あと少し、もう少し (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (361ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101297736

作品紹介・あらすじ

陸上部の名物顧問が転勤となり、代わりにやってきたのは頼りない美術教師。部長の桝井は、中学最後の駅伝大会に向けてメンバーを募り練習をはじめるが……。元いじめられっ子の設楽、不良の太田、頼みを断れないジロー、プライドの高い渡部、後輩の俊介。寄せ集めの6人は県大会出場を目指して、襷をつなぐ。あと少し、もう少し、みんなと走りたい。涙が止まらない、傑作青春小説。

感想・レビュー・書評

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  • 中学生の駅伝、6人で3Kmずつ、18Kmの物語。

    何という青春なのでしょう。
    構成も素晴らしく、走る区間の学生目線で物語りが進んでいきます。
    子供たちはそれぞれ個性的で一生懸命です。
    顧問の上原先生もとても素敵です。

    どんどん引き込まれました。
    電車の中だけでなく、エスカレータでも読み続けたい感じ。
    学生時代に読んでいたら、人生が変わっていたかも。

    中学時代は失敗しても許される。
    もっと思い切って学生時代に取り組めばよかったと後悔しました。

    解説が三浦しをんさんというところもいいですね。
    子供にも大人にもお勧めの一冊でした。

  • 6人で襷を繋ぐ物語。陸上部の顧問が移動になって、代わりに来たのは陸上のことは全く分かっていない美術の上原。6人の選手と1人の先生の成長が感じられる爽やかな物語。この7人全員が個性的で魅力的だ。駅伝は6区あり、それぞれの区で視点が走者に変わるので、物語を多方向から見ることができて面白いが、上原先生の視点の部分がないのが残念。だが、私が駅伝に出たいと思うぐらい感動的だった。

    「中学は失敗するところ」その通りなのは分かってるけど出来ないのが中学生。でも、こうやってヤンキーで運動も勉強もしてない大田、吹奏楽部で最初は走りたいなんて一切思っていなかった渡部でも練習に来たら楽しそうに走っている。この物語を読むと新しいことに対して一歩踏み出して挑戦したくなると思う。中学生は絶対に読んでおいた方がいい、大人でもこの物語を読んだらひたすら続く日常から一歩踏み出せるかもしれない。

    どの人物も魅力的だが、中でも特に上原先生が良かった。満田先生が顧問を続けてる物語でも悪くないと思うけど、圧倒的に上原先生の方が面白い。駅伝メンバーとのバランスもいい。最初は素人で無理やり朝練に来てる感じだった。その時もいい雰囲気だったと思うけど、先生の成長が本当に感じられた。いつのまにか他校の練習内容を調べるようになり、駅伝ランナーを誘うことも積極的に受け入れた。仕事が増えてしまうのに、自分も出来る限り頑張ろうとしているのが伝わってきた。前の顧問の方がよかったと言われても、そこで折れたりしなかった。駅伝の前日に先生がいきなり走者を変えると言ったのは普通に考えたらおかしいけど、自然に感じられた。

    6人が必死の思いで襷を繋ぐ中学の駅伝の物語。これだけ聞けば普通の青春小説に聞こえる。たしかにそうなのかもしれない。だが、この物語は走者の強い気持ちがすごい伝わってくる。登場人物のバランスもいい。最後は曖昧な感じで終わるが、とても心が温まる。大田と渡部の続きが書かれた二作は絶対読みたい。駅伝をやってみたいと思うくらい、いい物語だった。

  •  瀬尾まいこさん2012年の作品で、中学駅伝の物語です。全6章がそのまま駅伝の6区間になっていて、語り手も当該区間のランナーという、視点に変化をもたせた構成が面白いです。

     何よりも、この寄せ集め6人の個性の書き分けが巧みで、流石は元教師と思えます。おそらく、実体験や観察に基き、中学生のリアルを知っているからでしょう。瀬尾さんの引き出しの多さを実感するくらい、実に生き生きと描かれています。
     それぞれの子たちの内面の繊細さ、抱えているもの、優しさと温かさ、応援してもらえる有り難さ、誰かのために頑張る喜びなどなど、瀬尾ワールド全開の魅力満載ストーリーとなっているんです。

     次元の高い競技スポーツとしての駅伝ではありませんが、様々な中学生の背景を描きながら、襷が繋がっていくドラマを観ているようです。夏から秋へ向けてピッタリです。
     頼りない先生も、不器用ながら生徒目線のよさがあり、全ての人に優しい光を当てようとする瀬尾まいこさん。誰も悪者にしない姿勢は、やっぱり読んで癒されますね。この物語は、若い人にほど響き、「もう少し頑張ってみようか」「俺だってまんざら捨てたもんじゃない」と、きっと励ましてくれると思います。

