こころ (集英社文庫)

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  • 集英社
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  • Amazon.co.jp ・本 (348ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087520095

感想・レビュー・書評

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  • やはり名作ですね。何十年も前の話なのに、なぜこんなに読みやすいのか。夏目漱石ファンになっちゃいました

  • 同郷の親友的存在である先生にお嬢さんを奪われた惨めさと、自分のお嬢さんに対する恋心を先生に打ち明けていた恥ずかしさ。
    初めて『こころ』を読んだ高校生の自分は、惨めさとか恥ずかしさからKは自殺したと思っていた。
    今回読み直してみて思ったことは、惨めさや恥ずかしさももちろんKの自殺の要因のひとつではあるけれど、それだけでもないのでは、ということ。

    実家と養家を騙して自分のやりたい勉強をしている後ろめたさ、ほとんど人と関わらない孤独、思い込みの強い性格。
    お嬢さんへの恋心と先生に対する複雑な気持ちとは別に、Kを苦しめる要因はいくつもあったように思える。Kは今でいうところの鬱病か統合失調症だったのではないだろうか。
    だからこそ、暗闇のなかで出会った光、お嬢さんに依存しようとしていたのではないだろうか。

    先生から手紙を受け取った「私」が、もし自殺前の先生に会えて「Kさんはもともと精神を病んでたんじゃないですか。先生がお嬢さんと結婚を決めたから自殺したなんて、自意識過剰かもしれないですよ」なんて言ったとしたら、先生はどんな顔をしただろう。

    Kも先生も同じで、精神を病んで死ぬ理由を探していたところにちょうどいい理由を見つけた、ということなんじゃなかな、と思った。
    Kが失恋だけで死んだなんて認めないぞ。失恋で死ななくちゃいけないなら自分は何回も死ななくちゃいけないことになるし、人類は自殺過多で絶滅してしまう。
    色んな要因が重なった結果、Kは死んだ。そうでなくちゃやりきれない。
    自分は絶対に失恋なんかで死なないぞ。もっと別の理由で死ぬ。そして、遺書を残すときはKの遺書の最後から引用するつもりだ。
    「もっと早く死ぬべきだのになぜ今まで生きていたのだろう」と。

  • 高校の時の現代文の教科書には後半のKの話の、特に大事な部分が載っていたので興味を持ったけれど
    、最初からちゃんと読んでみると先生の過去がなかなか分からない感じにサスペンスのような要素もあって面白い。

    吉永みち子の解説?には先生のことをインテリ症候群(?)のように書いてあって、確かにそんな気もするけど、先生のような境遇の人だとそうなっても仕方がないかもしれません。
    「人間らしくて」私は好きです。

  • 一体何度目の再読なのか。
    高校生で読んで以来、度々読み返しているのだけど、その度に胸を突かれる言葉や読後感が変わる。
    今回は「時代」を一番強く感じた。
    明治維新後、自由で独立した個人の第一世代となった先生やKは、そのことに自負を持っていただろうし、前時代の人々や彼ら一部知識人以外の大衆に対して優越感も持っていただろうが、それが重荷に、強迫観念にすらなってもいたのではないかと思う。
    まだ概念だけが空回りしていた頃、独立と孤立の区別がつかなかったのも仕方ない。
    仕方ないが哀しい。
    と言ってもこれは現在にも通じることで、見物人としてではなく共感した半当事者として、読んでいて痛みを覚えた。
    Kは実際の帰属先としての家と、精神の帰属先としての道を失って死んだ。
    先生は、天皇の死によって、何にも帰属していないと思っていた自分が明治という時代には帰属していたのだと気づき、終わらせるきっかけを得た、そんな風に今は思う。
    哀しい。

    でも誰より静が好きな私は、先生もKも背中蹴っ飛ばしてやりたいけどね!ばかばか!

  • 私は子供の頃、良い人間になりたいと切実に思っていました。
    学校の先生は、人に親切にする優しい人間、
    人の痛みをわかる人間になりなさいと
    口すっぱく言っていたから、
    そういう良い人間になろうと思っていたのでした。
    そしてそれは容易なことだとも思っていました。

    大人になったからよくわかるのだけど、
    人に親切にし優しく、
    他人の痛みをわかるということは一筋縄ではいきません。
    自分が親切と思ってやった行為が他人を傷つける行為になったり
    他人の痛みと自分の痛みを平等に見極めることは
    とっても難しいことだと思います。
    勿論、傷つけたくはない、でも自分が傷つくことも怖いのです。

    こころを再読して、そういうことを考えていました。
    だれが先生を責められるでしょうか。
    自分がこうありたいと思う理想の自分と
    自分が行う行動とが必ずしも一致しないことを
    大人になるたび、切と感じます。
    今もわたしは良い人間になりたいと
    心から思うけれども
    そうはうまくいかないだろう、ということも
    きちんと解っているつもりです。
    そうして、そんな自分を
    追いつめたりしないぞ、と思っています。

  • 高校生の頃、初めて読んだ時「こんなに面白い本があったのか」と驚いた。夏目漱石の作品に嵌まったきっかけでもある。

  •  あらすじは有名すぎるので省略。高校の教科書に載っていた第3章を、先生の授業そっちのけで貪り読んでいたことを思い出す。

     人間なんて、矛盾だらけだ。一度決めたことなんて簡単に覆すし、10年も経てば言ってることやってること変わっていく。でも、みんなそういうズレを「人間らしさ」という言葉でなんとなく正当化して、チューニングしながら世界とつながっていく。
     Kと先生にはそれができなかった。「行為動作が悉く精進の一語で形容される」Kにとって、恋は精神的な向上心の妨げになるものだった。身近な人に欺かれ、裏切られた傷を負う先生も、自分が欺く側の人間になってしまったことが許せなかった。二人が救われる道はなかったのだろうか。死ぬことで、楽になれたのだろうか。読後も悶悶(門構えにこころ!)とした気持ちが晴れない。

  • たまたま友人と同じ人を好きになることは決して珍しいことでもないと思うが、なぜこんな寂しい結末になってしまったのか。
    先生は妻の心を汚すまいと、自殺したKとの詳細を胸に秘めたままいなくなってしまった。話せば良かったのに、と無粋な自分は思ってしまった。親しい周りの人が次々に死んでしまうことのほうが妻の心にはつらいだろうと思った。
    先生は大学卒業後も、Kに対する罪悪感などから死んだように生きていた。そんな先生を慕った「私」に、遺書で赤裸々に過去を打ち明けたが、妻が生きている以上はそれを全て秘密にしておくよう言い残していったのはなかなか酷なことだと思った。

  • 罪に対するモヤモヤ感に身に覚えがある。

  • ほんの一瞬の気の迷いで一生悔やむ事になる。
    人を傷つける事と人を愛する事の辛さや重さを感じる本だった。

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著者プロフィール

1867(慶応3)年、江戸牛込馬場下(現在の新宿区喜久井町)にて誕生。帝国大学英文科卒。松山中学、五高等で英語を教え、英国に留学。帰国後、一高、東大で教鞭をとる。1905(明治38)年、『吾輩は猫である』を発表。翌年、『坊っちゃん』『草枕』など次々と話題作を発表。1907年、新聞社に入社して創作に専念。『三四郎』『それから』『行人』『こころ』等、日本文学史に輝く数々の傑作を著した。最後の大作『明暗』執筆中に胃潰瘍が悪化し永眠。享年50。

「2021年 『夏目漱石大活字本シリーズ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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