孤独のチカラ (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (199ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101489261

感想・レビュー・書評

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  •  私はかつて、孤独を恐れて生きてきた。孤独にならないため、無駄とも思える努力をたくさん重ねてきた。学生時代には友だちとうまく付き合えなくて、やむなく孤独を味わったことはあるけれど、周りの目を気にしすぎて結局孤独をしっかり味わったことなんてなかった。
     でも30を過ぎて、「教養」の大切さが身にしみたとき、人付き合いなんてものは最低限でいいのではないか、一人で過ごす時間にこそ、(ポール・オースターの言葉を借りれば)あらゆる本を飲み干し、さまざまな書物から成るいくつもの国、いくつもの大陸を喰らい尽くすことができるのだ、ということに気づいた。そしたらなんと楽なことよ。

     という実感があったため、この本に書いてあることは既知のことというか「そうだよね」感がいっぱいだった。あらゆる表現者たちの言葉(孤独に対する思いなど)は胸に刺さった。

  • 良かった

  • 孤独は決してネガティブなものではなく、人をより高みへと導いてくれる内省的かつ精神を耕してくれる素敵な時間である、という著者自身の孤独論を展開しています。著者は斎藤孝先生です。この方の本は何冊か読んでおり、僕の考えと一致するところが多いです。それもあってかスラスラ読めました。世間的には「孤独」とは寂しくて辛い忌むべきものとされている風潮がありますが、著者も僕もこの考えには違和感があります。「学びて思わざれば則ちくらし」と言われるように独り思索に耽る時間は必要だと思うのです。

  • 人間は活動しているとき三種類の状態がある

    ドーパミンが出ているとき
    興奮していて、物事に熱中しているとき

    セロトニンが出ているとき
    快適な1人の時間

    ノルアドレナリンが出ているとき
    孤立して不快、不満など、虚しさ、海底に沈潜するような感覚


    人はどらだけ単独者になれるかで、その後の成長が決まってくる。夢を追いかけるとき、上の3つの状態があるのは実感できる。


    建築でものづくりをするとき、人から愛される、愛のある場所を作るには実際にその場所で楽しい体験をする。しかし、その空間を作るには、孤独に勉強しなければたどり着けない。
    2つのバランスが大事だ

  • 孤独とは諸刃の剣である。一歩間違えると道を踏み外す元になるが、自己の成長のためには必要である。他者とも繋がれるが、あえて自分独りの時間を作る。この継続が自分を創る。孤独は、「個独」である。個人が個人として独立するための入り口である。こう考えると、現代の孤独を敵視しすぎる風潮はバランスが欠けているのかもしれない。

  • 自分自身に向き合い、深く内省する時間を持つことの大切さを論じた本です。

    テレビで見る著者は、どこまでも明るい印象ですが、そんな著者も若いころに孤独と向き合った時間を持っていたことに感銘を受けました。

    かつて吉本隆明が『ひきこもれ』(だいわ文庫)という本を刊行して、一人の時間を持つことの大切さを語っていましたが、本書の基調となっている考え方も、吉本の主張に通じるところがあるように思います。ただし著者は、どこまでも内にこもって他者を寄せ付けない孤独は「悪い孤独」だと言い、自分を確立させることでかえって他者と深くつながることのできるような「良い孤独」をそれから区別しています。「良い孤独」のあり方が十分に明確にされているとは言いがたいようにも思うのですが、孤独が次の跳躍を生み出す力を育むということがイメージ豊かに語られており、著者がめざす方向性は明瞭です。

  • ひとりでいる事をポジティブに捉えることができない現代の若者たちに”ひとりでいる事の大切さ”を教えた一冊。

    年齢が若くなるほどこの傾向が強く”ぼっち”などという嫌な言葉、ひとりでいる事をあざ笑うかのような言葉が横行しているのは哀しい。

    ひとりでいたけりゃ思いっきりひとりでいていい。その代りその時間を知的生産活動の生産性を上げようというのが斎藤孝氏の言い分。
    むしろ人生の一時期、進んで孤独になろうと提唱している。
    ひとりでいる理由がどうであれ、そんな時間をどうとらえるかで先々が決まってくる。
    自分を見つめなおす充電期間ととらえ、人から隔絶し物事に没頭することがその人に大きなエネルギーを与え、将来に活かされる。

    つるむ=ネガティブな関係
    この式にも納得できる。ひとりでいるのが怖いために不本意な人間関係に捕らわれるのはありがちな事。
    そういえば、大いに名を成した人の体験談など読むとたいていの人が学生時代の孤独について語っている。疎外感や孤独感。

    学生時代にこの本に出会えた人はぜひ実践してもらいたいし、若くない自分もむやみに孤独を恐れずひとりでいる時間を充実させたい。

  • 孤独を紛らわすのに見知らぬ誰かと繋がりたいという今の風潮に疑問を感じながら、自分でも「孤独は嫌だ」と思っていた。でも、つるむことのぬるま湯状態から抜け出し、自分を肯定できる力を持った人は強い。当たり前のようだが、SNSなどで他に承認されなければ自分を保てない事は多くの人に当てはまるのでは。つらいと思っていた「孤独」を肯定できた。

  • ぼっち期間が今の自分を形成しているという感覚を再認識できた。感覚論で目新しさは無かった。違和感を持たなかったと言うべきかも。30ページぐらいでまとめられそうな内容を、名著の引用を乱発することで1冊の本にまでまとめ上げる能力は凄いと思った。

  • 以前、斎藤先生の「くすぶる力」を読んだとき、順風満帆そうに見える先生でも、10年くすぶっていた時期があったことを知り、その頃の、くすぶっていたときの気持ちを吐露しているものがあればぜひ読みたいと思っていたので、とても共感しながら読んだ。
    「あのころの苛立ちや不安感はまったく消えない。それどころか、いまなお不愉快な記憶はなまなましいほどだ」(P21)
    「人は状況にまみれているほど自己を失い、ひとりでいることを恐れるようになる」(P150)
    ・・・他にもいろいろ共感した箇所はあったが、特にこの2か所は自分自身を重ね合わせて完全同意だった。
    ただ、後進に自分の体験をもとにアドバイスする、という性格の本だから仕方ないのだが、後半の、こういうことをしよう、こういう本を読もう…という内容は、私ら同世代の人間にはあまりフィットしなくて…。私たち世代はもう、先生が言うところの「老いと死が見えてきた中年期以降の孤独とのつき合い方は、生と死の折り合い、つまりは最期は自分一人で死んでいかなくては二けないという覚悟を培うことである。」(P113)に差し掛かってしまっているからなのだが。初めから終わりまで同世代に向けた本をお書きになっているのだったら、今度こそぜひそれを探して読んでみたい。

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著者プロフィール

1960年静岡県生まれ。東京大学法学部卒業。同大学院教育学研究科博士課程を経て、現在明治大学文学部教授。教育学、身体論、コミュニケーション論を専門とする。2001年刊行の『声に出して読みたい日本語』が、シリーズ260万部のベストセラーとなる。その他著書に、『質問力』『段取り力』『コメント力』『齋藤孝の速読塾』『齋藤孝の企画塾』『やる気も成績も必ず上がる家庭勉強法』『恥をかかないスピーチ力』『思考を鍛えるメモ力』『超速読力』『頭がよくなる! 要約力』『新聞力』『こども「学問のすすめ」』『定義』等がある。

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