家族の勝手でしょ!写真274枚で見る食卓の喜劇

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  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (191ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103058526

感想・レビュー・書評

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  • 今週は、『家族の勝手でしょ!』という、なかなか挑発的なタイト
    ルの本をご紹介します。著者の岩村暢子氏は広告会社アサツーディ
    ・ケイで、1998年から10年以上【食DRIVE】という家庭の食卓調査
    を手がけてきた方です。

    【食DRIVE】調査は、1960年以降に生まれた首都圏に在住する子持
    ちの主婦を対象とした家庭の食卓調査です。事前に食生活に関する
    アンケート調査を行い、その後、一週間の三度三度の食事を写真日
    記の形でレポートしてもらい、最後に、アンケートと写真日記との
    間にある矛盾や疑問点を実際に面接して聞くという手の込んだやり
    方をします。このため、主婦の本音や家族の実態がかなり赤裸々に
    あぶり出されます。それがこの調査のユニークな点です。

    【食DRIVE】関連の本は、2003年に初めて書籍化されてから、本書
    で4冊目になります。最初の本(『変わる家族 変わる食卓』)が
    衝撃的に面白かったため、新刊が出るたびに岩村氏の本は買ってい
    るのですが、4冊目にあたる本書は、これまでの研究の集大成とい
    う位置づけで、実際の食卓の写真(274枚)を見せながら、近年の
    食卓に起きていること、そこから垣間見える家族の姿についてコメ
    ントしたものです。

    そこで見せられ、語られる主婦の言動や家族の姿には、正直、慄然
    とさせられるものがあります。副題には「食卓の喜劇」とあります
    が、笑えるどころか、非常にグロテスクなホラー映画を見ている気
    分になってきます。家族がバラバラの時間にバラバラのものを食べ
    るのは当たり前で、食べる物も急速に市販化が進んでいます。野菜
    など子供が嫌がるものは食卓に出さず、好きなものだけ食べさせる
    ので、極端に偏食で便秘も常態化。お菓子や炭水化物だけの食卓も
    普通に見られるようになり、家で作るよりも外食のほうが好まれる
    ようになっています。食卓が物置化している家庭が多いのも見逃せ
    ません。

    本書を読んでいると、既に家庭の食卓は崩壊していて、共に食べる
    ことをしなくなった家族もその存在意義を失っているかのように思
    えてきます。一体、家族とは何なのか。食が外部化されてしまった
    現在、家族の機能として残されたものは何なのか。これが現実だと
    したら、この現実を前にして何ができるのか。そういう問いを突き
    つけられます。

    食、家族、教育、ライフスタイルを語る上で欠かすことのできない
    一冊です。是非、読んでみて下さい。

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    ▽ 心に残った文章達(本書からの引用文)

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    今では、「外食が多いと野菜が不足する」ではなく、「家で食べて
    いると野菜不足になる」と言っても過言ではない。

    義母から無農薬の米や野菜を送られながら、実母にコーンフレーク
    やフライドチキン、屋台のお好み焼きを買ってもらって「こっちの
    方が嬉しい」と喜ぶような主婦(34歳)――それはもう多数派と
    言ってよいのである。

    何より疑問に思うのは、お父さんの料理参加が多い家庭ほど、主婦
    の活力は増すどころか、逆に料理に関心を失うケースが多くなって
    いることである。

    近年食事作りの簡便化が大きく進行したが、次いで今進行している
    のは、直接的であからさまな「後始末の簡便化」である。

    生活の中に優先される様々なことがあって、食事はその合間になり
    ゆきで出現するできごとのようになってきている。

    昨今の幼稚園は、子供に完食の「自信」「達成感」「楽しく食べき
    る経験」を与えるために、好きなもの尽くしの少量弁当を奨励して
    いるのだろうか。信じ難いことに「野菜は入れなくていいから」
    「栄養のことは考えなくていいから」と明言する園の話さえ複数聞
    いた。

    2008年の「中国製冷凍餃子中毒事件」直後の調査でも「お弁当に冷
    凍食品は止められない」と本音を語る主婦が圧倒的多数派であった。

    写真に写っている子供たちはほとんどが怪しげな箸使いをしている。

    主婦たちは子供の要望が冷凍食品やカップ麺、ファストフードなど
    簡単に済むものだと、調査票に「ラク!」「ヤッター!」「ラッキ
    ー!」「良かった」などの本音さえ書き込んでいることがある。

