- Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101181325
感想・レビュー・書評
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ローマ帝国滅亡後、1000年の長きにわたり、自由と独立を守り続けたヴェネツィア共和国の誕生から第4次十字軍にどう係わったのかが描かれている。
著者は、99年に司馬遼太郎賞を受賞されている。
「ルネサンスとは何であったのか」を読み、この海の物語にたどり着いたのであるが、司馬さんの描かれた歴史小説もそうだったように、読者は、著作で描かれた時代へと自然と誘われる。
生き生きと経済活動するヴェネチィア市民の経済合理性こそは、現代の日本人が学ばねばならないことだと通説に感じてしまうのである。
日本と言う国を「真の海の都」にするために!詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
物語ではなく、ヴェネツィアの歴史を追った本。十字軍などにおける「ヴェネツィア=悪人」というイメージが覆される。丹念に建築などの観点からも追ってあり、非常に親切。
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中公文庫版では上下巻だったのに、新潮文庫版では6分冊になって
いる。各巻250ページ前後なのだから、これは分冊し過ぎだろう。
既に中公文庫で読んでいるのだが、友人からもらったので再読。
「蛮族が攻めて来たぞぉ」と海に逃げ、沼沢地にえっさえっさと
国を作り、潟という自然の要塞に囲まれたヴェネツィア共和国。
海洋国家として栄えた国が、ナポレオンに滅ぼされるまでを追った
歴史小説である。
「まずヴェネツィア国民、次いでキリスト教者」
同じキリスト教の土地に攻め入ったことがローマ法王の逆鱗に触れ
破門される。
でも、ヴェネツィアはうろたえたりしない。自国の実利の為なら、
信仰さえも二の次なのだ。
なんて素敵な考え方なんだろう。好きだなぁ、こういうの。
さて、歴史的には悪評芬々の第4十字軍。騎士道精神溢れるフランス
人が中心になって結成されたのだが、いかんせん資金がない。
その資金を貸し付けたのがヴェネツィア。そして、共和国の元首自ら
も艦隊に乗り込む。
80歳を超えた盲目に近い元首、エンリコ・ダンドロ。十字軍の契約書
に明確な目的地の記載がなかったのをうまく利用し、十字軍に便乗して
ヴェネツィアの交易の拠点を築いてしまう手腕はお見事。
「立ってるものは親でも使え」と言うが、自国の為ならなんでも
利用しちゃうのさっ。 -
「ローマ人の物語」が「道」を語るなら、こちらはヴェネチアは「海路」を語ります。戦乱の絶えずおよそローマ帝国以後約2000年間統一され無かったイタリアで独立を守り続けた物語が書かれています。時に小説的に、時にドキュメンタリー的に綴る塩野氏らしい作風は旅行好き、歴史好き、小説好きのすべての欲求を満たしてくれて、僕は好きです。第1巻は西暦450年頃、アッテイラの侵攻(フン族の西進)を逃れ、海上に逃れ、干潟に現在のヴェネチアを築き、繁栄していく姿を、十字軍の14世紀あたりまでを描きます。海上都市を実現させた土木技術、戦乱耐えない中世ヨーロッパを活き抜いた貿易と海軍力などにもスポットを当てています。
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【私の評価】★★★☆☆(78点)
■いずれヴェネツィアを訪れようと思っていましたので、
予習用としてこの本を手にしました。
現在はほとんどが観光産業のヴェネツィアですが、
その千年を超える歴史は、外交と貿易、
そして戦争の歴史でした。
■ヴェネツィアの戦略は、
海に高速道路を作るというもの。
そしてその航路を用いて、
他国と自由に貿易することにより
富を生んでいったのです。
そのためには、戦争もするし、
海賊を攻撃したりもする。
その方法には、こだわらなかったようです。
・ヴェネツィア人も、道徳家の殻をかぶったほうが
有利と判断した場合以外は、一度も
モラリストであろうとしたことはなかった民族であった。(p235)
■ヴェネツィアが協力した十字軍が
コンスタンティノープル(イスタンブール)を攻略します。
イスタンブールにも行きたくなってきました。
次が読みたくなって、残り5巻を発注しました。
塩野さん、よい本をありがとうございます。
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■この本で私が共感したところは次のとおりです。
・大義名分が有効なのは、行動するうえで、精神的拠りどころを
必要とするからではない。行動の真の目的を巧妙にカモフラージュし、
少しでも疑わしい事実があったらただちに介入しようと狙っている
周辺の強国の抗議の口を、あらかじめ封ずるのに役立つからである(p89)
・法王は、この十字軍に一年間従軍した者には、
いかなる罪も免罪にするという布告を、
説教僧を通じてヨーロッパ中に広めた。(p149)
・キリスト教によって、奴隷制は完全に廃止されたわけではない。
キリスト教徒を奴隷として売り買いすることは禁じられてはいたが・・・
いまだにキリスト教化されていない人の場合は、認められていた(p104) -
ベネチアの通史を扱った本。
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以前、どこかで誰かが塩野七生のことを日本一有名な女性同人作家と評していたが、あまりに言いえて妙なので関心したのを覚えている。「ローマ人の物語」における彼女の語り口は、”ローマ萌え”の同人作家のそれであり、「物語」として優れていることは認めても、「歴史」を語っているかという点には疑問符をつけざるを得ない。本書「海の都の物語」にも、同じ匂いを感じた。同じ匂いということは、「ローマ人の物語」にハマった人なら、同じような気分で読み進められるだろう。ただ、ローマ帝国のスケールの大きさに惹かれた人には、イマイチかも。
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「ローマ人の物語」がよかったので読み始める。英雄などがでないので最初は退屈だったが、塩野さんの生き生きとした筆運びにどんどんひきこまれていった。資源をもたないヴェネツィアの国のありかた、国民性が書かれていておもしろい
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大好きなヴェネツィアについての歴史。
登場人物が生き生きそこに確かな存在を感じられるのは
筆者の描写の良さ。
あっという間に中世に飛ばせてくれます。
現在、3巻目。
いつ読み終えられるだろうか。笑 -
塩野先生の本ということで。
なぜヴェネツィアが海運国家として栄えたか、背景がきっちりおさえられているので、読んでいてなるほどと思うことが多い。
ただ、ローマ人の物語に比べて、「人」ではなく「街」によりフォーカスした内容なので、物語というよりより史料に近い内容なのは個人的にはやや残念。