きいろいゾウ (小学館文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (488ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784094082517

感想・レビュー・書評

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  • 感性豊かな不思議系「ツマ」と売れない小説家「ムコ」さんが、それぞれ子供の頃、読んだ「きいろいゾウ」という絵本から影響を受けつつ夫婦として都会を離れ田舎暮らしをしている。そろぞれの人生を絡めながら、近づいたり、あえて触れずにいたり、不安に思ったり、察したりしながらいい感じの「距離感」が描かれている。「ムコ」さんが書いている日記をこっそり読みながらも、落ち葉や虫などを日記に挟んでおく「ツマ」。しかしお互いに日記を読んでいること(読まれていること)には、何も触れない優しさが素敵だった。映画にもなっているのでそちらも見てみたい。

  • 「ツマのそばにいる、きいろいゾウ。
    それは、僕でありたい。背中に鳥を背負った、それは僕でありたい。」(438 ページ)

    きいろいゾウが心の拠り所だった『ツマ』と、
    色とりどりの羽の鳥を背中に持つ『ムコ』。

    田舎に移動しても、
    無邪気で明るい彼女と、
    強くて優しい彼は、
    隣人たちに暖かく迎え入れられる中、

    全ての人に、優しく切ない秘密があって、
    皆が、静かに、美しく、逞しく成長する物語り。

  • 田舎暮らしをする若夫婦。妻は感受性が強く、心臓が弱く、聞こえない声が聞こえたりする。夫は小説家で、毎晩書斎にこもって日記を書いている。関西弁で漫才のように楽しそうに毎日を過ごす夏の日。近所に顔見知りもできて、ほっこりとした生活がある。

    しかし、夏から秋、冬にかけて雲行きがあやしくなる。夫婦はお互いの秘密を、見てみないようにしてやってきた、夫の日記は、あえて書くことでそれを確かなものにしようとしてきたものだったのかもしれない。

    愛する人はいつかいなくなってしまう。それを悲しんで今を見ないで過ごしたら、それこそ今が悲しみになってしまう。

    「今の私を見て、今、愛しているのだから。今生きて、あなたを愛しているのはわたしなのだから、こちらを見てほしい。そして、一緒に今を生きて欲しい」

    そんなメッセージのこもった、自分の好きな気持ち、人を好きでいたいという気持ちにまっすぐになれる本。

  • ずっと好きな作品

  • 夫婦という他人同士の見せたくないもの。過去の自分。知りたくないけど、知りたい。でも、本人からは聞きたくない。そんな不安を抱えるツマが苦しい。過去の自分に苦しむムコさん、そして忘れていたアレチさん。目をそらしてきた過去へも、いつかは向き合い、対峙しなくてはならないんだな、と思い知らされる。

  • 私のご近所にもこんな仲間がおったらなぁ。
    でも読んでる間は私も仲間入りしてたので
    楽しかったなぁ!豆腐にミロ(笑)見てみたい

  • ほっこりほっこり
    田舎暮らしも楽じゃないなあでもいいなあ
    動物がいっぱい出てきたけど、人間対人間って感じ。

  • 西加奈子節が、ちょっとしつこかった。

  • とても気持ちの良いお話、終わり方
    西加奈子の作品で一番好き

  • 常にチャック全開のちょっととぼけたおっさんにも、過去の影がある。収まるところに収まっていくカタルシス。

  • 「さくら」を読んで著者が好きになったので購入。


    冒頭から前半は、著者独特の何ともいえない、ふわふわした語り口。都会とは音も色彩も時間の流れも全く違う環境で、何人かの登場人物とのわずかな起伏が織りなす日常が描かれる。もしかして本作は、このまま「ちょっと変わった、しかしあくまで普通の日常」を描きとおすのか?と思いつつ、後半からは風雲急を告げる。

    捉えどころの無いような書き方をしていながら、やはり「さくら」同様、著者が物語に散りばめているものは深く広大で、読者を惹きつけてやまない。

    たしかに、思えば前半部分でもおだやかな中にもどこか少し不安にさせる描写はあった。どれほど気楽に見える日常でも、必ず影はある。そして、登場人物が抱える影は存外深い。
    しかし、いずれ我々は影と対峙しなければならない。影を消し去ることはできなくとも、影を胸に抱きながら、影と手を取り合いながら、生きていかなければならない。