     『君が夏を走らせる』(2017)は読了済でしたが、(本作の)2区を走るヤンキー・大田くんのその後を描いていたんですね。未読の方は、ぜひセットでどうぞ! 大田くんのファン増えそうです。

    • せいまるさん
      コメント失礼します。
      大田くんのその後のストーリーってことを感想で知って『君が夏を走らせる』すごく読みたくなりました!
      コメント失礼します。
      大田くんのその後のストーリーってことを感想で知って『君が夏を走らせる』すごく読みたくなりました!
      2024/01/05
    • NO Book & Coffee  NO LIFEさん
      せいまるさん、コメント&フォローありがとうございます♪
      『君が夏を走らせる』いいですよ。
      多分、ますます大田くんのファンになると思います。
      せいまるさん、コメント&フォローありがとうございます♪
      『君が夏を走らせる』いいですよ。
      多分、ますます大田くんのファンになると思います。
      2024/01/05
  • 駅伝大会に挑むため、寄せ集めのメンバー6人と顧問の先生が県大会出場に向けて奮闘する青春作品。

    一気読み読了、率直に感動。
    私も中学校の3年間、情熱のすべてを注いだバスケ部時代の思ひ出が蘇って、作品の心理描写と重なるところもあって目頭が熱くなった。

    駅伝の1区〜6区間、それぞれの区間走者が、襷を繋ぐまでのリアルタイムシーンと、駅伝当日を迎えるまでの回想シーンの2つが独白形式で描かれていて斬新かつ見応えがあった。

    特に、それぞれ登場人物への命の吹き込み方〈性格、感情の持たせ方〉が秀逸でどの子たちにも感情移入が出来るほど、のめりこめた。

    強いて言えば、ラストが物足りなかった。
    もう少し余韻に浸りたかった。そう強く思えるほど、善き作品だった。

  • 「襷を繋ぐ」…駅伝のイメージ。みんなでいとつのゴールに向かいてひたすら走る。襷を繋げながら…。
    襷を持っている時は自分が主役。その時は孤独の中で、それでも頭の中は次の走者のことでいっぱいになる。次の走者が少しでも有利なようにと、何人抜かないと、何人に行かれないようにしないと…次の走者に襷を渡すまで「あと少し、もう少し」

    ストイックなスポーツだなぁと思う。ランナーたちはいったい、どんな想いを秘めて走っているのだろう…

    当然のことなのに気づかなかったランナーたちの想いやそれまでの軌跡。
    みんなが同じ想いを持って、同じ方向に向かってひたすら走っているだけでなく、それぞが異なった想いを胸に自分が今ここにいるということを改めて気づく。そしてその軌跡を感じることができた。

    そこにはたかが中学生のクラブの延長…ではなく、中学生のなりの歴史と未来への可能性の奇跡が描かれていた。
    「夏が君を走らせる」が本作のスピンオフだったので大田中心かと思いきや、大田の特別な登場はなかった…。

    1区: 設楽亀吉
    亀吉という名で世の中を、渡っていくのは至難の業であった設楽を桝井が陸上部に誘う。桝井が勧誘した理由は、小学校6年生のときの駅伝大会で、大会1か月前に出場が決まったが、区間賞をとり周りを驚かせた。苦手な大田を避けるために入った陸上部であった。

    2区: 大田
    設楽から受けったら襷をかけて、「今日は俺の最大限やったらできるやつを見せてやる」
    桝田に誘われて駅伝に参加する。髪は金色に染め、学ランにはタバコの匂い。見た目がヤンキーで、周りから恐れられている。しかし、密かに設楽を尊敬しており、駅伝に取り組む姿勢はまさにランナーである。

    3区: 仲田真二郎
    小学生のころから物を頼まれることは、いつもクラスのナンバー1のジロー。

    バスケ部部長の3年生。小野田先生から駅伝に誘われたジロー。今回は一旦断ったのだが、「頼まれたら断るな」と教える母の言葉にやっぱり駅伝に参加することになる。
    苦手な渡部が駅伝チームに参加するために少々引き気味であるが、真剣に取り組む姿に共感する。

