはまり込んでいるのです。
ほんっとに油断がならない。
最後の「冷たい大根の煮物」だってそう。
人の噂を信じてはいけない、という主人公の女性の思いに共感しながら読み進めると、手痛いしっぺ返しが待っているのです。
いや、実にお見事。
これからも追い掛けますので。 -
今村夏子版「注文の多い料理店」
無邪気な父子に飲み込まれる丘崎さん。
との話も、真っ直ぐで純粋な人たちの不気味さを描いている。いつもの今村ワールド。
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かわいい表紙ですが
どの話もゾワッとする話ばかり。
個人的に 嘘の道 が1番ゾワッとした。
けど また他の話も読みたくなるのが
今村夏子さんの魅力だなーと思います笑
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表題【とんこつQ&A】は、大好きな【コンビニ人間】を彷彿とさせるようなストーリーでとても面白かった。こういう、ちょっとヤバいけど一生懸命生きてる人、を描いた作品が好きです。
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久しぶりの今村夏子は短編集。以下個別に。
■とんこつQ&A
「とんこつ」という店名の中華料理店でアルバイトすることになった「わたし=今川さん」は、コミュ障でお客様に「いらっしゃいませ」と言うことすらできない。しかし店の大将と、幼い坊ちゃんは大変優しく、そんな彼女を全く責めず温かくフォローしてくれる。なんとか彼らの役に立ちたい今川さんはついに自分も「メモに書いたものを読むことならできる」ことに気づき、それを実行に移すように。驚くほどスムーズに仕事できるようになった今川さん、メモはどんどん増えてゆき、ついに「とんこつQ&A」とまでなる。そんなある日、新たなアルバイトがやってくる。入ったころの今川さん以上に使えないおばさん丘崎さん、にも関わらず、彼女が関西弁を話せるというだけで、大将とぼっちゃんは彼女を新しい「おかみさん」「お母さん」として持ち上げ始め…。
前半は良い話かと思いきや、後半の狂気が凄い。むろん、良い人すぎる大将と坊ちゃんの様子にそこはかとない不安は感じるのだけど、彼らが募集したかったのはアルバイトではなく「新しいお母さん」だったとは…。相変わらず今村夏子はホラーなのだけど、ここまでくるともしかしていっそ笑った方がいいやつ?みたいな気もしてくる。
■嘘の道
子供の頃から嘘つきのレッテルを貼られている少年がいる。主人公姉弟は彼を馬鹿にしきっていたが、あるとき自分たちの親切(のつもり)が失策となり老婆に怪我をさせてしまったことが、嘘つき少年のせいにされてしまう。自分たちが疑われなかったことにほっとする反面、いつか真犯人とバレるのでは…と怯えるうちに姉弟は…。
これもまたなんとも嫌~な気持ちにさせられた。人間の弱さ、醜さのえぐり方が、今村夏子はえぐすぎる。
■良夫婦
サクランボの木のある家に住む友加里と幹也の夫婦。あるとき学校帰りの小学生たちの中にいじめられているような少年タムを見かけた友加里は、以来タム少年を気に掛けるようになる。おやつを与えると貪るように食べ、虐待のような痣も時折みられるタムのことが気になって仕方ない友加里は必要以上にタムに接近を試みるが…。
とにかくこの友加里が最初から最後まで気持ち悪い。ただの親切な女性風の序盤から、偽善臭がぷんぷん。彼女は虐待されているかもしれない少年に親切にする自分が好きなだけ、相手から感謝されたい、英雄視されたいという自己陶酔感しかしない。夫はそんな妻の暴走身勝手による犯罪を過去にも隠蔽しており今回も…。
■冷たい大根の煮物
一人暮らしをしながら工場でアルバイトを始めた19歳の主人公は、同じ工場の別の部署で働く芝山さんというおばさんと親しくなる。しかし芝山さんは小さなな借金を身近な人に頼んでは返さないことで有名な人だった。主人公は警戒するが、芝山さんは自炊をしない彼女のために料理をしてくれたり、意外と親切。しかしついにある日…。
結末はもちろんアレだけど、収録作の中では唯一「良い話」の部類だったように思う。芝山さんは、どこにでもいそうなタイプで、迷惑をこうむったとしても狂気は感じない。さんざんご飯を作ってもらっていた主人公が、さほど損をしたとも思っていなさそうだし、なにより結果的に彼女は成長したので、救いはある。