- Amazon.co.jp ・本 (430ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101482231
感想・レビュー・書評
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本書は、若き日のパステルナークと、彼の音楽の師であったスクリャービンとの対話を記すことからはじまります。パステルナークに音楽の道を断念させたものは「絶対音感」でした。その神秘的な能力を与えられなかった者は、そのことに苦しみ、与えられた者は人びとの好奇の視線を向けられて苦しむことになります。こうした事実が、絶対音感について語る者の口を重くしてきました。著者は本書を執筆するにあたって百人の音楽家たちに質問状を送ったものの、回収率は5割で、なかには白紙無記名で送り返してきたものや、あなたはなにもわかっていないという手紙が添えられたものもあったといいます。絶対音感を取り巻くこうした厚い雲を晴らすことが、本書の目標の一つだといってよいでしょう。
絶対音感を追求していくなかで著者は、戦前からの日本の音楽教育にひそむ問題にぶつかり、音楽と人間の関係をめぐる大きな謎を前にしてたじろぐ脳科学者たちの姿を知ることになります。最終章は、五嶋みどりと彼女を取り巻く家族とのかかわりをえがき、あらためて人間にとって音楽とはなにかと読者に問いかける内容になっています。
「文庫版あとがき」で著者は、「本書は絶対音感を礼賛したり否定したりする本ではありません」と書いていますが、こうした断り書きがなくても絶対音感について人びとが語りあい、音楽と向き合うことのできる状況を、著者は願っていたのかもしれません。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
正直に言って、焦点がぼやけてるというか、結局何が言いたいのかが良く分からない本だった。
特に最終章がこの本に入っている理由が謎。
私がノンフィクションという分野を読み慣れていないのが原因なのかなー。 -
この本が出るまでまったく聞いたことがなかった「絶対音感」って言葉だけど、そのスジでは超がつくほど有名だったんだね(゚д゚)!
なんと 戦前から(゚д゚)!
霊能力やESPっぽくて「自分にもあったら面白いかも」なんて思ってたけど、本書を読み進めていくうち そんな大したもんでもないことに気がついた( ´ ▽ ` )ノ
色で言えば、赤を赤 白を白と見分けるくらいなもんで、大枠さえズレてなきゃ 素人にはぜんぜん必要ない能力じゃん( ´ ▽ ` )ノ
味で言えば、ワインのテイスティングとか( ´ ▽ ` )ノ
絶対音感ブームの火付け役でありながら 内容はむしろその熱を冷ますもの、という皮肉な結果になってる面白い本( ´ ▽ ` )ノ
終わりのほう、テーマに直接関係のない五嶋みどり&龍姉弟のミニ伝記が差し挟まれているけど、これはこれで面白かった( ´ ▽ ` )ノ
こんな映画みたいなエキセントリックな家族、本当にいるんだね( ´ ▽ ` )ノ
芸術が人を狂わせるのか、狂った人が芸術に囚われるのか?……人類永遠のテーマだ( ´ ▽ ` )ノ
独立した評伝として長編化すればいいのに( ´ ▽ ` )ノ
しかしまあ、読みづらい文章だったな(´ェ`)ン-…
持って回った表現が多いし、時として冗長……まるで翻訳作品みたい(´ェ`)ン-…
あとがきを見たらごくごく普通の文章だったから、「あれが作者ほんらいのスタイルではなく、わざとああいう書き方をしたんだ」と気づき 改めてびっくり(゚д゚)!
