神々の山嶺 下 (集英社文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (576ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087472233

感想・レビュー・書評

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  • 山登りも人生も同じなんだなとつくづく思う。

    なんのために登ってるのか?ってなんのために生きてるのかって明確な答えは持ち合わせていないけど、山登りなら登頂を目指すし、何かしららの目標とかに向かって突き進んで行くだけで、それを達成してもまた次の目標を追いかけるだけで、それは与えられるものではなく自らが掴みにいくものなんだなと。そしてそれで死んでしまってもそのときに何の途上にいるのかがすごく重要であり、自分の人生を悔いなく生きたと言えるんだなと。

  • ミステリーの趣がありながらも、頂を目指そうとする男たちの物語、とシンプルにまとめられる程熱い話だった。終わり方も素晴らしい。

  • 「夢枕獏」の長篇山岳小説『神々の山嶺』を読みました。

    『ナショナル ジオグラフィック 2003年5月号 エベレスト初登頂50周年』を読んで、「ジョージ・マロリー」はエヴェレストの初登頂に成功したのかどうか… ちょっと気になって、本作品を読みたくなったんですよね。

    -----story-------------
    <上巻>
    カトマンドゥの裏街でカメラマン「深町」は古いコダックを手に入れる。
    そのカメラは「ジョージ・マロリー」がエヴェレスト初登頂に成功したかどうか、という登攀史上最大の謎を解く可能性を秘めていた。
    カメラの過去を追って、「深町」はその男と邂逅する。
    「羽生丈二」。
    伝説の孤高の単独登攀者。
    「羽生」がカトマンドゥで目指すものは?
    「柴田錬三郎」賞に輝いた山岳小説の新たなる古典。

    <下巻>
    その男、「羽生丈二」。
    伝説の単独登攀者にして、死なせたパートナーへの罪障感に苦しむ男。
    「羽生」が目指しているのは、前人未到のエヴェレスト南西壁冬期無酸素単独登頂だった。
    生物の生存を許さぬ8000メートルを越える高所での吐息も凍る登攀が開始される。
    人はなぜ、山に攀るのか?
    永遠のテーマに、いま答えが提示される。
    「柴田錬三郎」賞に輝いた山岳小説の新たなる古典。
    -----------------------

    上下巻で1,000ページ強… 久し振りの長篇作品でしたが、面白くて飽きることなく読了できました。

    終わって欲しくない… 読了するのが名残惜しい… 愉しめたので、読み終わる前は、そんな気持ちでしたね。



    小説を愉しめるかどうかって、物語の中にどれだけのめり込むことができるか… 登場人物にどれだけ感情移入できるかに左右されるのですが、本作品はどっぷり主人公「深町」に感情移入しちゃいましたね。

    まるで自分が「羽生丈二」と一緒にエヴェレスト(サガルマータ、チョモランマ)南西壁冬期無酸素単独登頂を追跡しているような気分になれました。



    それにしても、登攀中(遭難しかけた際)の「深町」の心理描写や「羽生」が遭難した際の手記等は、ホンモノじゃないかと思えるくらいリアルで鬼気迫る内容だったので、それが感情移入できた要因のひとつなんでしょうね。

    「植村直己」や「田部井淳子」、「野口健」等、エヴェレスト登頂に成功した登山家の著書よりも、リアルな感じがするほど、緻密で迫真の描写でした。

    8,000メートル級の山に登るってことは、本当に命懸けのことなんですよね… 改めて実感しました。



    本作品は山岳小説というジャンルの作品になるんでしょうが、、、

    「ジョージ・マロリー」のカメラの発見により、「ジョージ・マロリー」がエヴェレスト初登頂に成功したかどうか… という謎解きを巧く絡め、ミステリー小説の要素や冒険小説の要素も持ち合わせた愉しめる作品に仕上がっています。



    私の稚拙な文書では、とても巧く伝えることができないので、詳細については触れませんが、、、

    あまりにもストイックに登攀にのめり込むため、登山仲間にも馴染ず、他者を寄せ付けなくなった「羽生丈二」と、「羽生」のことを調べるうちに、「羽生」の魅力にとりつかれ、エヴェレスト南西壁冬期無酸素単独登頂では行動を共にするようになる「深町」との間に、徐々に信頼感が芽生え、絆が生まれるまでの展開が、とても好きです。

