マザーズ

著者 :
  • 新潮社
3.74
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本棚登録 : 1232
感想 : 240
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  • Amazon.co.jp ・本 (457ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103045328

感想・レビュー・書評

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  • ユカの語りがうざったくて読みづらくて。
    なかなか進めないのがもどかしかったけど、このうざったさがないと物足りないだろうな。
    育児に追い詰められて、息もできなくなっていくような孤独がリアルで辛い。
    3人の母親の、濃度のはっきりしない微妙な関係性が、物語のヌケ感だな、と思う。
    気にかけているようで、けっきょくは自己完結してゆく感じが不思議だった。

  • 著者の作品を読むのはほぼ初めてで(内容はまったく覚えてないけど、ずっと以前に1冊読んだかも...という程度)こんな本を書く力量にまず驚いた。そしてその救いのなさ、その地獄。少し前に読んだ角田光代さんの『紙の月』が、内容的には不快でも読書体験としては快であったのと違い、こちらは内容も読後も不快。ただそれでも読んで良かったし、きっと再読する。自らが子を持ってしまった今となっては、もし自分が本作を読んで「信じられない」「理解できない」という感想を持てる側にいられたらそれこそが幸せだろうなと思うのみ。

  • 比較的順調に、穏やかに子育てをして来たような気がしていた。だけど、この本の中には かつて私が発した言葉、叫んだ言葉、言われた言葉がぎゅうぎゅうに詰まっていて、息苦しくなる。
    子供がある程度大きくなると、この息苦しかった事実をすっかり忘れるのだ。ほんの短い時間のはずなのに、永遠に出口には辿り着けないと感じていたあの時の事を思い出す。
    3人の夫(元夫)が、とても理解のある人に変化しているのはどうしてだろう。

  • 金原ひとみ、「蛇にピアス」以来読んでなかった。
    なんだか大げさだし、えぐいしで、小説を読んで安らぎたい私にはきつい感じがするので。
    でも、彼女が母親になって、その体験から書かれた小説だと知り、今度は逆に読んでみたくなった。
    あの、アウトローな感じの彼女が、子育てでどんなことを感じたのか。

    読んでみると、やっぱりえぐさは健在で、でもやっぱり、子供を育てるということがどんな大変なことなのか、という筋書きに共感してしまった。

    この小説に登場する母親の何人かは、華やかな職業に就き、旦那様との関わり方もそれぞれ。
    旦那が子育てに対してどこか他人事ってところは、世間の母親たちが「うちもおんなじ!!」と思うところかも。
    なんと言っても、旦那は子供を産んでないし、一日じゅう子供と付き合うことを当たり前のように押し付けられたりしない。

    母親は、それぞれ涙ぐましい努力でもって、子供という嵐から、自分という尊厳を守ろうとする。
    もちろん子供が最愛の存在なんだけど、だからこそ、共存を願う。
    でも、子供は世間が思っているような(あるいはかつて自分が思っていたような)、砂糖菓子のようなものではないことに、産んでから気づいていく。

    涙ぐましい努力の中には、保育園に子供を入れること、仕事に打ち込むことのほか、ドラッグ、虐待、浮気などが含まれる。
    その中でも、もっとも印象的だったのは、虐待。
    ここまで虐待する側の心に沿って、リアルに描写した小説、私は初めて読んだ。震え上がった。

    いつも思うけど、虐待する母親だけが悪いのではない。
    「実の母親なのに、こんなことができるなんて信じられない」と簡単に言ってしまうのは(そう言いたい気持ちはとてもよくわかるけど)、世の中の虐待を減らすことには繋がらない。
    こういう小説が、少しでも、立場の弱い母親というものを救えたらいいと思う。

    哀しいラストまでを読んだら、子供にものすごく優しく接するようになった。
    ま、短い時間だったけど…(笑)
    読んで満足です。

  • こんなに読むことにエネルギーを使う小説もそうそうない。
    本当に疲れた。
    でもそれだけリアリティがあり、母親なら誰しもが持つ
    細かい心の動きをこれでもかといわんばかりにえぐり出し
    まさに書きなぐっているような文体。
    男性が読んだら、「こんなの大袈裟やわ。」と思うかもしれないが
    子供を持つ女性ならこの3人の誰か、あるいはエピソードいづれかに
    間違いなく共感できたと思う。

    あらかた子供の手の離れた私にしたら
    これをよく乗り越えてきたんだな~って改めて
    感慨にふけってしまう。

  • 金原ひとみの本を読了したのってはじめてかも。
    もっと芥川賞作家っぽいかと思ってたけど意外にエンタメ度満載。
    ぐいぐい引き込まれつつ、辛くて読めないほど。
    共感できる部分も共感できない部分もあるけど、子育ての辛さを見事に描いている。
    他の作品も是非読んでみたい。

  • 小説というのは面白い物で、自分の経験したことのないことを経験できる楽しさが動機で読むこともできるし、経験しているからこそ共感をもって読むこともできる。一方で、経験してないから面白くなく感じるし、経験しているから「そんなこと知ってるよ」ってつまらなくも感じる。それを読ませるのも読ませないのも、小説家の技量であり才能なのでしょう。その意味でも、金原ひとみは、予想を裏切らなかった。面白かったです。
    出産を経験することのできない男にとって、ドラッグを常用したことのない人間にとって、本に書かれていることをリアリティを持って受け止めることはできないのだけれど、きっとそうなんだろうって想わせるだけの文章力があります。作者の何気ない表現に、人間や社会を鋭く見つめる哲学者の視線を感じます。若いからと、手にすることのなかった作家でしたが、才能に脱帽しました。

  • 彼女の作品は、
    どうしてこんなに自分とリンクしてしまうのだろう。
    あんまりにも自分と思ってること、思うだろうことがここに書かれすぎて、
    むむむと唸りながら読みました。

    子供も恋も仕事も死も、
    生活と地続きで在って、
    しかもぜんぶがごちゃごちゃに迫ってくる。
    そこを、何とか生き抜かなければね。

  • 傷つき、絶望し、もがき苦しみながらも我が子を愛さずにはいられない母達の大いなる愛に圧倒された。
    間違いなく金原ひとみの最高傑作。

  • 子供を産んで辛かったこと、子供に起きてほしくないことがこれでもかと描かれていて心がえぐられるようでした。そして絶望の中の三人の母に幸せになってほしいと後半は祈りながら読み終えました。
    金原ひとみ、凄い。新作が読みたい作家になりました。

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著者プロフィール

1983年東京都生まれ。2004年にデビュー作『蛇にピアス』で芥川賞を受賞。著書に『AMEBIC』『マザーズ』『アンソーシャルディスタンス』『ミーツ・ザ・ワールド』『デクリネゾン』等。

「2023年 『腹を空かせた勇者ども』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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