    家族が「食べそうなもの」をテーブルに並べて置くと、それぞれ好
    きなときに出入りして食べたいものだけつまんでいく、動物の「餌
    場」のような食卓写真もよく見る。(中略)市販品だらけの「餌場」
    は、テーブルから冷蔵庫へ、冷蔵庫から近所のコンビニやファスト
    フードショップへと容易に拡延していくのだ。

    食育では、よく子供たちの「一人食べ」が問題にされる。だが、今
    の子供たちは0歳の離乳食のスタートから、親とは食べる時間も場
    所も、食べているものも違う「別食育ち」になっていることには気
    づいていない。

    いま、家族が本当に一緒にテーブルに着き、一緒に席を立つのは、
    唯一外食先でしかみられない光景となっているのかもしれない。

    かつて親は、まず子供を健康に育むことを考え、ゆえにしばしばお
    せっかいで、時に押しつけがましく口うるさくもあった。子供を一
    人前にするまでは、その任が自分にあると考えていたからだろう。
    だが、今の主婦たちはどうも違う。「私は私、あなたはあなた。う
    るさい事言わないからお互い好きにしましょ。何かあったら言って。
    できる範囲でやってあげるわ」というような関係を、夫はともあれ
    小さな子供にも求めている。

    つまりその意味で、現代の家庭には父や母がいても「親」がいない。
    (中略)そして、「親なるもの」を失った家族は、それぞれの勝手
    を当然のこととして、危く成立しているかのようだ。

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    ●[2]編集後記

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    ついに花粉症が始まり、頭がぼーっとしています。毎年、梅、桃が
    散り始める頃に始まり、木蓮の花が満開になる頃に終わるので、木
    蓮が開くのを心待ちにしています。

    桃と言えば、桃太郎の歌というのがありますね。「もーもたろさん、
    ももたろさん」で始まる歌です。

    娘が急に歌い出したので、幼稚園に行く自転車の上で一緒に歌おう
    とするのですが、どうも「やーりましょう、やりましょう」の2番
    以後がよくわからない。それで幼稚園の先生に聞いたら、先生達も
    よくわからないと言います。すっかり幼稚園で習ったのかとばかり
    思っていました。

    *****
    桃太郎さん 桃太郎さん お腰につけたキビダンゴ
    一つわたしに 下さいな

    やりましょう やりましょう これから鬼の征伐に
    ついて行くなら やりましょう

    行きましょう 行きましょう あなたについて どこまでも
    家来になって 行きましょう

    そりゃ進め そりゃ進め 一度に攻めて攻めやぶり
    つぶしてしまえ 鬼が島

    おもしろい おもしろい のこらず鬼を攻めふせて
    分捕物(ぶんどりもの)をエンヤラヤ

    万万歳万万歳 お伴の犬や猿キジは 
    勇んで車をエンヤラヤ 
    *****

    これは、軍歌か?と思うような好戦的な歌詞で思わずのけぞりまし
    た。歌が作られたのは明治44年で、尋常小学校の教科書に載ったの
    が最初らしいですが、さすがに時代を感じさせます。

    娘には色々な歌を教えてあげたいけれど、さすがにちょっと3番目
    以後は歌う気になりません。一度は歌ってあげたけれど、「エンヤ
    ラヤ」以外は覚えなくていいということにしていますが、これから
    こういうふうに、「教えるべきか?」と悩むようなことって増える
    のでしょうね。

  • 一般家庭の食事を1週間調査した結果をまとめ、傾向や問題点を説明した本。

    調査方法にさまざまな工夫がみられる。
    月曜日から日曜日というような1週間にせず、あえて水曜日から翌週の木曜日という風に調査している。調査と言うことで張り切っていた食事が、週の半ばで終盤を迎えることで普段の食卓が見えてくるからなのだとか。
    朝・昼・晩と調査何日目か分かるように、「○日目朝食」といった札を置いて写真撮影するルールになっている。また、デジカメ禁止でその場で映りを確認したり取りなおしたりできないようにしている。

