沈黙 (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101123158

感想・レビュー・書評

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  • 2018/11/18読了。
    正直に言ってしまうと、途中で読み進めていくことが辛い場面が何度もありました。

    切支丹弾圧によって、多くの人の命が失われていく。けれども神は彼らを救うどころか、癒しさえ与えてはくれず、切支丹の百姓たちは苦しみながら死んでいく。
    救いを信じることや、苦しみから逃れようとすることは、死ななければならないほど罪深いものなのでしょうか。

    物語の中で、神は終始沈黙を破ることはありませんでした。百姓たちの死が、殉教ではなく無駄死にだと思うことも何度かありました。
    神が本当に存在するのだとしたら、なぜ神はこれほどまでにむごいことから目を背けることができたのでしょうか。

  • 日本のキリスト教の歴史を知りたいなら必読。

  • 信徒が残忍な拷問を受け殉教していく様を目の当たりにし、ロドリゴ司祭は神の存在を自問自答する。
    神は全てをご存じのはずなのに、なぜ「沈黙」を保っておられるのか……。

    久々に重めの作品を読んだので最初は読むのがかったるいと感じていたが、どんどん引き込まれる小説。
    棄教を迫られるロドリゴ司祭の胸中の葛藤や、長崎奉行井上筑前守やフェレイラ司祭の日本におけるキリスト教の解釈は読み応えがあり面白かった。
    キチジローの存在と、踏絵のキリストの捉え方にハッとさせらる。

  • 最近映画化された遠藤周作の原作。島原の乱直後のキリシタン弾圧時期に、日本で棄教したという元師匠の司祭を探し日本の信徒を救うため敢えてポルトガルから遙々日本に乗り込む若き司祭(パードレ、伴天連)の主人公たち。まさにキリストの最後と重なるように進むその運命。結末は読む前から明らかなのだが、目の前で日本の信徒達が処刑されていく中で沈黙を続ける神との主人公の対峙に引き込まれていきます。読み始めてしばらくすると、「あれっ、これもしかしてノンフィクション?」と思わせるような構成で小説は進行していくが、実際にはフィクション。もちろん歴史的な出来事や史実に基き、登場人物にもモデルがいるようだが、著者が描きたいテーマのためにそれらを再構成して重厚なドラマとして描かれています。信仰とは何なのか。なかなか考えさせられる。しかし、映画でポルトガル人の主人公だとかキチジローだとかが英語で喋っているのは台無しだろ、って思ってしまう。

  • もう何度読んだだろう。映画が公開され、見る前にもう一度小説を読んでおこうと思い数年ぶりに本棚から引っ張り出した。クリスチャンの間でも遠藤周作については賛否両論がある。ちゃんとした信仰じゃないだとか、神を冒涜してるだとか。今回沈黙を再読し、彼の信仰は本物だと感じた。人間はどこまでも弱く悪い存在である。その弱さと神の教えの狭間でもがき苦しみながら生きていくのが人間の一生なのではないか。最後神は沈黙していたのではなく、共に苦しんでおられた、という一文に遠藤周作が一生をかけて見つけた、彼なりの信仰が垣間見えた。私も本を読んでその答えが正しいのかもしれないと思った。神は絶対に見捨てない。沈黙されているように感じても、いつも共におられる。信じるか信じないかは個人の自由だけれでも、信じることが信仰なのである。

  • 現在のように信仰の自由が人間の基本的人権の内のひとつとして当然のように確立されている日本においても、未だ果たしてキリスト教は、本来のキリスト教足り得ているのか疑問である。
    その疑問点についても、おそらく著者は自身がキリスト教であるためにより苦悩し、この作品中においてもフェレイラを通じて「日本人は...我々の神を彼等流に屈折させ変化させ、そして別のものを作りあげはじめたのだ。」「日本人は人間を美化したり拡張したものを神とよぶ。人間と同じ存在をもつものを神とよぶ。だが教会の神ではない。」
    などと語らせ問いかけているのであろう。
    日本人においてキリストもデウスも、それは唯一絶対的な神でなく、あくまで外国の神として、言うなれば八百万の神の一人として内包されるのではなかろうか。
    その時点でそれはもう別のものとしての存在至っていると言えよう。
    日本人の宗教・神の概念の捉え方としても一石を投じた素晴らしい作品である。

  • 宗教とは何のためにあるのか。根本的な問いを突きつけられる。

    私自身がキリスト教のミッションスクールに通っていた非キリスト教徒ということもあり、自分が身近にキリスト教に触れながら疑問に思っていた最も大きな問いを、作中のロドリゴも何度も発している。それが、「神はなぜ沈黙を保っているのか」ということだ。

