- Amazon.co.jp ・本 (232ページ)
- / ISBN・EAN: 9784087466065
感想・レビュー・書評
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時代を感じる美しい文体で、背徳的なマゾヒズム小説!この融合は新しい。
谷崎がエロスと言われるのがよく分かった。
衝撃が大きかったのは、少年。
10歳の少年たちが好奇心で知ってしまったのはマゾヒズムの快楽でした…
物語が面白かったのは、麒麟。
孔子の旅の途中、美しい妃に心をとらわれている国王の元で教えを説き、貧困していた国は生まれ変わる。
妃の、国王を奪われた嫉妬心は激しく、国王は結局また詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
文豪・谷崎潤一郎のマゾヒズム、被虐趣味的な短編を集めた作品。
「マゾヒズム」と聞くと女王様に鞭打たれたりロウソクで責められたりだとかハードな調教で悦ぶドマゾが思い浮かぶと思うけど、ここに載ってるのはわりとソフトなマゾばっかり。
「遊び」を通じてマゾに目覚める少年や、人に笑われて女にいじめられてヒイヒイ喜んじゃう太鼓持ちの男、国を傾ける悪女から逃げられない皇帝(この話は音読すると気持ちいい)、不思議な魅力をもつ魔術師に醜い動物に変えられる男に、一人の毒婦を奪い合って堕ちていく三人の男。
いいように使われてるのも遊ばれてるのもわかってる、でもこうして女に振り回されるのがどうにもやめられない、堕ちる悦びにうち震える、もうどうしようもない男たちの見本市。
谷崎潤一郎読んでみたいけど、どこから始めればいいの…って人におすすめの一冊。 -
日本に於けるクリップン事件がすき
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<谷崎潤一郎犯罪小説集>が素晴らしく好みだったので、「じゃあ次…」と思ったらそのものすぎる小説集…!果して。美しかったー、やっぱり文章が本当に美しい!狂気を美しくとろかす文章。すごく好き。一番好きなのは<魔術師>だけど、<麒麟>と<一と房の髪>も好き。<少年>はラスト以外ちっとも好きじゃないけど、ピアノの音の描写が美しすぎてうっとりした。倒錯って一種の狂気で、美しい文章でとろけて流れだす狂気は本当に魅惑的。それにしても!最後のみうらじゅん氏の鑑賞とかいう文章、蛇足じゃないですか…。全力で好きじゃない!
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谷崎のいわゆる耽美のその一端に触れることはできたかな?
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6編収録の短編集。
「M」のイメージとなると「女王様が男に対し鞭を振るったり、足蹴にしたり、ロウソクのロウを垂らしたり暴言を吐いたり」というのがまず思い浮かびます。
作中にもそういう描写があるのかな、と思っていたのですが、そこまで露骨な表現はなかったです。ほっとしたような残念なような……。
前半の作中の男性たちは性的興奮のためにマゾヒズムを追いかけているという感じではなく、もっと純粋に、そうされる方が楽しいからされているんだという風な、子供が楽しいおもちゃを見つけて遊ぶような感じで無邪気にマゾを楽しんでいる印象を受けました。そして、後半の作品からはそうした無邪気さ以上の楽しさを知ってしまったゆえの人間の欲望というものが表れてきたような作品だったように思います。
そう考えると最初に収録されている『少年』のように子供がマゾの楽しみを覚える話もまったく不自然な話ではないのだな、と思えます。また『幇間』は本当に主人公が嬉しそうで読んでいるこちら側が苦笑してしまいそうでした。彼の笑い顔が自然と頭の中に浮かんできました。
谷崎潤一郎は読み始める前から「マゾヒズム小説」のイメージがとにかく強かったのですが読んでみると文章表現も幻想的で美しいものが多く、特に『少年』のラスト近くの場面や幻想色の強い『魔術師』などでは特にその強さを感じました。
五編目の『一と房の髪』では女性の魔力の強さを実感……。ここで女性に翻弄される男たちは、二重国籍で日本人でも西洋人でもないと語っているのですが、そういう満たされなさを抱えていたからこそ、同じ境遇の女性にここまではまってしまったのかな、と思いました。そして女性側が男性たちのそうした弱さを知ってふるまっていたかと思うと、ますます「女って怖いな」と思ってしまいます(苦笑)
最終話の『日本に於けるクリップン事件』では谷崎のマゾヒズムの定義的な文章が印象的です。この文章を頭に置きつつ他の短編たちを思い返してみると、登場人物たちのまた違った側面を考えることができると思います。 -
初っ端の「少年」が子供のマゾってやつでパンチが効いててすごいですね。逆に他が霞むような。最後の「日本に於けるクリップン事件」はまとめとしては良いです。
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表紙がずいぶんアレだなあと思いながら手に取った(笑)。
「魔術師」は既読だが、他作品もあわせて読んでいくと、登場人物の嗜好におののくのを通り越して、もう「好きにやってくれー」と苦笑してしまいそうになる。と思っていたら、マゾヒストってあくまでも「妄想だけ」が好きなのか……?
うーん、やっぱり理解はできない精神領域だ。 -
変態とは愛であり、ある種の細やかな快感がある。
嫌だと思えば思うほど、
憎ければ憎いほど、
どうしても離れる事ができなくなっていく。 -
とかく文章が美しい
そこで一言で言い表されてしまう驚きがそこかしこにある
ゆっくりと読み返してみたいが、マゾヒズムはやはりどうも共感出来ない
あちこちのマゾヒズム論はとても興味深かった
「幇間」の最後のプロフェッショナルな笑い、など