    著者一流のカタルシス展開。実に見事。読み終わってみればやはり西加奈子ワールドに取り込まれていた。
    現代文芸の旗手の一人だと思う。

  • 西加奈子さんの作品はどれも大好きなんだけど、他の作品のように、「あ!このセリフ好き!」と印をつけたくなったり「これは自意識について一過言あるのだな」と勝手にメッセージを受け取ったり、強烈に引っ張られる何かの存在を感じない作品だった。

    強烈に引っ張られる何かはないんだけど、不思議と涙が出ていたり、「ははっ」と笑ってしまったり、すとんと心に収まってくるような感じ。

    ツマとムコは田舎の集落で暮らす若夫婦。ムコは小説家で、家でものを書いたり時々高齢者施設に事務の手伝いに行く。ツマは料理や洗濯をしたり、野良犬のカンユに茹ですぎたそうめんをあげたりアレチさんと縁側でビールを飲んだりして過ごす。
    とても穏やかで賑やかで、2人にしか過ごせない日常からストーリーは始まる。

    ツマは小学生の頃心臓の病気で1年ほど入院していたのだが、そのころ勇気付けられた絵本に「きいろいゾウ」が出てくる。その本を読んで以来、病室にきいろいゾウが遊びにきてくれたり、月の満ち欠けに心身ともに敏感になったり、虫や草花なんかの声が聞こえるようになったり、とにかく恐ろしく多感になった。
    実はムコも幼い頃に読んだ「きいろいゾウ」の話が心に残っているのだが、お互いにそれは知らない。

    2人はいろんな人と関わり合いながら(アレチさんや、その奥さんのセイカさん、駒田さん夫妻やその孫で登校拒否をしていた大地くん。イケメンで優しくて、大人になることを嫌がっていたけどツマに恋心を抱いて以来、大人になることも悪くないと思うようになる大地くん。大地くんに恋する、わがままで自己中で、乙女な洋子ちゃん。などなど)2人にしか過ごせない日常を過ごすんだけど。

    実はムコさんには忘れられない元カノがいて、その元カノは出会った頃も既に人妻で病気の娘さんがいて、絵を描いていて、その絵をモデルにムコさんの背中には刺青が入っていたりして。娘さんの死後、心を閉ざして臥せっているらしく、旦那さんからヘルプの手紙が届いたことから生活が空っぽになり出した。
    心ここに在らずの状態で幾日か過ごした後、ムコさんは覚悟を決めて元カノと旦那さんに会いに行く。

    2人が離れ離れで過ごす2週間は、それはそれは、読み手にその寂しさが伝わるくらい異質な日々なんだけど、
    元カノに会って、背中の入れ墨を見せて、自身の変化や愛する人との出会いを受け容れ、伝えることができたムコさんと、
    ムコさんを中心に生きていたことを、これからもそうであることを、分かったツマとは、
    今までより一層のユニークさでお互いを大切にし合うんだろう。

    ツマは、自身の心の支えが幼い頃はきいろいゾウで、今はムコさんなのだと気づき、
    ムコさんは、ツマにとってのきいろいゾウは自分でありたいと願う。

    お互いに、同じ話を読んだことは知らないのだけど、同じ存在を「よりどころ」の象徴にしていることが何とも特別だ。

  • 童話と現実が交錯していく優しいお話。
    落とし所に納得する。
    そうだ、やっぱりぞうだよねと。

  • ほんわかした田舎暮らしの時間の中に コソクや犬の笑える発言(発声) 食事の内容が落ち着く。大地くんが学校へいくと決めたあたりの 恥ずかしいことでもカッコいいと思った 大人になりたいという所とか、平木さんが夫婦の話をして、あんたたち夫婦が好きだから というところとか、ツマを愛してると ラストもってきたところとかが好き。

