優駿(上) (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (334ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101307060

感想・レビュー・書評

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  • いつも競馬を楽しんでいるが、小説では競馬の世界がどのように描かれているか興味があって読んでみた。
    この本が出版されたのは1980年代で、その頃の競馬の世界というのはこんな感じだったのかなと思う。馬主と生産者、調教師、騎手それぞれにドラマがあって、競馬の世界の裏側がよく描かれてなかなか面白かった。競馬入門的な解説もあって、競馬をやらない人でも十分楽しめると思うけれど、競馬をギャンブルとして楽しむ人には、面白くないかもしれない。
    競馬で金儲けするためのノウハウは書かれていないですから。

  • 私の初めての宮本輝作品がこれ。競馬を愛する人なら分かる切なさと愛情とお金と人間の思惑。ドロドロなのに最後はキレイにまとまるのが宮本輝の素晴らしいところ。競馬は人馬一体の大河で、人生の一部なんだと改めて思う。

  • その日、北海道の小さな厩舎に出産を控えた生き物が集まっていた。
    その牧場の、嫁いだ長女、飼い犬ペロ、そして元競走馬のハナカゲ。
    彼女たちはそれぞれ無事に出産を終え、馬は美しい一頭のサラブレッドを産み落とした。
    その仔馬の額には星形の流星があり、やがてその馬は祈りという意味の「オラシオン」と名付けられた。

    これは競走馬と馬に携わる人々を描いたお話です。
    最初は小さな牧場一家、そして馬主、調教師、騎手と。
    それぞれの事情、人間関係が絡まったヒューマンストーリー。

    私は宮本輝さんの本はこれまで割と色々読んできました。
    所が映画にもなったことのある有名なこの本だけは何故か読んだ事がありませんでした。
    今、それで良かったと思っています。
    この本では競走馬に関わるあれこれが書かれていますが、競馬を知らない頃にこれを読んでいたらそれらの記載は全てサラッと読み飛ばしていたと思うからです。
    もちろん、競馬をしらなくても読みがいのある本ですが、知っていた方がさらに興味深くしみじみと読める本だと思います。

    小さい牧場の馬が大きいレースで勝つのは難しい。
    G1、しかもクラシックレースとなればなおさら。
    少ない投資馬券で大きな配当を得ようとするのと同じくらいに。
    それは奇跡、そして夢かもしれない。
    そんなさまざまな人の夢を背負いサラブレッドは走っている。

    上巻ではオラシオンはまだ競争馬になってないし、誕生してどこに引き取られたかというくらいの描写です。
    登場人物たちの紹介、彼らの抱えている事情、人間関係を描いたのがこの上巻で、それが下巻になりどのように展開するのか楽しみです。

  • 同僚の書評に魅せられたのが動機。サラブレッドの誕生・育成の過程を主軸に、それに関わる生産者・馬主の人間模様が複雑に絡み合い、ほぼ一気に読破してしまった。ただ、主役の馬のダービー優勝で終わっていたのが、やや物足りなさを残した。しかし、その大仕事を成し遂げたことが、その後のことが全て上手く行くことの暗示と捉えれば、下手に具体化しない方が余韻を残していいのかも?

  • ああ、宮本輝、
    家族が好きで家にたくさんあるので、いくつか読んだが、どうも好きになれない。

    子供の時に一度開いたけど、馬の交配がどうのこうのの冒頭を受け付けられなかったのだが、久々に手に取ってみた。

    これって一匹の競走馬を巡る、群像劇なのですね。

    久美子と博正、誠を巡る少年少女の成長物語、
    社長、平八郎のナニワ男の波乱万丈な人生、
    冷徹な秘書、多田が心を開いていくストーリーは、割と興味深く読めた。
    博正のピュアで情熱あふれる馬への語り口や北海道の大自然の描写は清々しかった。

    久美子と多田のやりとりも結構よかったと思う。
    多田の奥さんからしたら最低だけどね。
    二人のその後の成長になったようなワンシーンだと思う。

    でも、騎手たちの話は飛ばし読み。騎手や生産者、飼育者とかの男性の登場人物が、大勢出てきたけど、年齢や特徴があまり書かれてないようで、後でこんがらかった。
    競馬用語もわかり難くかった。

    あと、やっぱり宮本輝の描く女性が好きになれない。
    リアリティがなかったり、男の理想過ぎるよ、みたいな時が多い。
    久美子は学生なら、大学のシーンとかもう少し入れたほうがいいかも。
    いくらお嬢様といってもね。
    雑誌を二冊買って、ブディック二、三軒巡る場面とかあったけど、女性誌二冊は重すぎると思うよ。

  • 2013.1

  • ドラマがあり小説としてすばらしいと思う。サラブレッド業界についても詳しく書かれていて興味深いが、それにしても、バブル期だなあ・・・

  • 言わずと知れた宮本輝の名作。

    競走馬を中心にして、さまざまな人間模様が描かれる。
    一人ひとりの個性が強烈に出ていて物語の世界観に入り込むことができる。

  • 映像化もされている競馬ファンなら言わずとも知れた不朽の名作。と言いながら、学生時代は野球バカだった自分が、競馬が好きになって、小説が好きになって、競馬の小説ってどんなのがあるんだろう、とようやくたどり着いた作品。

    内容は競馬ファンじゃなくても受け入れられていることからも分かるように、競馬が織りなすドラマと人間模様が書かれた文句なしの内容。

    この本をきっかけに、宮本輝氏の作品にも多く手を出していくことになりました。

  • 競走馬を絡めたストーリーが面白いということもさることながら、
    流暢な文章で描かれた登場人物がとにかく魅力的だった。

    登場人物が「生きてる」という印象を強く感じた。
    生き生きとしているというよりは、
    生々しいという言葉の方がしっくりくる。

    一人一人の生に粘度を感じた。

    弱さ・欲・汚さ・狡猾さ・滑稽さ。

    生きているという事は色々なものを交えて、
    こんなにドロドロとしたもんなんだ、と。

    未読の方には是非すすめたい。

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著者プロフィール

1947年兵庫生まれ。追手門学院大学文学部卒。「泥の河」で第13回太宰治賞を受賞し、デビュー。「蛍川」で第78回芥川龍之介賞、「優俊」で吉川英治文学賞を、歴代最年少で受賞する。以後「花の降る午後」「草原の椅子」など、数々の作品を執筆する傍ら、芥川賞の選考委員も務める。2000年には紫綬勲章を受章。

「2018年 『螢川』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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