国盗り物語(四) (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (720ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101152073

感想・レビュー・書評

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  • 織田信長〈後編〉読了。

    斎藤道三の物語から、その意志を継ぐ信長と光秀の物語へ・・・。
    後半はほとんど光秀メインなのですが、終盤の彼の苦悩が手に取るように伝わってきて、読んでて辛かったほど。
    信長も、光秀の性格ごと受け入れて好きになれていたら、彼自身も楽だったはずですよね。誰よりも光秀の能力を認めていたのだから。。。「是非もなし」とか、本当せつないです。
    この切なさが、読後に余韻として残ります。まさに名作。

  • 司馬遼太郎没後20年を契機に、かつて読み残していた司馬遼太郎の長編を久々に堪能した。
    斎藤道三から始まり、明智光秀、織田信長と続く、まさに天下統一という国盗り物語。

    明智光秀は斎藤道三の配下であり、道三の娘で信長に嫁ぐ濃姫の従兄妹という関係を本著で始めて知った。しかも道三の遺志を継ぐ者としての「光秀・信長」として描かれている。

    前半は法連房という乞食坊主から松波庄九郎になり、油商の奈良屋に婿入りし、奈良屋庄九郎、山崎屋庄九郎と名前を替えながら、美濃一国を取るまでの話。そして後半は明智光秀という目を通して信長の天下統一を描き、本能寺の変、山崎の合戦で終わる。

    前半の斎藤道三の部分は資料が少ないこともあると思うが「時代小説」風なロマン溢れる物語として書かれ、後半部分は、後の歴史作家としての名声を確立する司馬遼太郎らしい「歴史小説」という傾向が強くなっていく。

    特に後半の主人公は信長ではなく明智光秀。
    光秀の目を通して見た織田信長という視点で描かれており、光秀の古い伝統的な思考方法との対比で、破壊者としての信長が一層際立って見える。こういう視点は流石と思う。
    また、明智光秀という人物をここまでよく具体化できたなと感心する。

  • 明智光秀だね。
    ほんとこんな人間関係だったんだろうなと思う。

  • 【読了メモ】(160104 15:56)司馬遼太郎『国盗り物語』第四巻 織田信長編 後編/新潮文庫/1971 Dec 20th/九十三刷 2007 Nov 10th

  • 斎藤道三の逞しさ。愛弟子、織田信長と明智光秀の宿命。これはドラマチックすぎて感動するね。後半は、明智光秀の生真面目さと変わり者のボスと上手くやっていけず、追い詰められていく感じが、とても人間らしく、親しみがあった。

  • やっと明智光秀が織田信長の家臣になって、京都に足利義昭を立てて征服していくんだけど、光秀はそもそも足利将軍の家臣でもあるからすごい立場的に大変そうだった。足利義昭は最初は信長を父と呼ぶほどに感謝していたけど、結局幕府を立てることを信長に反対されて、傀儡将軍と化していたので、信長と対立することになる。武田信玄や上杉謙信など様々な各地の大名を反信長勢力として京都に呼ぼうとしてたけど、やはり当時は戦国時代なだけあって、自国を空けて京都まで行くというのは厳しい状況だった。武田信玄って本当に強いんだなって思ったけど、武田信玄がついに上洛しようとしたときに、さすがの信長もこれはヤバいと思いつつも戦おうとしたら、途中で病気で武田信玄が死んでしまうというなんとも幸運なことが起こった。信長ってこの本読んでると色んな意味で豪運の持ち主だなと思う。そして信長って一人だとそこまですごくないんだけど、秀吉やら光秀やら部下に恵まれていたのもあるなと思った。信長自体行動力あるし、部下を鬼のように使うし、それはそれですごいんだけれども。あと徳川家康も信長と同盟を組んでいたけど、義を重んじるいい人であり賢い人だと思った。信長っていいと思うんだけど、厳しすぎるよね。厳しいし無理難題を言うしで、結局明智光秀が謀反を起こして最終的に本能寺で自害することになるし。自業自得的なところはあるけど、それが信長って感じがした。そして光秀も光秀でキレて謀反を起こすみたいな、かなり冷静さは失っていたように見えたし、結局明智軍団以外は誰も賛同してくれなかったのが、非常にかわいそうだった。光秀は賢いと思うんだけど、一国を統治するような器量の持ち主ではないと思った。信長みたいな強引なリーダーのもとでブレーン的な役割を果たすなら最高の人間だけど。まぁ斎藤道三に育てられた信長と光秀という二人が最終的に対立して戦うことになるという、なんとも戦国的な儚いっちゃ儚い内容だった。なんだかんだ斎藤道三が一番すごいと思う。

