- Amazon.co.jp ・本 (348ページ)
- / ISBN・EAN: 9784087520095
感想・レビュー・書評
-
やはり名作ですね。何十年も前の話なのに、なぜこんなに読みやすいのか。夏目漱石ファンになっちゃいました
詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
一体何度目の再読なのか。
高校生で読んで以来、度々読み返しているのだけど、その度に胸を突かれる言葉や読後感が変わる。
今回は「時代」を一番強く感じた。
明治維新後、自由で独立した個人の第一世代となった先生やKは、そのことに自負を持っていただろうし、前時代の人々や彼ら一部知識人以外の大衆に対して優越感も持っていただろうが、それが重荷に、強迫観念にすらなってもいたのではないかと思う。
まだ概念だけが空回りしていた頃、独立と孤立の区別がつかなかったのも仕方ない。
仕方ないが哀しい。
と言ってもこれは現在にも通じることで、見物人としてではなく共感した半当事者として、読んでいて痛みを覚えた。
Kは実際の帰属先としての家と、精神の帰属先としての道を失って死んだ。
先生は、天皇の死によって、何にも帰属していないと思っていた自分が明治という時代には帰属していたのだと気づき、終わらせるきっかけを得た、そんな風に今は思う。
哀しい。
でも誰より静が好きな私は、先生もKも背中蹴っ飛ばしてやりたいけどね!ばかばか! -
私は子供の頃、良い人間になりたいと切実に思っていました。
学校の先生は、人に親切にする優しい人間、
人の痛みをわかる人間になりなさいと
口すっぱく言っていたから、
そういう良い人間になろうと思っていたのでした。
そしてそれは容易なことだとも思っていました。
大人になったからよくわかるのだけど、
人に親切にし優しく、
他人の痛みをわかるということは一筋縄ではいきません。
自分が親切と思ってやった行為が他人を傷つける行為になったり
他人の痛みと自分の痛みを平等に見極めることは
とっても難しいことだと思います。
勿論、傷つけたくはない、でも自分が傷つくことも怖いのです。
こころを再読して、そういうことを考えていました。
だれが先生を責められるでしょうか。
自分がこうありたいと思う理想の自分と
自分が行う行動とが必ずしも一致しないことを
大人になるたび、切と感じます。
今もわたしは良い人間になりたいと
心から思うけれども
そうはうまくいかないだろう、ということも
きちんと解っているつもりです。
そうして、そんな自分を
追いつめたりしないぞ、と思っています。 -
高校生の頃、初めて読んだ時「こんなに面白い本があったのか」と驚いた。夏目漱石の作品に嵌まったきっかけでもある。
-
罪に対するモヤモヤ感に身に覚えがある。
-
ほんの一瞬の気の迷いで一生悔やむ事になる。
人を傷つける事と人を愛する事の辛さや重さを感じる本だった。