    家族構成と年齢も書かれているので、読み手に分かりやすい内容になっている。

  • 今日登録した、地球の食卓を見ていて思い出したのですが以前に買ってさあと読んで、奥さんに渡した本ですが、奥さんの気に入った本になっているようです。
    「写真274枚で見る食卓の喜劇」というサブタイトルにあるように日本の数家族の食事メニューを1回ずつ写真にとって載せてある本です。以前にTVとかでも話題になったと思います。
    子どもの朝ごはんや昼食にスナックやコンビニのおにぎりとか。食べ過ぎの内容など今食育をテーマに語られていることがよくわかるいい本だと思います。

  • 現代の食卓の恐ろしい事情。
    ●子供の便秘とその理由
    ●お菓子化する食事とその理由
    ●焦げ付く揚げもの、水没する煮物
    ●消える味噌汁
    ●食器化する調理器具たち
    ●加工食品づくしの食卓
    ●「主食重ね」は豪華な食事(炭水化物に炭水化物)
    ●幼稚園弁当の奇妙な指導(嫌いなものは入れない)
    ●子供の好き嫌いと親の対応
    ●空腹で待てない子供たち
    ●休日はショッピングセンター
    ●バラバラ食から「勝手食い」へ
    ●子供と別食のよろこび
    ●揃ってもバラバラメニュー
    ●ダイニングテーブルの行方
    ●フレックスの「家族一緒」

    実際の一般家庭の食卓を写真で紹介していた。
    「こんなこと本当にあるの~?」と思っていたけれども、私もやっていることがありました。それ以来、ちゃんと魚は銘々皿に用意しています。
    自分の「食事作り」を省みるよい機会になりました。

    この本は一家族の一週間の食事を三食、デジカメではなくインスタントカメラにて撮影。修正も撮り直しもできない真実の食卓です。

  • ↓貸出状況確認はこちら↓
    https://opac2.lib.nara-wu.ac.jp/webopac/BB00158657

  • 家族の食が切り口の社会分析。

    極端な事例ばかり集めて載せているような気がするけど
    そうなった理由である根本的な考え方はうなずける。

    自分の家族の食卓について振り返るいいきっかけになるかも。
    普通、他人の本音の食卓なんて写真付きで見られないので。

  • 久米宏さんがラジオで紹介していたので、読んでみました。
    なんというか本当のことなのかもしれないけど、あげあり取りのようなまとめ方にいらっとしたし、こういう食事を作らないようにしなければとおもうと、かなりプレッシャーを感じました。
    違うページに登場してくるAさんが同一人物ではなかったりするのも、分かりずらいなと思いました。

  •  計120家族の一週間の食事を調べたデータ(2003年から2008年まで6年分)をもとにしているそうです。確かにひどいものもあるけれど、著者に一つもツッコミを入れられないような食卓を三食一週間続けるのは不可能なのでは……。せっかくだから、同じ家族の一週間分の写真を見てみたかったです。

    (図書館で借りた本)

  • マジキチ。こんな家庭ばっかじゃないでしょ…

  • 「普通」って何だろう?というのがいちばんの感想。
    幼稚園のお弁当指導が衝撃的だった。
    首都圏だから?地方では?いろいろと疑問が残るのだが、
    友人の子どもや外食時の子どもの様子を見ると本書の通りだったり。
    私も料理は得意分野では無いので、調査を受けてるつもりで、
    試しに記録を撮ってみようかと思った。
    肉眼で見てるのと、時間を置いて写真で客観的に見るのでは、
    だいぶ印象が違うだろうから。

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著者プロフィール

1953年北海道生まれ。法政大学卒。大手広告会社勤務等を経て、現在大正大学客員教授、日本能率協会総合研究所客員研究員。1960年以降生まれの人びとを対象とした20年に及ぶ継続的な調査研究に基づき、現代の家庭や社会に起きるさまざまな現象を読み解くことをテーマにしている。著書に『変わる家族 変わる食卓』『「親の顔が見てみたい!」調査』『普通の家族がいちばん怖い』『家族の勝手でしょ!』『日本人には二種類いる』など。第2回辻静雄食文化賞受賞。

「2017年 『残念和食にもワケがある』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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