三人姉妹

著者 :
  • 新潮社
3.07
  • (4)
  • (24)
  • (75)
  • (16)
  • (4)
本棚登録 : 264
感想 : 57
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (214ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103144311

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 大学を卒業したのに映研OGとして(かどうか分からないけど)就職せずにミニシアターでバイトしている水絵。その水絵の語りで年の離れた二人の姉のすったもんだの日々が語られる。長女の義妹 雪子がめちゃめちゃカッコイイ。実家の手伝いをしている未婚アラサーなんだけど、夜中にポルシェをかっ飛ばす姿がなんとも言えずゆるゆるの登場人物の中で異彩を放っている。車の免許を持っていることで(ポルシェを持っていることで)色んなしがらみから解き放たれることができると語る雪子に一番感情移入してしまった。

  • タイトルだけで借りてきた小説(私も三人姉妹だからである)。2週間くらい前にちょろっとだけ読みはじめてみたが、そのまま寝るのを惜しんで読むほどにはならず、ちょっと積んでいて、あ~そろそろ返却期限やともう一度読んでみる。

    どうも一話目があわんというか、不思議な文章なのであった。第一段落(3行)が一文なのはまだいいとして、第二段落(7行)もほとんど一文、さいごの行で 13字だけの二文目があるという、やたら長い長い文章で綴られている。そのあとも時折やたらと長い文がぶちこまれて、どうもこれが私の息継ぎに合わないようであった。

    その文体がさいしょは気になって、うー、読むのやめようかと思ったが、しばらく読んでいると、大島真寿美も書き慣れてきたのか(七つの話は、初出の小説誌で2年かけて発表されている)、私も読み慣れてきたのか、気にならなくなり、結局つるつると最後まで読む。

    主人公は三人姉妹の末っ子・水絵。ふたりの姉は亜矢、真矢というまるで双子かと思う名だが、水絵が似たような名でないのは、もう生まれやしないと油断したあとにできたから、らしい。姉ふたりは双子ではなく、学年でひとつ、生まれ年でふたつ違いである。

    上の姉の、小姑にあたる雪子さん(姉の夫の妹)がクルマについて語るところがおもしろい。
    この雪子さんはふだんは、田舎の町で、家業の自動車教習所で取締役としてつとめていて、ふだんは事務服を着込んで愛想もなく色気もなく「いかず後家」などと教習所のおっさん指導員たちに言われていたりするのだが、じつは、夜中にポルシェでずばーーーんとぶっ飛ばすタマなのだ。

    ▼夜中に一人で車で走ってると、あたしは自由だ、どこまでも自由だ、って気がしてくるの。これって不思議よ。どんなにへこまされている時だって、絶体絶命の時だって、あたしは壊されない、壊れてなんかやるもんか、って強く思えるの。このままどこまでだって行ける。好きな場所へ行ける。攻めて行くことだってできるし、逃げていくことだってできる。なんだってできるんだ、って。それから、あたしはあたしだ、って強く感じる。誰がなんと言おうとあたしはあたしだ、誰にも文句は言わせない、って。とにかく、あたしはあたしなんだ、あたしは平気だ、って強い気持ちが蘇るの。…

     …役員室の窓から、とろとろ運転して怒鳴られている男の子や女の子を見ながら、がんばれ、って応援してる。がんばって、途中で諦めないで免許取りなさいよー、って。そうして早くこの道具を手に入れて、遠くまで走っていきなさい、ってこっそりささやいてる。…

      …車持ってないなら、レンタカーだっていい。たとえば追いつめられた人が家出する時、専業主婦が離婚する時。もちろん、経済問題や他にも重要な問題はいくらでもあるだろうけど、それよりうんと手前に、なにか強い意志のようなものが要るよね。何が何でも出ていく、っていう。そういう力ってどこから出てくるんだろう? そういう時、試しに夜中に車を飛ばしてみたらいいの。よし、出ていこう、って気になるから。もしくは、よし、ここで踏ん張ってやろう、って気になるから。どっちも同じ。自分で自分が確認できるなら、どっちだって同じでしょう? (pp.53-54)

    で、読みはじめはちょっとつっかかったのだが、読み終わってみると、おもしろかったな~

    水絵と友だちのびびちゃんが雪子さんにポルシェに乗せてもらってドライヴするところなんかは、読んでいて、すごーく昔みた「テルマ&ルイーズ」を思い出して、あの映画また見たいなあと思ったのだった。

