- Amazon.co.jp ・本 (300ページ)
- / ISBN・EAN: 9784103510512
作品紹介・あらすじ
忘れられない、あの日の音色――。亡くなるひと月前まで書き継がれた、最後のエッセイ集。何も知らず母に連れられて行った三歳のレッスン。十五歳でソリストを務めたN響世界一周演奏旅行。十八歳でジュリアード音楽院に留学して味わった挫折感――。自身の半生をユーモラスに描き、国際コンクールの舞台裏、かけがえのない友人や師、そして日本の未来への想いを綴る。華やかで大胆な、在りし日の演奏さながらの名エッセイ。
感想・レビュー・書評
-
中村絋子氏の本は初めて読みましたが、こんなに素敵な文章を書く人だったのだとびっくりしました。
また、内容も自身の経験をしっかり咀嚼して自分のものにしてから伝えてくれているのでわかりやすく納得できました。
他の本もぜひ読んでみたいです。
昨年話題になった「蜜蜂と遠雷」の予習復習に読むにも最適だと思いました。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
ピアニストの娘が東京オペラシティのエレベーターで著者に会ったことがあると言っていたが、凄いオーラを感じたようだ.確かに凄い存在感があるのだろう.楽しめるエッセイ集だが、東側諸国を歴訪した話が面白かった.国自体は貧しくてもクラシック音楽への情熱は素晴らしいものがあったのだろう.ビッグネームとの堂々と付き合ってきた姿勢は、最近の「カワイイ」とはかけ離れた本当のキャリアウーマンの走りだったのかもしれない.
-
好きなピアニストさんではなかったけれど、一生涯ピアノを弾き続けたピアニストとして尊敬する中村紘子さんについて、彼女が生きた時代のピアノ界の様子が知れて興味深かった。ハノンを弾きながら読者、中村紘子さんもやっていたとあって、何だか嬉しかった。
私も練習頑張ろうと思えました。 -
著者が亡くなる少し前に発刊された書籍で、それまでの人生を"冒険"と表現した自伝的エッセイ。
著名な音楽家がどんな感覚で、何を見てどう感じ・考えているのか?、など、興味を惹かれた。
それにしても、日本という狭い舞台に収まらなさ加減には、凄いを通り越して笑ってしまう。
優れた才能と努力、持ち合わせた気質も運を呼び寄せ、気力の強さがチャンスを活かす。世界的な成果を収める人というのは、やっぱり違うものだなあ...とボンヤリと想う。
後進育成にも尽力され、人間的にもバランスの取れた方だった。如何にも"芸術家です!"という、悪い意味での破綻を来していない人だったという印象。
周囲で、一度でも接した人達が、その魅力に惹かれたのも分かる気がする1冊でした。 -
今年の7月の出版。昨年7月に逝去されたが、昨年までのトピックスも多く、著者が最近までお元気だったことを痛感した。著者が3歳の時に井口愛子氏(井口基成氏の妹)に習い始め、12歳の時に桐朋学園(ピアノ奏法がハイフィンガー奏法の井口系らしい!。対するはスピアノート奏法の安川加寿子氏)に入学したことなど、幼児期の「冒険」が書のタイトルになっているが、最近までの評論の数々を楽しく語ってくれている。15歳の頃、安宅英一氏の家で朝鮮李王朝時代の白磁に触れた際の感動の言葉が印象的、やはり藝術家はこのような時にも感性が違う。
「そして安宅さんは、それから、さりげなく言ったのである。「手にとってご覧下さい。
この肌にじかに触れないと、分りません」私は勧められるままに、その高価にして貴重な白磁を恐る恐る両手とる。器は小ぶりであったが、すっくと美しく細い首をのばして気品に溢れていた。両手の掌に包んで眺めているうちに、その青いような白い肌が、なんとほんのりと紅味を帯びて私の手の中でふつふつと脈を打ち始めたような錯覚をおぼえ、思わず息を呑む。私はまだ子供であったので、その時感じたことを自分でも明確に表現できなかったが、今思えば、強いて言うなら、何かエロティックとでもいう感触がしたのだと思う。というのも、以来私はずい分長い間、骨董特にこうした古い焼物を集める人のことを、悪い意味ではなく「イヤラシイ」と思うようになってしまったのだ。(この白磁は、今では大阪市の東洋陶磁美術館のコレクションとなっている)。」
また、韓国での2014年6月のN響公演に同行し、マーラーの交響曲4番の演奏後のソウル聴衆の熱狂に接したときの感動が、韓国中央日報の文章として引用されている。これがまた印象に残る。「サッカーは戦争を中断させられるというが、音楽はどうだろうか。…8年ぶりに来韓したN響はここ数年間で両国に浮上した永年の葛藤を、短くも太い平和の旋律で一瞬にして飛ばしてしまった。」
相撲好きの恩師コハンスキー、ネアカ・ロシア人レフ・ブラセンコの話など心和ませる話も多い。浜松音楽祭の紹介は恩田陸「蜜蜂と遠雷」を思い出させた。 -
ピアニストでもあった著者の逝去後に出版されたエッセイ集。初めて著者のエッセイを読んだが、今更ながら文才にも感心した。当方クラシック音楽にはとんと疎いのだが、本書を読んだら、著者のはもちろん、エッセイで名前の挙がっているアーティスト達の音楽が聴いてみたくなった。RIP。
-
恩田陸の蜜蜂と遠雷を読んだあとにこの本と出会えたのは、嬉しい偶然だった。
著者は言わずと知れた高名なピアニスト。国際的なコンクールの審査員もつとめられ、そちら側からの目線で書かれている内容は率直で、興味深い話ばかりだった。あまりにも歯に衣着せぬ物言いに大丈夫だろうかと、読者の私がハラハラさせられることも。
驚くのはその人脈の豊かさ。超有名人が大勢出てきて、ビックリする。皇太子様までとは!
一流の人には一流の人が集まってくるのだなぁと、感心するばかりだ。
蜜蜂と遠雷を読まれた方には、是非この本をお勧めしたい。恩田陸氏のすごさを再確認するかもしれない。
中村紘子さんが、蜜蜂と遠雷を読んだ感想を聞いてみたかった。 -
芸を極めるような方は、二芸も三芸もできるんだなとほとほと感心してしまう。
触れているものの数、種類が想像をはるかに超えている。
生きておられるうちに、一度演奏を聴ければ良かった。