  • 僕にとってこの小説は、星野大地くん無しでは語れない。本当に素晴らしい少年です。彼の出てくるところだけ何度でも読み返したい。

  • 宮崎あおいと向井理主演で映画になると聞き、買って読んだ本。東京の景色とつながって覚えているから、おそらく東京にいた1年のうちに読んだのでしょう。

    ふつうの夫婦のふつうの暮らしがみずみずしく描かれる。その当たり前に当時は愛おしさを感じ、こうして読んでから5年たった今も、その時感じた愛おしさは変わっていない。

    映像化したあとでその原作を読むとき、私はその役者さんの顔でイメージしながら読むが、ああ、これは宮崎あおいだなぁ、と納得しながら読んだものでした。

    映画がたしか2月に公開された。
    冬から春へと移り変わる季節の、まだ肌寒い通り雨。
    そんな雨の情景が、たしかそんなシーンなんてなかったと思うけど、思い浮かぶ一冊。

    この本は、雨の日にしっとりと読みたい。

  • ごくごく普通の夫婦の、ごくごく普通の日常。
    ごくごく普通の日常の中で出会いと別れを繰り返し、笑って、泣いて、怒って、僕たちは、日々をやり過ごしていく。
    その、ごくごく普通が愛おしく、大切だと思わせてくれるお話。

  • 後半の疾走感やべえ。削ぎたい感もあるけど
    嵐を起こして全てを壊すのデレッ↓テテッ↑
    テッテッテレテテ♪わかる?わかんないよね

  • 幸せって、大切な誰かと、大切と思える毎日を紡ぐことなんだね。

  • DVDも観た!ほんわかするけど、それだけじゃない。

  • ある夫婦の愛の物語。

  • かなり長編だったけど、前半は、田舎の幸せな日常生活が続き、後半で急に物語が動く。前半要るのかなあとも思ったけど、あれは長い前置きであって、その前半がないと成立しないのかもなぁ。

    ムコさんの後半の行動はいまいち納得いかないし、最後何事もなく仲直り?元の生活に戻るのが不思議だなあと思った。でも、例えば、恋人がいるのに、元恋人とご飯に行って、ああやっぱり今の恋人が一番だなぁと思い起こす様なものの、すごい大々的なものと思えば分からなくもないのかなぁ。
    大地くんと洋子ちゃんとか、カンユさんとか、メガデスとか、脇役のキャラは結構好きだった。けど、他の西さんのお話の方が好みなので星は少なめで。

  • あったかーい、愛の話。
    読み終わったあとはじんわりなんとも言えない読了感でした。
    個人的には不登校の大地くん、夫からDVを受けている平木直子が特に印象的でした。
    (主人公たちの愛の話も素敵でしたけど)

    まずは大地くん。
    「恥ずかしいことはかっこ悪いこととは違う」、たしかに。
    私も恥ずかしいことを数えたら幾度となく出てくる。勇気出して告白したらフラれたり、好きな人の前でオナラ出たり笑
    それでも一生懸命生きてる。死にものぐるいで生きてる。
    それはむしろカッコいいんことなんだよね。
    それが大人。とある清涼飲料水のCMで「おとなは、ながい。」とあるけど、それは素敵なことなんだ!って思います。

    また平木さんは主人公たちのご近所さんの女性。夫からDVを受けているようで大きなアザが腕にあります。当初は親の反対を押し切って結婚したそう。
    これってどっかで聞いたことある!と思ったら私のことでした。
    さて彼女は日々殴られて怪我させられるけど「やっぱり反対したのに」って周りに言われるのが悔しくて、半分意地?で一緒に暮らしてたそうです。
    そのうち娘が生まれ、その娘が結婚したときのこと。
    娘のダンナさんはとても穏やかで優しく、周りの人皆から「幸せになるよ」と言われていました。
    だがしかし!その娘さんは子供とダンナさんを置いて出て行ってしまった!

    皆が「幸せな人」と思う人は実はそうでもなく、皆が「不幸な人」と思う平木さんは何だかんだダンナさんと一緒にいたいと思う。

    「幸せ」って何だろう「愛」って何だろう。一つの側面をみて「幸せ」や「愛」を押し付けるのは無責任だなと改めて思いました。
    「幸せ」や「愛」は本人たちが決めるのです。

