遥かなるケンブリッジ―一数学者のイギリス (新潮文庫)

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  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (273ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101248042

感想・レビュー・書評

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  • 20140601読了
    イギリスでの在外研究記。●P67イギリス紳士の理想の姿は高等遊民。つまり、立派な学問や教養をふんだんに身につけながら、金のためにあくせく働くようなことはせず、悠々自適の生活を送ること。社会的成功を目指して一心不乱に努力するなどは、紳士のすることではないと思っているふう。●P85正装での社交。●P89第五章 オックスフォードとケンブリッジ ●入試における「公平」の日本との違い。P208公立と私立の合否判定は同等ではない。条件の違うものは区別するのが公平であるから。つまり、類似した成績の私立出身者と公立出身者なら公立を取る。教官、設備、家庭などではるかに恵まれた公立出身者が優位にあるのは当然との考え方。

  • ケンブリッジ大学の雰囲気や、数学者の日々の生活がどういったものなのかが垣間見れて!面白かった。文章が上手い!

  •  藤原正彦先生の家族同伴イギリス留学記。先生はけっして右翼ではないのだが、海外生活をすると必ず右翼的な感覚を体現してしまう自分がいるらしい。そういえば長男も留学から帰国後にSAPIOを読み、よしりんにハマリ、わたしも含め家族に多大な影響を与えるに至る。いまだその影響下にあり(笑

  • 超エリート数学者のケンブリッジ留学記、という身近でない世界のエッセイなのに、読みやすい。
    読了後、即「若き数学者のアメリカ」を読みたくなって買いに行きました。

    イギリスの学者たちの高等遊民な感じ、紳士であること、フェアであることへのこだわりを日本人の視点で分析しているのがとても面白いです。

    その反面、黄色人種への差別や息子の次郎がいじめられるくだりは、浮世離れしている数学者の世界も現実の悩みがあるんだなぁ、と身につまされる感じ。

    数学者である筆者は自分の心情も冷静に分析するため、解説で言われていた「清々しい文章」という表現が本当にぴったりくる、おすすめの一冊です。

    (あや)

  •  藤原正彦は、最近の発言にはちょっと気をつけるべき点があると思うが、この初期の頃の随筆は非常によい。解説で南木佳士が述べているように、この本と『若き数学者のアメリカ』は一級の随筆である。ただ、相変わらず愛国調は鼻につくけれど。
     ケンブリッジ大学に派遣留学した経験が描かれている。イギリスという国とその人々の様子がなかなか生々しく、それが臨場感を与えている。イギリスは一筋縄ではいかないな、と思わせる。それが大英帝国の記憶を持つ国なのだろう。
     古いものを大切にするお国柄であるが、これを読む限りでは、とても慕わしいものの、慣れない内はずいぶん不便だろうなぁ。特に冬の寒さやお風呂の貧弱さは辛そうだ。それでも、アメリカよりは落ち着きがありそうで、私は好きだ。
     いつか暮らしてみたいと個人的に思う国はイギリスなのだが、その実情を教えてくれて、興味深い。よい本だ。

  • 分析力、洞察力に驚きました。
    イギリスについてこんなに沢山の情報が書かれているので、ずっと手元に置いておきたいぐらいです。
    それにとても読みやすく、すらすらと読み終えました。
    アメリカ留学時代のエッセイも読もうと思いました。

  • 数学者である藤原さんのケンブリッジ滞在記。名だたる教授陣との交流や息子が直面したレイシズムとの戦いなどとても興味深く一気に読了。最終章ではイギリスとイギリス人について語っており、イギリス人を特徴づけるユーモアとイギリス経済を絡めた考察が面白かった。

  • 著者の1987年の1年のケンブリッジ大学での客員研究員としての生活を描いているが、1年とは思えないほど濃い内容でとても良かった。またイギリスやイギリス人についての説明が興味深く、イギリスやヨーロッパに対する理解が深まった。ただ自分のいったジョークが受けた、的な自慢めいた記載も多く少し鼻につく。メインは次男が学校でいじめられた時の父親としての心境、行動だろうが。このあたり、子供も心配だが仕事も重くてなかなかそこまで手が回らないなど同じ父として非常に共感するものがあった。
     ルース・ローレンスという15歳で博士論文を書いている天才少女の話が出てきた。これに対して著者は、こうした天才児は時々報道されるがその後大成したとういう報道は一度も聞いたことがない、と否定的な感想を述べている。実際、このころから25年ほどたっているが、ルース・ローレンスさんはイスラエルの大学の准教授であり、それほど目立った業績を上げている様子はない。著者は数学ばかりやってきた彼女にたいし、野山を駆けまわったり、恋をしたり、文学や音楽に感動するなどといった経験を通して得られる情緒なくして良い研究ができるのだろうか、と心配する。このあたりも共感した。

  • 藤原正彦さんの英国滞在記。

    著者の本は今までアメリカに関するものしか読んでなかったから、読んでて純粋にイギリスという国の勉強になりました(と言ってももう20年以上前の内容だけど)。

    数学の天才のはずなのに相変わらず僕のように凡人にとっても読み易く、ひいては楽しく読ませてくれる文章の達人です。

    内容はというと、僕はイギリス行ったことない上にアメリカ育ちというのもあって、
    「やっぱり英米間の隔たりって深いんだなぁ」
    ってしみじみ感じました。
    きっとイギリスで僕は米語を話しません。

    でも一度は行っとかないとね!

  • 数学だけではなく、文化的な事柄にも通じている著者のことがよくわかった。
    217ページ付近には、この本がバブルの頃に書かれたことが理解され、その頃のイギリスの状況が将来の日本であると予言し、かなり的中している。

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著者プロフィール

お茶の水女子大学名誉教授

「2020年 『本屋を守れ 読書とは国力』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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