    4区: 渡部孝一
    吹奏楽部の渡部を桝井と俊介が勧誘するのだが、結果的には顧問・上原の勧誘で参加をすることになる。おばあちゃんに育てられた渡部にはあるべき人生のイメージがすでにあり、そこには駅伝はなかったのだが。
    人付き合いが悪い態度は、自分の弱さを守るため。渡部の優柔不断な態度にイライラするもの、駅伝を通して成長が見られる。

    5区: 河合俊介
    桝田に憧れて陸上部に入った。
    記録のなかなか伸びない桝井を支え、渡部を駅伝メンバーに勧誘する際には大きな力となる。
    ひょうひょうとして、取り止めのないような性格に思えるが、実はそんなこともなかった…


    6区: 桝井日向
    市野中学、陸上部の部長。中学最後の駅伝で県大会へ出場したいと考えているが、体がこれまでのように思うように動かず、調子の悪さを感じている。
    「いい人」って、桝井のような人のことだと思うくらい「いい人」。
    駅伝メンバーを集めるために奔走する。

    私もランニングをするのだが、ひとりで黙々と公園の中を12キロ走るのが辛い。それでもこの表紙のようなところなら走ってみたいという衝動にかられる。 

    • kurumicookiesさん
      HARUTOさん、こんばんは。
      コメントありがとうございます!

      本当に、それぞれの人物が一生懸命に頑張っているところが、応援したくなります...
      HARUTOさん、こんばんは。
      コメントありがとうございます!

      本当に、それぞれの人物が一生懸命に頑張っているところが、応援したくなりますよね。
      中学生の子供のあどけなさが残る感情が素直に描写されていて、青春だなぁ〜と思える爽やかさがありますよね!!

      追伸: HARUTOさんの本棚紹介がとっても好きです。
      2021/08/14
    • HARUTOさん
      おはようございます
      ありがとうございます、嬉しいです。
      あの6人も魅力的ですけど、上原先生もいい感じな雰囲気ですよね。
      おはようございます
      ありがとうございます、嬉しいです。
      あの6人も魅力的ですけど、上原先生もいい感じな雰囲気ですよね。
      2021/08/15
    • kurumicookiesさん
      HARUTOさん、おはようございます!

      そうですよね!上原先生ののほほんとした立ち位置が悲壮感とか切迫感とかを吹き飛ばしている感じがします...
      HARUTOさん、おはようございます!

      そうですよね!上原先生ののほほんとした立ち位置が悲壮感とか切迫感とかを吹き飛ばしている感じがします。

      なんか息が抜けるというか 笑

      どうぞこれからもよろしくお願いいたしますm(_ _)m
      2021/08/15
  • 父親とケンカをしたことがあった。小学校時代、見たいTV番組が重なっての主導権争いというやつだ。自分の見たかったものが何だったかはすでに記憶にない。でも父親が見たかったのが駅伝だったことははっきり覚えている。『そんなの後からニュースで結果を見ればいいだけじゃないか』自身が発した言葉をよく覚えている。

    『僕』『俺』『俺』『俺』『僕』『おれ』の6人が繋ぐ襷(たすき)。18kmを走る中学生の駅伝大会。県大会出場を目指して、学校の伝統と名誉のために臨時編成されたチーム。この作品では、そんな彼らの駅伝のスタートからゴールまでを、それぞれの過去の記憶を織り混ぜながら描いて行きます。それに合わせて第一人称が区間毎に切り替わっていきますが、これが絶妙です。同じシーンにも関わらず人が変わると見えている世界が変わっていく、その意味までもが変わっていく、同じものを見ているはずなのにその意味がこんなにも違っていたことに驚愕します。

    人はほんの些細なことにも意味をもって行動していることが多いと思います。他人から見ると何の意味もない行為が、その人にとってはとても大切なことがあります。その本当の意味を知るのはあくまで本人だけ。でもそれが伝わらない限り、他の人はそれぞれのロジックで片付けてしまう、これが誤解を生みます。そして、行き着く果ては戦争にもなるという人間社会の怖いところでもあります。

    臨時編成の駅伝チームの6人、すっかり調子を取り戻した設楽、他を寄せ付けないパワフルな走りを見せる大田、一本筋の通った根性のあるジロー、スマートさに磨きのかかった渡部、本番に向けて勢いを増すばかりの俊介、そして何故か調子の上がらない桝井が順番に描かれて行きます。第一人称の切り替えに伴って、重なり合うように描かれる同じシーンの中にメンバーそれぞれの個性が活き活きと描き出される一方で、調子の上がらない謎が謎として残される桝井。そんな謎は桝井が第一人称になる第六区で明かされます。