    以上で、私の感想です。本題からちょっとずれてますね笑
    素敵なお話なので是非、読んでくださいね。

  • ムコさんが書く日記 例えば「晩ご飯の味が薄かったけどツマがおいしいおいしいと言って食べるから何も言わなかった」そんな軽く愚痴めいたものから始まり最後は日記を捨てる気持ちになる。 ゆっくりと少しづつ ていねいに確かめながら 恐る恐る進む展開に身震いがし鳥肌がたつ思いだった。
    素直。素直すぎて分かりやすいツマ。
    ちょっと羨ましくも思う。
    宮崎あおいさんが主演の映画になったお話だと思う。
    私は映画を観ません。
    それは私が思う世界が違うものになってしまうから。
    それを映像として観たくないへそ曲がりです。
    とても素敵なお話でした。
    今夜 夫が帰ったらツマのように おかえりと声をかけ 小さな虫に大騒ぎをし 2人で過ごすエピソードを大切にしたいと思いました。

  • 西加奈子さん

    やはり独特の世界観がすごい
    なんだか少し苦しくなる
    他の作品ももっと読みたい

  • 西加奈子2冊目。
    前回読んだ肉子がとても面白かったので同じ様な人情物語をなんとなく期待して購入。
    中盤までは期待通りのふわふわとした夫婦の日常を描く。
    しかし中盤以降、急遽として狂気のエッセンスが加わり物語が動き出す。
    こんなこともできるのかと著者のスタイルの幅広さに驚いた。
    しかし個人的には前半までのほのぼのした内容が好き。
    本当の幸せとはこういう地味で形が見えずらくふわふわした暖かいものだど最近思う様になった。
    結局日記読んだ読まない問題は明確に解明されなかったのがあれ?となったがうまくまとまった内容になっていると思う。
    映画のムコさんは向井理なのか。
    作中の情報からは加瀬亮がぴったりな感じがして頭の中ではそのキャストで物語が進んでいった。

  • ゾウ好きとしてタイトルに興味を持ち手に取ったが、自分にはリズムがどうも合わなかった。 ムコさんとツマの話が交互に入り混じり、それはまぁよいとしても、話がつまらない。
    つよしよわしのくだり、洋子と急接近の展開スピードにもいまいちついていけず。
    ムコさんの恋人との再会、その夫の老けようも、ムコさんツマさんが若い夫婦とされているのに、じゃあ今何歳?という設定もなんかしっくりこなかった。

    「言う」が「ゆう」と言う日本語も合わなかった。

    五百円貯金の話もいる?と思ったり、肝心のゾウの話もいまいち入ってこなかった。
    ただ、最後に大地くんとムコさんの話で繋がった。

    自分のセンスがないのか。
    評価されている作家さんだし、もう一度読むと共感ポイントが出てくるのかな。

  • 映画も観たけど、宮崎あおいと向井理のキャスティングがとてもイメージに合っていたと思います。キュンキュンきた。

  • 申し訳ないけど、途中でやめました…。
    奥さんの自己中心的な、私は人と違うのよっ!的な、
    自分に酔ってる的な…とにかくああいうキャラクターが嫌いで、イライラしてしまいました。
    西加奈子さんはテレビのインタビューなどで拝見して、好きな作家さんです。でも最初がこれだったので、次に手をつけられずにいます。。サラバはいつか読んでみたいです。

  • 「秒速5センチメートル」のDVDを見たあとで、
    青春のころの切ない経験と、どうやってつきあっていけばよいのか…

    そのアンサーソングのような作品。

    田舎でひっそりと暮らすムコとツマ。
    静かに暮らしているようでも、日々小さな事件が起こります。
    それぞれに謎を抱えた人たち。

    うまくいえないけれど、「きいろいゾウ」は、特別で無敵で万能な存在。
    子供の頃って、こういう存在に憧れましたよね。

    でも、昔の傷を抱えていても、幸せにくらしていいんだ!
    きいろいゾウは、きいろくなくなって、ふつうのゾウになったとしてもいいんですよね。

    日々の生活の暖かさを実感させてくれるような作品でした。

    私はやっぱり西加奈子さんが好きなんだなー。

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著者プロフィール

1977年イラン・テヘラン生まれ。2004年『あおい』で、デビュー。07年『通天閣』で「織田作之助賞」、13年『ふくわらい』で「河合隼雄賞」を、15年『サラバ!』で「直木賞」を受賞した。その他著書に、『さくら』『漁港の肉子ちゃん』『舞台』『まく子』『i』などがある。23年に刊行した初のノンフィクション『くもをさがす』が話題となった。

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