- Amazon.co.jp ・本 (280ページ)
- / ISBN・EAN: 9784103513919
感想・レビュー・書評
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廃校してしまう女子学校の最後の卒業生。の中の落ちこぼれ学生たちを何とか卒業させようと救済処置として、構内の寮で半年の合宿生活をすることになった生徒たちの、それぞれの過去と未来への小さな一歩を書いた群像劇です。
かなりコンパクトに纏まっているのですが、僕はもっとたくさん読みたかったと思わせるくらいしみじみいい本でした。
色々な事情を抱えた少女たちが、厳しくも優しい理事長から色々な事を受け取り、そして理事長もまた最後の生徒と関われる喜びが、表紙のように明るいタッチで描かれています。
加納朋子さんの本はいつも優しくちょっと切ないです。これも希望に満ち溢れているけれど、やはりちょっとした切なさが漂っています。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
カーテンコール。
加納明子さん。
閉校になる女子大学で
卒業できない者達を寮に住ませて卒業させよう。というお話。
少し生きるのが不得意な
女子達。
規則正しい生活、きちんと管理された食生活、毎日必ず太陽を浴びて、適度な運動をする。
未来の自分に対して、
きちんと責任を持つべき。
ハタチを過ぎた若い人への
メッセージ。
あなた方の舞台で、
あなた方は間違いなく主人公。
向日葵の花言葉。
あなたは素晴らしい。
私は素晴らしい。
少し広めの額の理事長。
言葉が胸に沁みました。
ゆっくり前を向いていこう。
常に明るい方、
暖かい方を目指して進んでいけば、そんなに大きく
間違えたりしませんから。
良かった。
おススメです。
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廃校の決まった女子大で、卒業出来なかった訳アリの学生が、校舎の片隅の宿舎で半年間の補習を受けることになった。
性同一性障害、骨肉腫、睡眠障害、ドリンク剤依存、肥満、拒食、自傷、etc
現代の事情が目白押し。
萌木学園の理事長の良心は、彼女達に少しだけ健やかな身体を取り戻させ、卒業の日を迎えます。
角田理事長に拍手です。
卒業式に理事長が語った自分の身体に責任を持つよう、未来の自分に向き合うよう伝えた言葉が重い。
この年になってもまだ、自分の身体に責任を持とうと改めて思わされました。
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閉校というデッドラインがあり、手厚いフォローがあったのに、卒業できない。本人たちも、自分を怠惰でダメ人間と思っていたのが、だんだんと見え方が変わっていく。
それぞれが抱える、事情や闇。つらく、救いの見えなかった悩みだからこそ、希望の光が差したとき、ぐっとくるものがある。
ひとつだけぞくっとする話があるけれど、前向きな気持ちになれる一冊。 -
ときどき、こういう本に出会う。いま、この本を手に取ったのはなにか理由があるんだ、と思える本。
このような短編集で、登場人物が少しずつ重なっている物語、好きだな。最初、タイトルの意味が分からなかったけど、最後に出てきた。
ルームメイトと助け合うこと、菜々子の決意、玲奈の気持ち、理事長の姉への想い・・それぞれに秘めた思いを胸に、前に進んでいかなければならないんだな。 -
2年ほど前にご選書(いわた書店さん)いただいたものだが、当時読んでいたら破り捨てていたかもしれない。間違いなく良い、けれど、ひとの持つ傷にさわる物語だから。傷にかさぶたのできたいまに、読むことができてひと安心。
厳しいことを具申するけれども、未だおさない人間に、「この本はあなたの味方です!」などと言ってはいけない(帯の話)。
世には、(可能性は低い、けれど)仏がいる」可能性がゼロではないと信じられるくらい成長しないと、自分にこの居場所がないことを、味方がないことを嘆くしかないだろう。そうして、絶望して本に、もしかしたら世にそっぽを向いてしまうかもしれないではないか。
これは私が描きたい物語のなかまではない。ひとにはひびくかもしれない、けれども。でも、それでも世にこうした、娯楽ではない課題に向き合ってくれる作家さんがいらっしゃることは救いだと思う。 -
久しぶりに読んだ加納朋子さん。とても良かった。舞台は閉校が決まっている女子大、もうこれだけで世間からこぼれてる感じがするが、登場するのは閉校までに卒業できなかった女の子たちで、まあ半端ないこぼれ方だ。みなそれぞれの事情でそうなるに至っているわけで、ありきたりな言い方だが、これはその彼女たちの再生の物語だ。
とにかく語り方がうまくて、ヘタをすると陳腐な話になる題材をしっかり読ませてくれる。何と言っても痛切なのが、最後に学長が語る話。小説としてはあまりにもストレートな語りなのだけど、いや今回ばかりはこれでいいのだと思った。一人でもがいたり落ち込んだりしている若い女の子に届いてほしい。 -
初めて手に取った加納さん。1万円選書のいわた書店さん推奨、ということで読んでみた。
閉校した女子大の寮で行われる、落第生のための集中補講期間。お日さまのように正しい愛情を注ぐ角田理事長のもとで、様々な事情を抱えた女学生たちが少しずつ芽を出し天に向かって茎を伸ばしてゆく。
自分を大切にしよう、と思える温かな本。おすすめです。