    人が人に対して心を開くっていうのは、やはり熱意なんでしょうねぇ。



    「深町」がチベット側からエヴェレスト山頂を目指すエンディング… 遭難しそうになって、彼が発見したものは、、、

    真実がわからずモヤモヤしていた胸のつっかえが取れ、良かったなぁ… と思えるシーンでしたね。

    「深町」の運命と「羽生」の執念を改めて感じた場面でした。



    あと、終盤、「羽生」と北アルプス屏風岩を登攀中に遭難死した「岸文太郎」の死の真実… ザイルパートナーの「羽生」がナイフでロープを切ったという噂もありましたが、まさかの真実でしたね。

    う~ん、言葉が出ませんでした。



    それにしても、登山や登攀だけに限らないことですが、何かに我武者羅に打ち込めるっては、イイことだと思いますねぇ。

    生きることの意味… 答えのない問ですが、本書を読んで考えさせられました。

  • 上巻に記載

  • 夜の山の星の綺麗さは筆舌し難いのだろうなぁ。

  • 誘拐事件はアッサリ解決。後半の熱量が凄い。
    氷壁を登るくだりは読んでいて恐い。低酸素の呼吸困難と落ちる恐怖、襲う幻覚。自分だったらと思うととても耐えられる気がしない。逃れられるならいっそ自ら…いや、そもそもそんなところに近付かない(近付けない)な。
    凍傷で指を何本も落としながらも取り憑かれたようにキツい山を目指し続ける山家が以前から恐ろしかったんだけど、あれは畏怖の感情だったんだなと気付いた。
    ラリった状態で書かれた羽生の手記は壮絶だ。
    真冬のエベレストの難しいコースを無酸素で、なんて彼らは夢みたいなロマンを語っているように見え、その実登山には緻密な計画性と知識が求められる。メディアは羽生の残した結果だけを見て好き勝手に書き立てるが、山しか残らなかった男の実情など彼らにわかるわけがなく、また本人にもよくわかってない。
    頂を目指すこと、死ぬこと。それは山に限らない。そして結果ではない。生きてきたという歩みそのもの。山について語る人はそんなふうにいつの間にか人生の話をしている。

  • 河野啓の「デス・ゾーン」を読んでいる中で、夢枕獏の「神々の山領」を知った。山岳小説でこんなに面白い本があるのかと驚いた。八千メートル級の山を登る困難さを、映像ではなく文章で表す技量が見事。ストーリーも秀逸で最後の展開に舌を巻いた。20年以上も前に書かれた本だが、出合えて良かった。

  • カトマンドゥで別人として生きる羽生丈二が
    狙うのは、エヴェレスト南西壁、前人未到の
    冬期無酸素単独登攀。深町は彼を追って
    エヴェレストに入る。羽生の挑戦の行方は?
    深町が目撃したものとは?

  • やっとよみました。上下巻の感想です。
    漫画の方を読みたいなと思って数年たってしまい、結局読んだのは小説の方。有名なだけあって面白くないわけはない。これだけ長いのに漫画のようにするすると読めてしまった。

    ひとつ気になったのは女絡みの話が多いこと。
    山の話をわざわざ手に取る以上、山に人生を捧げた狂った人間の話が一途に読みたいところ。
    主人公がやたらと別れた女や新しい女に言及していてうんざりしてしまった。女々しい。。。羽生との対比が際立つにしても、もう少し主人公には格好良くあってほしかった。

    特に誘拐とか現地妻とかそのあたりの話はいらなかったなぁというのが、恋愛ものが苦手な自分の率直な意見である。

  • エベレスト登頂に至るまでの道のりがどれだけ過酷なものなのか知る。デスゾーンの意味も重みも、小説の形でそこに置かれた人の状況や思考で語られることでようやく少し理解できたように思う。
    極限で己を奮い立たせる羽生や深町の姿に、「生きるとは」と考えさせられる。

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著者プロフィール

1951年、神奈川県出身。第10回日本SF大賞、第21回星雲賞(日本長編部門)、第11回柴田錬三郎賞、第46回吉川英治賞など格調高い文芸賞を多数受賞。主な著作として『陰陽師』『闇狩り師』『餓狼伝』などのシリーズがあり、圧倒的人気を博す。

「2016年 『陰陽師―瀧夜叉姫― ⑧』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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