    この作品では、神に対する裏切りである「棄教」に、それは自分を犠牲にして弱き者のために生涯にわたって心の血を流すという究極の愛である、という全く逆の意味を持たせている。
    キリスト教徒から見れば、遠藤の描いたこの解釈は「正しい」ものではないのかも知れない。しかし、貧しさに耐え、その上さらに拷問の責め苦にあっている農民たちを救うために絵を踏んだというロドリゴの行為を、誰が「間違っている」と言えるのだろう。

    生まれながらにして一つの宗教の価値観を唯一正しいものとして与えられていれば、選択の余地も、疑う余地もない。しかし、私はそうではない。多くの日本人がそうであるように。
    遠藤自身もまた、母や叔母から「背負わされた」キリスト教の重みを青年時代に初めて自覚し、悩みながら自分のものとしてきたという。
    その「自由」は果たして幸せなのか、そうではないのか・・・。

    2017年に公開される映画はぜひ観たい。

    レビュー全文
    http://preciousdays20xx.blog19.fc2.com/blog-entry-487.html

    (再読記録あり)

  • キリシタン禁制を強いる江戸時代の日本に潜入したポルドガル司祭ロドリゴが目の当たりにしたのは、日本人信者たちの悲痛の声と苦悩。彼自身背教の淵に立たされながらもなお続く「神の沈黙」に、極限まで問う波乱の人生を描く。

    自分の信仰心の高さと比例するように、過酷な拷問の果て死んでゆく日本人信徒。神に繰り返し問うも続く沈黙。彼の決死の選択を、誰が責められるだろう。様々な立場の意見が登場するけれど、どれが正解とも不正解ともいえない。明解な答えもないのだろうし、自身の考えを100%他人と共有するのも難しいことなのかもしれない。でも想像したい。

    「主よ、なぜあなたは黙っているのですか」
    信仰とは何かを問う、重厚な名著。

    ここまで引き込まれる作品にはそう出会えない。
    ただただ素晴らしかった。

  • 島原の乱が鎮圧されて間もないキリシタン禁制の日本。
    そこへ3人のポルトガルの司祭が潜入する。
    フェレイラ教父が拷問に屈して棄教したという事実を確かめるために。

    この頃の時代背景を書いた、まえがきから始まります。
    これがあることで物語に入りやすかったです。

    5つのブロックに分類すると、
    1.「セバスチャン・ロドリゴの書簡」で彼が見た日本の現状。
    (主観)
    2.ロドリゴのその後。
    (客観)
    3.「長崎出島オランダ商館員ヨナセンの日記」で時代背景。
    (第三者の目線)
    4.ロドリゴのその後2。
    (客観)
    5.「切支丹屋敷役人日記」で昔の文体を用いて真実味を帯びて終わる。
    (第三者の目線)
    こんな感じで語り手が変わる。
    知らない言葉も多くて難しかったです。
    「切支丹屋敷役人日記」の流れは把握しましたが、全部は読めないです…。

    祈りをささげても、苦難を見ているはずの神は沈黙したまま。
    沈黙している理由とは…。
    それを目の当たりしたロドリゴの信仰心が揺らぎ始める。
    その葛藤を通じて、神と信仰そのものを問う。
    神と信仰のかたちは各国で違い、または変化をし、それぞれ個人の中でまた変化する。

  • 簡単な本ばかり読んでいた私にはレベルが高すぎました。
    ですが、調べながら読んでいく中で
    学ぶことは抱えきれないほどあります。
    学校で習った踏み絵はこんなにも残酷で卑劣な行為だったことを初めて知りました。
    神様は人間の潜在意識の中に皆が持っています。
    ですが、神についての答えや痕跡がないからこそ、人は迷い、争ってしまう。
    宗教に対して偏見が多い日本で、この本を読んだ後、果たして今と同じ考えができるのでしょうか。

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著者プロフィール

1923年東京に生まれる。母・郁は音楽家。12歳でカトリックの洗礼を受ける。慶應義塾大学仏文科卒。50~53年戦後最初のフランスへの留学生となる。55年「白い人」で芥川賞を、58年『海と毒薬』で毎日出版文化賞を、66年『沈黙』で谷崎潤一郎賞受賞。『沈黙』は、海外翻訳も多数。79年『キリストの誕生』で読売文学賞を、80年『侍』で野間文芸賞を受賞。著書多数。


「2016年 『『沈黙』をめぐる短篇集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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