  • 15/11/8読了

  • 光秀はずっと信長をライバル視し、心の中では上から目線で批評してばかりだったのだが、自身が担ぎ上げた将軍足利義昭の器の小ささに(わかっていたことだが、改めて)失望すると同時に、運だけでは説明の付かない信長の実力を目の当たりにし、はっきりとその能力を認めるようになる。

    二人の主に同時に仕えるという微妙な立場で、時に板挟みになりながら、細川藤孝という代え難い友との絆も深め、自身の功名のために粉骨砕身、信長に仕えていく。
    道三の失脚で故郷を追われて以来、ただ志と自負だけで何も持たなかった光秀の人生においては、もっとも充実した日々だったのではないだろうか。

    しかし主従関係となった二人の間には相変わらず「気にくわない奴」という人間としての肌合いの絶望的な違いが根底に流れている。時間が流れても、ともに大きな仕事を達成しても、その乖離は少しも埋まらないままで過ぎていく。

    それでも、そのずば抜けた能力の高さだけは、互いに認め合っていて、主である信長は光秀を抜擢し続ける。著者の言い方では道具として使い倒していく。光秀は光秀で、京都の社交の場で、そちこちの山野の戦場で、だれよりも駆け回り、働き続ける。その懸命の働きが老いとととも光秀の精神をすり減らしていく様は、読んでいてなんとも痛々しい。

    また信長にしても、古くからの武将を無慈悲に使い捨てていく終盤の描写を見ると、滅びるべくして滅びた独裁者のように見えてしまう(もちろん結末を知っているからなのだけど)

    主人公ではないから登場は少ないが、秀吉も光秀と並ぶ逸材として常にきらりと輝いているし、同盟者としての家康もなんとも魅力的に描かれている。

    そうした次の時代の覇者たちを、さりげなく星のようにちりばめながら、光秀の、行く末の明らかな(親友さえ味方しない)、暗く救いようのない謀反は決行されてしまう。
    この本能寺の辺、そして光秀の死によって、道三の二人の後継者は息絶え、国盗り物語は幕を閉じた。

    この歴史の道筋の暗さの中に、信長と光秀とはまるで違う秀吉の明るさが、次の道を照らす灯りとしてきちんと用意されているようで、暗い結末を読んでいながらも、心底絶望的な気持ちにはならない。

    さっさと「新史太閤記」を読んで気持ちを切り替えねば。

  • 光秀はやっぱり天下を取る器ではなかったのかな、と思った。
    多芸で、伝統を重んじる礼儀正しい人だからこそ、他人に自分の本心を見せたり、わがままに甘えたりすることが出来なかったから、周りにも引かれてしまったみたいだった。

    裏切ったり裏切られたりの戦国時代も、知ってみるとおもしろいと思った。

  • ついに完結。

    天下統一に向けて様々な革新的なことを進めながら包囲網に立ち向かう織田信長と、
    その信長を支える明智光秀の微妙な距離感。

    それが徐々に開いていく様の描き方が素晴らしい。

    結末がさっぱりしてるのもまた味がある。

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著者プロフィール

司馬遼太郎(1923-1996)小説家。作家。評論家。大阪市生れ。大阪外語学校蒙古語科卒。産経新聞文化部に勤めていた1960(昭和35)年、『梟の城』で直木賞受賞。以後、歴史小説を次々に発表。1966年に『竜馬がゆく』『国盗り物語』で菊池寛賞受賞。ほかの受賞作も多数。1993(平成5)年に文化勲章受章。“司馬史観”とよばれ独自の歴史の見方が大きな影響を及ぼした。『街道をゆく』の連載半ばで急逝。享年72。『司馬遼太郎全集』(全68巻)がある。

「2020年 『シベリア記 遙かなる旅の原点』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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