こころ (集英社文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (348ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087520095

感想・レビュー・書評

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  • 高校の時に教科書で出会ってから数年おきに読み直してるけど歳をとるにつれて感じ方が全然変わってすごい
    先生と同じくらいの歳になった頃にまた読んでみたい

  • この小説との出会いは高2の現代文の授業であったと思うが、全文をキチンと読んだのは大学に通うために上京してひとり暮らしをしていた頃だった。

    その時は、先生が自ら死を選ばなければいけない理由、決して妻には秘密を打ち明けたくない気持ち、誰にも理解されない苦しさというのがとてもよく理解出来た。連鎖する何かをやろうとしても振り切れない倦怠感、過去の失敗からくる未来への根拠なき不安など、先生のその理屈では説明できない「こころ」を感じることが出来たのだ。

    今、社会人として働き数年が経ち再読した僕には、もう先生の「こころ」が以前のようには理解出来ない。
    妻に説明すればいいのにとすら考えてしまう。

    これが僕にとって成長といえるのかどうか自分では分からない。

  • 名作といわれるのが分かる。過不足なく、必要なものだけでできている物語。
    私、先生、Kの心模様。先生の細君の人生。そういう物語のそとのものがいつまでも心で息をしている。

  • 何十年ぶりかの再読。

    実に重い話だった。
    重すぎてなかなか読めない。

    音だけを追うと
    すらすらと音読できるのに不思議なものだ。

    「K」の死も
    「先生」の死も
    先生を慕う「私」の思いも
    理解できたかというと、大人になっても
    今一つ理解できなかった。

    お嬢さんの本心はどうだったのだろう。

    先生は結局、
    自分が一番大切だったのか。。という気がしてならない。

    自分以外の人を大切にできれば、
    悲劇は避けられたのかもしれないと。

    しかし、
    今、私自身が考えることなど
    実に単純すぎて情けないことこのうえない。

    愛情の形が屈折してるわぁ。

  • まさに人間の心の機微に触れることができる本です。
    先生の行動は一概には同意できるものではないが、善悪とは関係無く、行き着く先はそこしかなかったのだろうと思えた。
    自分が大学卒業間際に、同様の出来事が起きたならどうしたか?いろいろな想像しながら、読み切った。
    夏目漱石の文章は、感覚的なことですが、綺麗だと思いました。

  • 厭世的。自殺…。

  • この小説は、万華鏡だ。とても変化の激しい万華鏡だ。視点を変えると、違った物語が見えてくる。年齢を経て再読すると、以前見えなかったものが見えてくる。だからこそ、万人に読まれ続けているんだろう。

    人間の善悪、心の変化がつぶさに描かれていて、それだけでも充分興味深く読める。自分と重ね合わせてしまうこともあるだろうし、よく似た経験を部分的にでもしたことがある人もいるかもしれない。テーマの普遍性は、この小説の魅力のひとつだ。私など、夜更けに読み始めて、途中でやめられなくなり、手紙部分もまるで自分が『私』になってしまったかのように一気に読んだ。見事に夏目漱石の罠に嵌められてしまった。

    だけどもうひとつ大事な点があると思う。この小説は当時、おそらく大きな時事的問題を取り扱った作品であったろうという点だ。

    乃木将軍の殉死が、小説内には2回出てくる。主人公の父が新聞を読んだ時と、先生の手紙の中だ。おそらくわざとリフレインさせているのだと、ピンと来て調べてみたら、乃木夫人の名前は『先生』の奥方と同じ『静(静子)』であった。この小説の核は、実は乃木将軍の殉死なのではないか。彼の心を、手紙という形で読み解き、その手紙を読者に一気に読ませるための仕掛けを、それ以外のところにちりばめたのではないか。『先生』という呼び名は、晩年学習院院長であった乃木将軍の印象なのではないか。そんな思いが一気に湧いた。

    リフレイン効果は、冒頭部分にもある。『先生』の性格が大きく変わる要因になった事件を、『私』が先生と出会うきっかけになった友人が、とある電報を受け取るシーンで前振りしているようなのだ。他にも、登場人物の対比や、話を少し見せてすぐ引っ込めて謎を置き、読む者の興味を惹きつける手法など、いろいろと心憎い。読み終わってみてから「ああ、やられた!」と気付くことも多い。

    明治期の歴史には弱い私にも、これは何かあると気付かせ、時事ネタを扱っているにも関わらず、1世紀経って事件がニュースではなく歴史となってなお、多数の人の心を動かすとは。

    何年か経って、またこの万華鏡を再び覗いてみたいものだ。

  • 小路幸也さんに薦められたので、頑張って読む。(別に薦めてはいなかったかもだけどw) 「話虫干」を読むと読みたくなりますよw いや、その前に読んでおいた方がいいんですけどね。まぁ、あらすじを知っていれば十分でしたが、さすが名作なだけあって、なかなか感慨深く読むことができました。

  • 「妻が己れの過去に対してもつ記憶を、なるべく純白に保存しておいてやりたいのが私の唯一の希望なのですから、私が死んだ後でも、妻が生きている以上は、あなた限りに打ち明けられた私の秘密として、すべてを腹の中にしまっておいて下さい。」

    先生の遺書のまま、その後の「私」や奥さんの話が描かれないまま終わってしまうのがとても印象的。
    あぁこれを書き終えて、自殺してしまったんだなぁと思うと、その時の先生の「こころ」はどんなものだったのだろう。
    結果的に予感通り、Kと同じ最期の迎え方だが、最後まで暗い予感を抱えていたのだろうか。奥さんへの愛情に多少救われながら死んだのだろうか。それももしかするとKと一致するところになるのだろうか。

  • 手段を選ばず目的を達成したことで、
    生まれた状況が、自らを傷つける。

    そうまでして手に入れたものではなく、
    そうまでして手に入れたことでなくしたものの大きさを知る―。

    自分の中で、どうやって、
    そのおとしまえをどうつけるか?

    人間は、「見えない」生き物なのかもしれない。
    そのために、「見る」ためには、大きな物を失う。

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著者プロフィール

1867(慶応3)年、江戸牛込馬場下(現在の新宿区喜久井町)にて誕生。帝国大学英文科卒。松山中学、五高等で英語を教え、英国に留学。帰国後、一高、東大で教鞭をとる。1905(明治38)年、『吾輩は猫である』を発表。翌年、『坊っちゃん』『草枕』など次々と話題作を発表。1907年、新聞社に入社して創作に専念。『三四郎』『それから』『行人』『こころ』等、日本文学史に輝く数々の傑作を著した。最後の大作『明暗』執筆中に胃潰瘍が悪化し永眠。享年50。

「2021年 『夏目漱石大活字本シリーズ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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