ひょっとして、あらかじめ外国語翻訳を前提として変則的な書き方をしたんだろうか?……(´ェ`)ン-…
取材協力者・参考文献の長大なリストには、ただもう頭がクラクラ……( ゚д゚ )
2019/01/13 -
絶対音感という言葉の意味について、また、音律や和音について、ずいぶん自分が誤解していたことがよくわかった。
非常に多くの人に話を聞き、よく調べて書いているのがわかる。
「絶対音感さえあれば音楽家になれるのか」という問いが発展して、最後は「音楽って何だ」という話になっている。
それは本来のテーマからすれば「脱線」かもしれないが、絶対音感を考えていくと、どうしてもそこに行ってしまうのかも。 -
絶対音感、を追いながら
音楽教育の歴史、軍事利用まであったとは
わが子の絶対音感習得に奔走する親
絶対音感神話、指導者のジレンマ、
いつの間にか、ヒトの耳、脳、を経て、音楽とは、
そして科学者の挑戦へ、まで。
音にラベリングできる技術だけではなく
そのつながり、強弱、リズム、総合的に
創り上げ、奏で、聴き、音を楽しむと書いて音楽。
いい耳を持ちたいです。 -
広さも深みも網羅した体系的な本。絶対音感とは、に終始しないからこそ、音楽とは、という本質に迫る部分があると思う。(物理量の追求に終始してたら音楽としては非常にナンセンスだよな、という説得力があるし、そこに好感が持てた)
絶対音感とは、という点に関しては本のなかにも引用がある「あると便利でどっちつかず、時には厄介」という旨が語弊ないかなと思うし、それ以上踏み込みたい人は読もうねって薦められる本。
あと七章にあるバーンスタインの引用が音楽とは、という語りとして非常に優れていると思う -
何故か小説と勘違いしてたが、絶対音感をテーマにした音楽家たちのエピソード交えた専門書のような印象。
必ずしも絶対音感を持つ人が優れた音楽家、と言うわけではないということだ。
そうだろうな。私も趣味でバイオリンを弾くが、譜面は早く読めるようになりたいが、絶対音感は特に羨ましいと思わない。まぁホントに趣味だからね。
五嶋龍くんって家族中で有名音楽家だったのね。いつか演奏を聴きに行きたいな。 -
医事新報の中野先生のコラムで「至高のエッセイスト」として紹介された最相葉月の著書。具体的な著書名には触れられていなかったがこの作品が代表作っぽい
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絶対音感に関する、渾身のノンフィクション。歴史的な経緯に触れつつ、その日本での熱狂ぶり、問題点、絶対性のゆらぎ。五嶋家の話だけはなじまない感じがするが、組み込まれたスピンオフとしてはあり、だろう。
・丸山圭三郎:ロゴスとしての言葉は、すでに分節され秩序化されている事物にラベルを貼りつけるだけのものではなく、その正反対に名づけることによって異なるものを一つのカテゴリーにとりあつめ、世界を有意味化する根源的な存在喚起力としてとらえられていた
・五嶋節:私、子どもに対して理解はないけど、反省はある。 -
絶対音感の科学的考察かと思いきや、ドキュメンタリーな部分もあったり。
以下、ネタバレ含む。
絶対音感とは何か。
絶対音感は生まれつき持ち得る能力なのか、きたえれば誰にでも身につく技術なのか。
絶対音感を持つことの良さと悪さ。
絶対音感を持てば、何に秀でることが出来るのか。
こう言った点はクリアーになるかと。
戦時中は絶対音感の持ち主が、戦闘機や潜水艦の音や場所の聴き分け、特定が出来るとして研究が進められていたという件には驚き。
最終的には、絶対音感を持っていてもそれが音楽的成功に繋がる訳ではない、という、まあそうだろうなーという結論に向かっていく。
コンピューターでは、今のところ、楽器の聴き分けは出来ないということだけど、聴き分けというのはきっと近いうちに出来るように思う。
けれど、色の例えではないけれど、どのような音を出せば人を感動させられるか、という感情表現?については、きっとコンピューターがそこに至るにはまだまだ時間がかかるのではないか。
私たちは良くも悪くも?生きているものなんだな、と思わされる結末だった。
話は逸れるが、私自身は個人のピアノ教室に通っていて音階の訓練はしなかったけど。
友人の練習に付き添って、ヤマハのピアノ教室に行ったとき、不思議なカードで音当てをしていたのを、確かに色で記憶している。
もう随分前に一度か二度見たくらいのことなのにな、と自分でも少し驚いたのだった。