  • 大学を卒業してバイトしながら、大学の映研に関わっている末っ子の水絵と、社会人でバリバリ働いている次女の真矢、長女で田舎に嫁いだ亜矢の三姉妹の生活を、末っ子の視点から捉えた小説。ゆるーい感じで、感情がいきいきとしています。ドニー・パーソンズの同名の小説と比べてしまいますが、こちらは原題が The Family Way (妊娠)ということで、妊娠をめぐる三人姉妹の話だけあって、話がよりシリアスで、ピリピリとしています。こちらは末っ子のゆるりとしたモラトリアム的な視点で貫かれているので、ゆったりと暖かい話になっています。

  • こんな姉妹、大人になってからだと楽しいだろうな、と思います。

  • 最初の一篇だけでよかったな。

  • この作家は、他に『ふじこさん』しか読んでいないけど、軽いタッチの話題をしっかりした文章がささえている感じ。
    三人姉妹それぞれの日常、悩みを描き分けて『人生ってさー、大変だけどそれが味かー』、なんて思わせます。
    でも、道徳っぽく書きすぎない・・・いいかんじの語りです。
    主人公が若いフリーター。作家は、熟年世代。若い人の恋愛感や職業意識を上手に描けている・・・ちゃんと文章を味わってゆっくり読みたくなる素敵な一冊でした。

  • 2009.8
    三人姉妹の末っ子水絵のモラトリアムな日々。
    自分も三姉妹だから思わず手に取る。
    映研のノリを遠くて短い記憶からひっぱり出したり、
    女三人でうだうだ喋ってった頃なんか、ちょっと懐かしいなぁと思いながら読んだ。

    本文より
    「山のように不安定な要素を孕みつつ、この場所は安定してると錯覚して安心して暮らしているのよ。みんなそうなんじゃない?あたしだってそうよ。すべては幻想、でもそれで調和してる。」

  • めったくたガイドで指摘されていたように、主人公の女の子、水絵の語り口がリアルで面白い。年の近い姉二人から少し遅れて生まれた末っ子の水絵。ずっとみそっかす扱いだったのが、大学を卒業し、フリーターをしている今となって、やっと話の仲間に入れてもらった、という関係がわかるなぁ・・と。水絵や、水絵の友だちのびびちゃんなど、人との関係でこれ以上は踏み込まない、という距離感の描写が面白かった。離婚すると息巻いて、実家に戻ってきていた長姉がまた婚家へ戻り、あっという間に第二子を妊娠。何事もなかったかのように生活している自分を一歩離れてみている様子をみている水絵。社会に出て行く、家庭を築く、ということはそんなもの? と、ますます、就職する気がなくなっていくんだろうな、とも。末っ子が、望まない「目年増」になってしまうあたりも、うん、わかるなぁ、なんて、なぜかマイケル・ジャクソンまで思い出してしまった。

  • 大学卒業後もアルバイトでつなぎ、映画に関わる夢を捨てきれない末娘の水絵。年の離れた性格が違う2人の姉や映画仲間の大学生右京君をめぐるあれこれ。

    「yomu yomu」に連載された『三人姉妹』から『天国は待ってくれる』まで連作の7編。わたしも天国は待ってくれると思いたい。とりとめもない話だが、嫌いではなかった。

    映研の先輩グンジさんがいい味出している。

  • 福池家の三人姉妹、裕福な専業主婦の亜矢、キャリアウーマンの真矢、映画にうつつを抜かしてフリーターの水絵。
    プラス、タイに単身赴任中の父とおばちゃん力満載の母、おっとりした亜矢の夫に息子と義妹、真矢に惚れるバーのマスター、水絵の彼と友達、など、さまざまな人々が繰り広げるなんていうことのない日常が描かれている。
    大きな事件もなければたいした起伏もない、やたら語尾を伸ばしてしゃべる水絵の話し方のようなゆるさに満ちている。
    嫌いじゃないけど、読み終わって、じゃあなんだったんだろう、とぼうっとしてしまった。

全57件中 41 - 50件を表示

著者プロフィール

1962年名古屋市生まれ。92年「春の手品師」で文学界新人賞を受賞し同年『宙の家』で単行本デビュー。『三人姉妹』は2009年上半期本の雑誌ベスト2、2011年10月より『ビターシュガー』がNHKにて連続ドラマ化、2012年『ピエタ』で本屋大賞第3位。主な著作に『水の繭』『チョコリエッタ』『やがて目覚めない朝が来る』『戦友の恋』『空に牡丹』『ツタよ、ツタ』など。2019年『妹背山婦女庭 魂結び』で直木賞を受賞。

「2021年 『モモコとうさぎ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

大島真寿美の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×