    『陸上だって団体競技だという人もいるけど、走っている瞬間は一人だ。快調に飛ばしていようが、苦しんでいようが、自分の区間を走るのは自分だけだ。』、桝井に過去の苦い記憶が蘇ります。スポーツは自分との戦い、団体競技としてみんなでやってきた道程を思えば思うほどに一人になった時の孤独感は辛いものです。駅伝だけじゃない。球技だって、ボールを持った瞬間は一人になるもの、この場面、この瞬間、最後は自分との戦いを勝ち抜かなくてはいけません。

    でも一方で、『誰かのために何かするって、すげえパワー出るんだな』、たとえ最後に一人になったように見えても決して一人じゃない。一人になった場面、瞬間を見守る多くの人たちがそこにいる、仲間がいる。それを力に変える、力に変えていく、そこに結果がついてくる、それがスポーツ。

    『今まで俺は何かをほしいと思ったことなどなかった。でも、今は渇望している。死ぬほどほしいものが、すぐ目の前にある。つかみたい。』という一途な気持ち。それぞれの勝利への想いと、それを見守る仲間たちの存在、それらが繋がりあって、輪になってゴールへ向かって物語は進みます。

    ネタバレという言葉があります。結果を知ってしまったら興味が失われるということでしょうか。TVの主導権争いはジャンケンによって私が勝ちましたが、父親は駅伝を録画しました。そして結果をニュースで知ってしまった後に再生しているのを見て当時の私にはその行為が全く理解できませんでした。結果がわかっているのに、ネタバレした後に何を見るのか?何が面白いのか?でも今なら少し分かります。あの時、あの瞬間に父親が見たかったもの。

    そして、襷(たすき)は渡された

    『僕は残っていた力の全てをこめて、足を前へと進ませた。もう何も身体に残さなくていいのだ。全てを前に進ませる力に変えればいいのだ。』、こんな一途な『僕』『俺』『俺』『俺』『僕』『おれ』のひたむきで、力強くそしてまっすぐな物語。そんな彼らのまさに青春をかけたこの物語に、まぶしくて、輝く光に溢れたかけがえのない時間を共有させていただきました。

    いいなぁ、この作品。

  • ZARDの曲名のようなタイトルが気になっていた小説。(ちなみにZARDの方は「もう少し あと少し」、こちらの方が先)

    中学最後の駅伝大会を描く青春小説。

    マラソンが弱くなる元凶と言われる駅伝。
    つまり、オリンピックの敵な、駅伝。

    でも、日本人の感性にはピタリはまる。
    駅伝というだけでドラマになる。
    だから、駅伝を描く小説は面白いに決まっているのだ。

    6つのバラバラな物語を確かに繋ぐ襷。
    そして、期待を裏切らない。
    読み終わったあと、炎天下を走りたくなる(笑)

    瀬尾まいこさんの小説は、あたたかくて安心感に包まれているが、一方で、さりげなくドキリとする要素を付け加えてくる。
    不穏なような穏やかさが、よい。

    • たけさん
      りまのさん、おはようございます!
      こちらこそ、いいね!ありがとうございます。コメントも感謝です。

      今日は台風が心配ですが、めげずに良い一日...
      りまのさん、おはようございます!
      こちらこそ、いいね!ありがとうございます。コメントも感謝です。

      今日は台風が心配ですが、めげずに良い一日にしていきたいです。
      りまのさんにとっても、良い一日であることをお祈りしてます!
      2021/07/27
    • HARUTOさん
      こんにちは。
      私もこの作品をこの前読みました。襷を繋ぐ為に必死に走る姿に感動して、本当に炎天下を走りたくなりました。
      こんにちは。
      私もこの作品をこの前読みました。襷を繋ぐ為に必死に走る姿に感動して、本当に炎天下を走りたくなりました。
      2021/07/28
    • たけさん
      HARUTOさん、コメントありがとうございます!
      炎天下に走り出したくなりますよね(笑)

      一見、バラバラの6人がしっかりつながっていくとこ...
      HARUTOさん、コメントありがとうございます!
      炎天下に走り出したくなりますよね(笑)

      一見、バラバラの6人がしっかりつながっていくところに感動しました。新しい顧問の美術教師がいい味出してますよね。
      2021/07/29
  • 瀬尾まいこさんの中学男子、部活小説。
    以前「君が夏を走らせる」を読んだのだが、この話に出てくる「大田」のスピンオフ小説だったので、知っていたら、こちらを先読んだのに〜…とちょっと悔やまれた。


