地下室の手記 (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (216ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784102010099

感想・レビュー・書評

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  • 親しくもない友達の送別会に無理矢理参加して逆ギレし、酔って風俗嬢に説教するという、この主人公のやってることは最悪なんだけど、こいつのことが可愛そうで可愛くて、抱きしめてやりたくなる。
    あーでもないこーでもないと考えを巡らせ、リーザの考えを勝手に想像していきなり怒り出したり泣き出したりする。これは鬱状態の人間の思考、意識をものすごく克明に描いていると思う。

  • 自意識が強くて、偏屈で、それゆえ「虫けらにさえなれなかった」男の手記である。
    友人にかまって欲しくて、でも素直になれなくて、暖炉とソファの間を3時間行ったり来たりしている様子がなんとも滑稽で、でも他人事ではないような気がした。
    あれはダメだ、これは嘘だ、そんなの自分じゃない、などと考えすぎてしまうと、結局この男のように地下室に閉じこもる羽目に陥ってしまうということなのかな。
    「ぼくは病んだ人間だ」という書き出しで始まるこの手記には、太宰治の「人間失格」に非常に近いものが感じられる。

  • 地下室 前書き
    「私」という虚構を虚構として記述しようという宣言?
    cf.『孤独な散歩者の夢想』におけるルソーの一人語り宣言
    ー他者の消極的受容。他者なしではもはや語れない。
    ーしかしその他者は偏在する。誰でもない。「ぼく」を見るという行為の結晶のようなもの。「ぼく」をその外部として存在せしめる他者。永遠に迫りくる他者。

    無限循環
    ー無限の弁明、無限の(空想の)他者
    ー社会の、他者の名前付け(意地悪、お人好し、英雄etc)に対する拒否。ぼくはぼく。事実確認的次元でしかなりたたないわたしのアイデンティフィケーション。行為遂行的次元の引力で永遠に連鎖する事実確認的次元のわたし。
    ー偏在する他者、「ぼくは何者?」(⇔革命家)
    ー偏在する他者はしかし感情の対象にはなりえない。相手にするべき対象は存在しない。空想。しかし空想しないわけにはいかない。何もできないぼく

    自意識過剰
    ーぼくは”病的”で”アブノーマル”で”いやしい”
    ーしかし、そうした異常である性質が自らの正常な状態であり、そういう意味で”病気””憑きもの”と切り離すことはできない。
    ー不完全なぼくこそぼく。
    ーそれを不完全と認識できるだけの意識はドストエフスキー(の主人公)にはある。潔白の証明よりも、そうした限りなく社会不適合的なわたし、抑圧されるわたしを含みこんだほんとうのわたしの探究。他者化(社会化)以降のわたし。言語以降のわたし。
    ーぼくも知らないぼく。わたしに対する不安。
     (⇔≪l'homme de la nature et de la vérité 自然と真理の人≫ ルソー)

    他者が与える名前が「わたし」ではないし拒否したい、
    でも同時に他者が与える美しい名前で「わたし」を受け入れたい。
    ー「他者」の中に生きたいから、「他者」からの評価を求めるが、それは「わたし」を他者が望むように置き換えて、飾りつけ、偽ることで、「わたし」をよく理解してほしいという欲望は結局満たされない。という矛盾。
    ー「他者」からの愛など望んでいないとうそぶいたところで、「他者」は偏在しており、「他者」を切りはなすことなど到底できない。「他者なしのわたし」は「ありのままのわたし」ではもはやない。
    ーわたしが「わたし」を知れる、知りたいのは「他者」がいるから。わたしが「わたし」を知るのもまた「他者」の言語によってでしかない。

    わたしも「他者」に名前を与えて、それによって決めつけているのだという理解と、自戒。【リーザ】
    ーわたしは「ありのままのあなた」を知りたい。それこそが愛。本当のつながり。でもそれがままならない。わたしはどこまでも「あなた」を知らない。
    ー「ありのままのあなた」と「ありのままのわたし」ならばつながれるはずだというユートピア的想像。【ズヴェルコフ、リーザ】

  • 2020年4月28日BunDokuブックフェアで紹介されました!

  • 安っぽい幸福と高められた苦悩と、どちらがいいか?
    不幸にしがみついて生きる書物的人間
    「僕はならしてもらえないんだよ…善良な人間には!」

  • ‪情緒不安定でヒステリックな主人公が、自分にも周りにも、腹を立てまくり続けるお話でした。

    ‪でも、自分の心に正直にしか動けなければ、誰しもこんな感じかもしれない。‬
    ‪考えされる作品でした。‬

    ‪とはいえ、楽しい作品、ストーリーを楽しもうといった自分のようなライトな読者にはちょっと楽しめない作品かも。
    読書上級者やドストエフスキーについて深く考察したい方向けの本だと思います。

  • この手の、といったら何だけど、昔の偉い小説家?の本を読むと、このどうしようもないダメ人間っぷりをさらけ出すのが大事って思うよね。みんなダメ人間だけど、それを赤裸々に語るのは結構厳しいわけで、ある種の黒歴史的な。
    というわけでこの偉そうなおっさんの本も読んでみればどうってことないっていうのを分かるためにも良い本じゃないか。何しろどうしようもないおっさんの日々を読んでもどうでも良いじゃないかっていう感じがすごくて、もしかしてわしも本を書いても良いかもってなる罠。

  • プライドが高く、自意識過剰な人にオススメ。

  • 文学

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著者プロフィール

(Fyodor Mikhaylovich Dostoevskiy)1821年モスクワ生まれ。19世紀ロシアを代表する作家。主な長篇に『カラマーゾフの兄弟』『罪と罰』『悪霊』『未成年』があり、『白痴』とともに5大小説とされる。ほかに『地下室の手記』『死の家の記録』など。

「2010年 『白痴 3』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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