猫背の王子 (集英社文庫)

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  • 集英社
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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087472684

感想・レビュー・書評

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  • レズの話と言ってしまえば、それだけなんですが、
    とてもとても切ないです

  • 中山氏の第一作。レズビアンの話でありつつ、しかしそれ以上に青春演劇小説といっても差し支えないのでは。彼女の、淫蕩なレズビアンという属性が、破滅をまとった感じを上手く増長させているように感じる。

  • <読了日;2004.9.25>
    王寺ミチルが余りにも自分に似すぎていて驚いた。
    流石に、わたしはミチルほどには激しく感情を表せないけれど。
    自分に似ているから、異常なまでに惹かれてしまったのかもしれない。

    冷めているくせに、自分の愛する物を狂う程求めてしまう。その為には周りの事を顧みない。
    本当は一人じゃ生きていけないくせいに、仲間の事を大切に思っているくせに、そういう感情を上手く表に出せない。だから誤解される。仲間に裏切られる。捨てられる。
    余りにも激しく求めすぎてしまう。余りに感情をむき出しにしてしまう。

    わたしにとっては、特別な一冊。

  • 冒頭一文で引き込まれる。
    あとがきの「自分の中の少数者の声に、つねに耳を傾けよ。」もカッコイイ。

  •  中山可穂先生の小説は「レズビアン小説」と称されることが多いらしい。今作で初めて先生の作品を読んだ私個人としては、この表現は間違いではないが、決してそれだけではないだろうと感じた。

     主人公の王寺ミチルは芯の通った人物で、ひたすら演劇に身を捧げている。ただぼんやりと人生を浪費し女を貪るようなキャラクターではない。もしかすると演劇界には同じような人物がいるのかもしれない……と思わせてくれる、血の通った主人公だった。

     また作者は文化的資本が溢れたところで暮らしていたのだろう、そして知的好奇心に溢れた人物なのだろうと伺える描写がいくつもあった。主人公たちが演じる作品はヒトラーの人生をなぞったものであったし、登場人物の中で最高齢である女性が暮らす館の描写は以下のように建築様式に明るくないと書けない文章であった。

    「バロック、ロココ、アールデコ、アールヌーヴォー、およそ目につく限りありとあらゆるスタイルがごった煮にされてひしめきあっていた」

     ……教養のない私にはどれもピンとこない。今日のうちに調べておこうと思う。二十代と明記されている主人公の視点でこのように描かれている点が美しいと感じた。主人公が家庭教師のアルバイトをしている設定も納得だ。

     また解説(文庫版)の山本文緒氏も以下のように記している。

    「中山可穂の小説のもうひとつの魅力に、芸術に触れる豊かさというものがあると思う。私は音楽も映画も絵画もワインの種類も、からきし芸術方面に乏しいので、彼女の小説にちりばめられた人生を豊かにするキーワードがわからなくて寂しい思いをした」

     この素直な一文により、私が読書中抱いていた文化的教養のなさからくる羞恥の心が幾分か救われたように思う。主人公の彼女が持つ知識が読者側に求められるスタンダードなのではなく、彼女が劇団の長を務めるだけの頭の持ち主であっただけなのだ、と。かっこいいぜ、王寺ミチル。名も知らぬファンとして、私を抱いてくれ。

     ところで、文字列の意味が理解できず作品に没入できないままでいるのも苦しいところがあるので、作中に出てくる音楽については何度かスマホを用いて調べた。

    「女の人を抱くときは、エルガーの行進曲のように典雅に。」

     この一節に差し掛かったタイミングですぐ、「エルガーの行進曲」をApple Musicのサブスクリプション(最近出たクラシック版で!)で検索してみた。

     聴き覚えのある行進曲だった。典雅というより勇敢な曲という印象を受けた。こんなに勇ましい抱き方をするのか。もっと官能的で落ち着いたクラシックかと思ったので、テンポの良い楽曲が流れてきて正直驚いた。これが彼女の中にある、少年らしさというものなのだろうか。


     次に、文体について。この作品は耽美な描写が多いにも関わらず、小気味良くすらすらと読める文体であることが私にとって嬉しかったし、この作家の作品をもっと読みたいと思う大きな理由となった。

     耽美な小説となると難しい熟語を用いられることが多い気がしていて、どうしても読む気になれないことが多かったのだが、この作品は日数でいうと二日でさらりと読めた。話自体が面白かったというのも勿論だが、私のように読み手に教養がなくとも話についていける名文揃いだと感じた。

     また私自身、中学の短い間演劇をやっていたことがあり、その点の感情移入がし易かったというのもあるかもしれない。舞台に立つ直前の緊張感、それまでの悪夢を見る日々、役に入り込む時特有の高揚感、これらの内容は演劇に携わったことのある人ならではの描き方だと感じた。作者は実際、小説を書く前は演劇に携わっていたそうだ。この方の劇も観てみたかった。

     またもう一度、舞台に立ってみたいと思う作品だった。演劇を愛し、賞を取るという目標を持ち、それでいて辛さに押しつぶされそうになって泣き喚くこともあり、睡眠薬を所持していて……か弱いところもある主人公。劇でも私生活でも周りの心を揺さぶり振りまわす。そんな主人公に憧れ、恋焦がれた。

     本作を薦めてくれ、貸してくれた友人に感謝したい。先ほど、自分用に通販で買った。これで返却してもまた読める!


     ここまで、この作品の虜になっている私の文章を見て、それでもまだ本作を「レズビアン小説」だと称する人物がいたら、花束で頬をぶちます。

  • 1時間ぐらいで読んだ。娼年、過激派オペラみ

  • ミチルみたいな人と一緒になっても、あったかい幸せは掴めない。そうわかっていても離れられない、依存させてしまうような魅力がミチルにはあるのだと思う。私も小説の中のミチルという女性に恋に落ちた。王子様みたいだけど乙女でもあって、クールなのに情熱も持っている。やっぱりこういう女性はずるいな。あとやっぱり仕事と恋愛はわけなきゃだめだ。
    中山可穂という作家さんを知って、好きになった1冊。

  • 女たらしの女性の物語。過激な舞台の演出家でもある彼女が、主演女優の脱退やら、腹心の裏切りやら、憧れ女性との接近と離別やら、目まぐるしい日常を駆け抜けていく。イベントてんこ盛りで見どころ満載。キャラの魅力も手伝って、一気読みしちゃいました。以降続くシリーズ続編にも期待。

  • あとがきで作者本人が「自分の書く作品の主人公はどれも王寺ミチルに似ている」と書いていたが、他の作品をいくつか本作より先に読了した私から見てもそれは本当にそう思う。常に血と涙に濡れているような狂気をはらみつつ、それでも耽美で美しくて心惹かれる、中山可穂の文章そのものが王寺ミチルの息遣いのよう。

  • 読み始めはそうでもないのだけど、一旦物語に引きずり込まれると、あっという間に終わってしまう。
    何となく中途半端に終わった様な気がする反面、
    綺麗なラストだったとも思ってしまう。
    まぁ、続編を読んでみよう。

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著者プロフィール

1960年生まれ。早稲田大学卒。93年『猫背の王子』でデビュー。95年『天使の骨』で朝日新人文学賞、2001年『白い薔薇の淵まで』で山本周五郎賞を受賞。著書多数。

「2022年 『感情教育』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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