    田んぼや山に囲まれた長閑な環境にある、市野中学校の陸上部。
    年々生徒が減るので、部員も少ない。けれど、駅伝だけは毎年県大会に出場している。
    部長となって最後の年を迎える桝井日向は、厳しいながらも実力のある陸上部を育ててくれた顧問の満田先生が異動になり、なんの経験もない美術教師の上原先生が顧問になることを知らされ、絶望する。
    しかも、駅伝には6人必要なのに部員で長距離を走れるのは3人だけ。何とか他からスカウトしてこなければならない、頼りになるのは自分一人。
    誰でも何でも、暖かく包み込める人間になれ、と言われて育った桝井。
    この危機をどう乗り切る⁉︎


    瀬尾さんは、思春期の男子を書くのがとてもうまい。
    まだ、あどけなさを残しつつも、どう自分の殻を破っていくか実はもがいていたりする姿や、友だち同士の距離感を捉える目が鋭いと思う(最近の中学生を見る限り、彼らよりかなり幼い気がするけれど)。
    長く中学校の教師をされていたこともあり、物語からもこの年頃の子ども達に対する愛情を感じる。
    この話に出てくる、突如陸上部の顧問になってしまった美術教師の上原先生は、瀬尾さん自身がモデルなんじゃないだろうか?

    今まで読んだ瀬尾さんの小説も良かったが、これはダントツに刺さりました。
    実際の中学校生活は、こんな風にはいかないと思うけれど、それでも背中を押してくれる、希望をくれる一冊だと思う。
    「大田」だけでなく、他の子のスピンオフもお願いしたい。特に私は、「ジロー」が大のお気に入り。


    以下、桝井の心情で印象に残ったフレーズ

    小学校の時はいろんなことがそのまま楽しかった。けれど、大きくなるにつれて、少しずつ楽しさの持つ意味が変わってきた。今だって仲間と笑って遊んでいれば楽しい。でも、もっと深い楽しさがあることも知っている。
    無駄に思えることを積み上げて、ぶつかりあって、苦労して。そうやって、しんどい思いをすればしただけ、あとで得られる楽しさの度合いは大きい。

    2020.5.28

  • 『その扉をたたく音』を今年の2月に読み、渡部という登場人物が、10年前に読んだ単行本の『あと少し、もう少し』に出てきた子だということが判明した。

    しかし『あと少し、もう少し』の内容を全く思い出せない。

    そしてこれから読みたいと思っていた『君が夏を走らせる』にも『あと少し、もう少し』の中の子が出てくるということなので、10年ぶりに『あと少し、もう少し』を読むことにした。

    やっぱり何も覚えていなかった。
    でも当時の単行本のレビューに自分が書いていることと似て、顧問の上原先生が良かったな。
    文庫本の解説は三浦しをん氏。

  • 表題を見て「あと少しもう少し」
    だいたいわかるし、絵を見てマラソンというのもわかるし
    読まなくてもいいなぁなんて思ってたが

    そこは瀬尾まいこにかかればこうなる。
    やられた!
    読書三昧、運動しない
    この自分、根性ものもなぁなんて
    そして中学生だしなぁ
    パスする?なんて。

    ごめんなさい。
    やはりいい、構成
    なんていっても優しいわ。、
    最後はジンときて涙。
    走りたくなる「単純」走れないから。

    始め全体の流れそしてそれぞれ
    1区、2区、3区と4.5.6区と彼等の思いが伝わる
    自分の気持ちを、相手の気持ちを思いやり、どうしても入賞して一緒に走りたいという気持ち

    素人の自分は何も知らなかった!
    やはり侮れない瀬尾まいこ!
    もっと素直になんて今だったらわかる

    この中に自分がいた。
    環境ではなく構えた中学の時の自分がいた
    それは明かさない。
    すぐ読んでしまえる。
    読んでよかった。

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著者プロフィール

1974年大阪府生まれ。大谷女子大学文学部国文学科卒業。2001年『卵の緒』で「坊っちゃん文学賞大賞」を受賞。翌年、単行本『卵の緒』で作家デビューする。05年『幸福な食卓』で「吉川英治文学新人賞」、08年『戸村飯店 青春100連発』で「坪田譲治文学賞」、19年『そして、バトンは渡された』で「本屋大賞」を受賞する。その他著書に、『あと少し、もう少し』『春、戻る』『傑作はまだ』『夜明けのすべて』『その扉をたたく音』『夏の体温』等がある。

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