壁 (新潮文庫)

著者 : 安部公房

• 新潮社 (1969年5月20日発売)

感想・レビュー・書評

[iehさんの感想 · 2012年3月11日]

一度挫折した安部公房の『壁』にリベンジ。

第一部 なんとなく気持ち悪くて正直受け付けない‥。私には難解過ぎた。
第二部 よくわからないのは一緒だけれどこちらは好み。世界観が合うか合わないかの差だと思う。
第三部 短編が4つ入っていて,どれもとてもおもしろかった!(特に『魔法のチョーク』,『洪水』)
安部公房の短編が面白いのは,短い文章で表現された世界が,あまりに奇妙でシュールで魅力的で,読み手の想像力をどこまでも膨らませるからではないだろうか。

現実で生活する,ふとした瞬間にこの小説の世界を思い出す。
それにしても安部公房の頭の中はどうなっているんだろう…

[sakuramoti31さんの感想 · 2012年3月7日]

今のところ安部公房さん作品の中で一番すきです。内容が把握できているのか？と聞かれると、・・・となってしまいますが、それでも引き寄せる何かがあると思っています。

[ヒラサキさんの感想 · 2012年3月1日]

　収められた作品群は、現実離れしているようで、現実をそのまま写し取ったかのような、不思議な既視感を与えてくる。描かれた世界はどれも心地の悪い歪さを放っているものの、しかしそれらは私たちが生きる世界の本質的な姿に近いように思う。
　人間から強制的にある1つの要素―名前、影など―が剥奪されたことで周囲が歪み始めたのではなく、もともと欠落していた要素を指摘することで、結果として現実世界の歪みが浮き彫りにされたのだ。それこそ“魔法のチョーク”でりんごを“描出”したかのように。

　表出した歪みは、非常に馬鹿馬鹿しいものだ。滑稽な規則を順守する正しい狂人たち。それはまさしく現代社会に生きる私たちの写し鏡であろう。読後に残る何とも言えない苦々しい気持ちは、作品を通して世の中の醜さを垣間見てしまったせいかもしれない。
　それを“壁”が取り除かれたと捉えるか。はたまた、“壁”が出現したと捉えるか。

[えりこさんの感想 · 2012年2月11日]

「砂の女」でハードルが上がりすぎちゃって難解すぎる１部と２部はちょっと理解しきれなかったけど、３部の短編はどれも面白かった。特に「事業」なんて乙一風で(乙一のが時代が後だけど…)あのぞくぞく感、癖になります。

他の本でも思ったけど、比喩の表現がすごい。
んっこんなもので喩えちゃう!?みたいな変化球にいちいち立ち止まってしまいます。

[kitagawamiyukiさんの感想 · 2012年2月9日]

たぬきが好きだ

[zipsさんの感想 · 2012年2月1日]

とてもhelical。

深く、深く、、まだまだ。

さらなる深みへと私を誘ってくれる。

自分の中の、もう一人の｢自分｣の存在に気づき、
さらにその｢自分｣を受け入れている人には案外読みやすい作品だと思います。

[tskymzkさんの感想 · 2011年12月26日]

なんだか好きなんですよね。シュールレアリスムが･･･。子供の頃に見ていた夢の世界にも似ていて。現実と全く異なるのではなく、ありえない組み合わせ・配置になっている物と知性が、たまにチラッと現実世界のそれらと被る。そこがたまらなく官能的です。

[あいころもちさんの感想 · 2011年11月20日]

「壁」以外の他短編集も面白かった。
読み終わったときのなんとも言えない後味が癖になる。

[ぐう聖ペンギンさんの感想 · 2011年11月20日]

ですます調の文体がどこか奇奇怪怪な様相を醸し出す。この書の文学的価値を私ごとき浅学な人間が完璧に理解しうるのは大変困難な事であるが、それでも文学史上重要な一冊である事は重々理解できる作品。

[tamushunさんの感想 · 2011年11月18日]

６６冊目。序盤は、「主人公が名前を失う」という設定に引き込まれたのだが、徐々に観念的な話になっていって後半は理解が追いつかなかった。安部公房の思考力は半端ではないな。要再読の一冊。

著者プロフィール

安部公房
大正十三（一九二四）年、東京に生まれる。少年期を旧満州の奉天（現在の藩陽）で過ごす。昭和二十三（一九四八）年、東京大学医学部卒業。同二十六年『壁』で芥川賞受賞。『砂の女』で読売文学賞、戯曲『友達』で谷崎賞受賞。その他の主著に『燃えつきた地図』『内なる辺境』『箱男』『方舟さくら丸』など。平成五（一九九三）年没。

「2019年 『内なる辺境／都市への回路』 で使われていた紹介文から引用しています。」