とんこつQ&A

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  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784065283967

感想・レビュー・書評

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  • 今回も興味深く拝読した。

    「今村夏子」が好きな方はどの辺を好きで読んでるのか気になる。

    私としては象徴として書いてる様子に「あるよね」となる。
    最後笑ってしまう時と苦々しく思う時があるが、読後感はなぜかホッとする。

    とんこつという中華料理店で働き始める主人公。
    接客がうまく出来ないためメモに書く。それが「とんこつQ&A」。

    今村夏子の既刊を読み終えてしまったので新刊を待ちたいと思う。

  • 今村夏子さん、やっぱり好きです。ゾワゾワ感、後味(嫌な感じで)が残る感覚、、、。この世界観にハマれるのが楽しいです。

  • 何の前情報もなく読み始めたので、タイトルから勝手にラーメン屋さんの話かなと思っていた。まぁ実際ラーメン(しょうゆだけど)も提供しているお店の話ではあったのだけど、私が想像していたほのぼのした話ではなく、読み進めていくと不穏な空気に…。終わり方が恐怖。自分がセリフを作って、みんなでそのセリフ通りに会話してるってことだよね…。

    そのほかの作品もホラーではないものの、何だか少しゾッとするような作品だった。でも、読みやすいのは短編だから?一番最後に収録されてる「冷たい大根の煮物」は一番平和な感じで、最後に読んで後味よく読み終えることができた。お味噌汁飲みたくなった。

  • 「世にも奇妙な物語」にでてきそうなお話たちでした。
    どれも不思議ワールドで面白かった。
    今村夏子さんの頭の中をのぞいたら、さぞかし驚愕しそうです。

  • ふとしたことから、大将と息子さん「ぼっちゃん」の2人で切り盛りしている中華料理店「とんこつ」で働くことになったわたし。なかなか仕事に慣れないどころか、「いらっしゃいませ」さえ言えないわたしを温かく見守ってくれる2人。そんな2人の期待に応えようとわたしはある秘策を思いつく。(表題作『とんこつQ&A』ほか3編。)

     いやいやいや……と突っ込みながら、いつの間にかクセになる今村ワールド。ダメだと知っていながら、乾いてもない瘡蓋をじわじわ剥がすような、何とも言えない感じなのに、ついついおかわりをしてしまうのが不思議。今回はつい「ほのぼの」としそうになり、慌てました。

  • タイトル、単行本の装丁、配色がかわいい。スピンの色も好み。
    だが、ポップな外観からは想像できないほど一話一話が重くて、間に別の本を挟みたくなるほど体力を必要とした。
    表題作「とんこつQ&A」は、とんこつ店主とぼっちゃんがとんでもなくいい人で、不器用ながらできる範囲で努力する今川さんとの3人のやりとりが微笑ましくほっこり。
    していたのも束の間、途中からとんこつ親子の様子に違和感が出てきて、丘崎さんが入ってからはもう一気に恐怖空間に。全員変わってるが、私的にはとんこつ親子に一番狂気を感じた。
    今川さんを興味深くみていたら横にもっと変わってる人がいる、という読者の視点が移る感じが「むらさきのスカートの女」を彷彿とさせ、著者はこういうのが得意なのか!と思った。
    「嘘の道」「良夫婦」はもやっとした嫌な読後感だが、良夫婦の何もなかったかのように日常で話が終わったところは特に怖い。

  • 己の中に現れる「悪」「狡さ」。うっかりそこが露呈してしまった時の「怖さ」。あり得ないだろうけどこれがもし自分だったら、と思うと背筋が凍る。いやこれまであり得ないふりをしていただけで、もしかしたらどこかで起こっていたことかもしれない。狂っていたのは私だったかもしれない。そんな読後感を残す4編の物語が並ぶ。全ての話が何かしら後味が悪いのだけど『とんこつQ&A』『冷たい大根の煮物』は、もしかしたらその人にとってはこれでいいのか、と、思わせてくれる何かがあった。しかしこういう設定、よく思いつくなあ。ほんっとに面白い。深夜ドラマで、安藤サクラ(『とんこつ〜』)、田中裕子(『冷たい〜』)主演でありそうだなあ、などと想像するのも楽し。今村夏子作品は、なんだかんだ全部読んでいる。

  • 中華料理店「とんこつ」で働き始めた私。けど「いらっしゃいませ」が言えない、「ありがとうございました」が出てこない私が編み出した秘策とは。

    やはり表題作の「とんこつQ&A」が一番面白いかな。「嘘の道」「良夫婦」はさらに日常に潜むほんの小さな違和感を描いている。まあ、こういうことってあるよね、的な。

  • アメトーークの「本屋で読書芸人」に感化されて手にとり。接客が大苦手な中華料理屋のバイトが、文を読むなら言えると、「いらっしゃいませ」から始まり詳細なマニュアルを作り、それが小説に、という話だったが、読んでみるともちろんマニュアルだけで小説にはなってなかった。けれど、店員としてはぽんこつな主人公をあたたかく受け入れてくれるバイト先の父子、自分が少しできるようになると、最初の頃の自分を忘れて、新しいバイトが接客できないことにいらだってしまうこと。でも、新たなマニュアル作りが新たな関係を産み、父子と主人公と新しいバイトの関係性も変わっていき…と最後は気持ちがあたためられた心地の表題作。あとの三編は、自分たちのしてしまったことを嘘つきと言われる同級生のせいにしてしまったことで、外に出られなくなった姉、気がつくと空気のように存在が忘れられてしまったと感じた弟。自分の利己的な動機で起こしたことを保身のために認められず、二度とも夫に後始末してもらい、結局は被害者のせいということにおさまってしまった妻。あの人にお金を課してはダメと忠告されてたのに、気がつくと懐に入られ、けどお金もせびられず、ご飯などつくってくれて仲良くなり、この人はそんな人じゃないと思った矢先に一万円貸して次の日に消えられるお話、とひんやりとするお話三編で気持ちを冷やされる。

  • 人に優しくなかったり、嘘つきだったり。責任から逃れようとする卑怯な根性だったり。好ましくない性根の悪さについての自戒のような物語が4篇。
    誰だって子どもの頃は卑怯なものだし、読みながら、忘れていたいつかの良心の呵責が再燃する。
    『あひる』に感じた「パーソナルスペースが侵される不気味さ、不快感」も健在で癖になる。

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著者プロフィール

1980年広島県生まれ。2010年『あたらしい娘』で「太宰治賞」を受賞。『こちらあみ子』と改題し、同作と新作中短編「ピクニック」を収めた『こちらあみ子』で、11年に「三島由紀夫賞」受賞する。17年『あひる』で「河合隼雄物語賞」、『星の子』で「野間文芸新人賞」、19年『むらさきのスカートの女』で「芥川賞」を受賞する。

今村夏子の作品

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