カーテンコール!

著者 :
  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (280ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103513919

感想・レビュー・書評

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  • 廃校が決まった大学で、寮生活をさせられることになった女学生たちの物語。
    それぞれ卒業できなかった理由があって、その理由が「今風」である。
    いや、「今風」というより、今になってようやく世間に認められ出した病気だったり、価値観だったりするのだ。

    最初はそれが隠されていて、少しずつヒントが出され、最後に明かされる。
    そんな謎解き仕様はさすがの加納さん。
    そして、ちょっとシビアな内容に触れるところも、物語を軽くしすぎることなく、考える機会をくれる。

    購入するまで知らなかったが、テレビでも紹介されていたらしい。
    ついでにいうと装丁も素敵だし、今後もたくさんの方に読んでもらいたい。
    映画化されるとしたら理事長は小日向さんがいいなぁ。

  • 最初と最後でずっと泣き、途中の連作短編たちはほほえましさがまさる青春ストーリー
    (ちょっと菜々子ちゃんのお話だけは執念深くてお、っと思ったけど)
    加納朋子さんのミステリーやっぱり好きだな。人が死なない(厳密には今回のお話は過去に死人がでているが)ミステリーっていいよね。あたたかくて、ほっとして、泣ける。
    初期の作風、そして現在の作風が交差しているような素敵な一冊でした。
    お気に入りの一冊。

  • 卒業できなかった理由は個々にあるのですが、浅すぎず深すぎず絶妙な所まで描いてあって、読みやすくかつ飽きさせない。
    皆を見守る角田理事長の存在がとても良いです。
    大人のセーフティネットがきちんと機能していて安心できる。
    柔らかく暖かい物語になってます。

  • 久しぶりに号泣してしまった。

    ちょっとコメディな感じなのかと思いきや
    実は案外ディープな内容で
    今の若い人たちの
    生きることへの息苦しさ見本市のような。

    それでいて、
    軽いタッチで描かれてるので読みやすく、
    あぁ、さすが加納朋子さんだなぁ。

    やはり私の年代からすると
    母親目線で読んでしまうので
    理事長の思いに涙腺崩壊でした。
    若い子たちにもたくさん読んで欲しい一冊。

  • +++
    幕が下りた。もう詰んだ。と思ったその先に、本当の人生が待っていた。経営難で閉校する萌木女学園。私達はその最後の卒業生、のはずだった――。とにかく全員卒業させようと、限界まで下げられたハードルさえクリアできなかった「ワケあり」の私達。温情で半年の猶予を与えられ、敷地の片隅で補習を受けることに。ただし、外出、ネット、面会、全部禁止! これじゃあ、軟禁生活じゃない!
    +++
    「砂糖壺は空っぽ」 「萌木の山の眠り姫」 「永遠のピエタ」 「鏡のジェミニ」 「プリマドンナの休日」 「ワンダフル・フラワーズ」
    +++

    乙女ばかりの寮生活の半年を描いた物語である。と聞くと、さぞや華やかできらびやかな日々が繰り広げられるのだろうと想像したくなるが、舞台は、経営難による平衡が決まった萌木女学園の敷地の一角に建つ合宿棟のような建物。スタッフは、理事長の角田を始め、彼の妻や娘、老教師や校医など、ほぼ身内と言ってもいいような面々。さらには、外部との接触は一切禁止、食事も間食はじめ、生活の一部始終をしっかり管理された、矯正施設のようなものだったのである。生徒たちはと言えば、幾度もの救済措置からも零れ落ちた、折り紙付きの落ちこぼれであり、それぞれが問題を抱えている。覇気のない補講合宿なのだが、理事長の采配によって同室にされた者たちは、少しずつ相手のことを見るようになり、翻って自らにも目を向けるようになっていく。亀の歩みのようなのんびりしたものであっても、確実に進んでいる姿を見ていると、出会いの妙を感じさせられる。誰もが何かしらの屈託を抱えて生きているという、当たり前のようなことを認識するだけで、世界の色が変わって見えてくることもあるのだろう。最後の章では、角田理事長の胸の裡が語られるが、それに耳を傾け、その哀しみを想像できるようになった彼女たちの姿にも感動を覚える。切なくやるせなく、だが、じんわりと胸を温めてくれる一冊だった。

  • 1話目は「惑う」で既読。
    そこから始まる連作短編集。

    閉校する萌木女学園を卒業できなかった
    諸事情ありの学生を集めた合宿。

    愛した学校から
    みんなを卒業させたいと願う理事長の思いが
    とても優しかった。

    そして設立の頃の
    理事長のお姉さんの話がとても悲しく
    切なかった。

    一人一人の生徒が抱えている卒業できなかった
    「わけ」はLBGT、拒食、肥満、睡眠障害、自傷・・・
    なかなか重い。
    でも、この世の中に「わけ」を
    抱えない人は少ないと思う。

    「自分の未来に責任を持つ」
    そうできたとき、
    きっと「私は素晴らしい」と言えるのだろうな。

    いいお話でした、みんなガンバレ!

  • 既読の1作目が1番好き。
    最後に出てきた理事長さんが魅力的。
    そして、その同じ大学に集められた様々なものを抱えた女子学生たち。
    理事長を始めとするスタッフさんたちや、同室の学生との関係がそれぞれを救っていく。
    でも、あの優等生さんの「理由」はぞっとする。そんな理由って、そんな闇の中にいるなんて。ああ、でも本人はそれでも幸せなのかもしれないけれど、、、
    それでも、あの旅立ちのあと、みんなに幸多からんことを。

  • 【収録作品】砂糖壺は空っぽ/萌木の山の眠り姫/永遠のピエタ/鏡のジェミニ/プリマドンナの休日/ワンダフル・フラワーズ

  • 閉校が決まった萌木女学園。しかし単位を取得できずに残った落ちこぼれの学生たちを卒業させるため、理事長が直々に半年間の合宿を執り行うことに。半ば否応なしに参加させられた女学生たちの、学業だけでなく精神的な問題も「卒業」に導くハートウォーミングな連作ミステリ。
    とことん行われた救済措置にもかかわらず落ちこぼれるってどういうこと?と思ってしまいますが。なるほどそれぞれの事情があるんだよねえ。もちろんそれをただの甘えだと言ってしまうのはたやすいのだけれど。これ、本人にとってはかなり深刻な問題だっただろうし。それがひとつひとつ解きほぐされていく様にはほっこりさせられました。
    お気に入りは「プリマドンナの休日」。まさかそのために! というとんでもない衝撃がとにかく印象的。でもそこまでできるって、物凄いことですよねえ。

  • タイトルと装丁が気になって1章だけ立ち読みして、そのまま真っ直ぐレジに持って行くほど私好みの文体で。
    とにかくポップで読みやすい!
    最近は重たいミステリばっかり読んでたから余計新鮮に感じた。
    爽快感というか、清涼感というか……真夏に飲むキンキンに冷えたサイダーみたいな……


    初っ端からミスリードとどんでん返しの応酬で、終始泡を食った。
    女学園がテーマね、主人公は男子中学生……ふむふむ、と素直に読み進めていたから、えっ女の子だったの!?と最初からあっさり騙されるという(笑)
    現代社会で特に注目されるようになった事柄(トランスジェンダー、摂食障害、エナジードリンクによるカフェイン過剰摂取……等)も随所に散りばめられていて、
    それらが「こういう子たち、実際にいるんだよね」と物語をよりリアルに感じさせてくれるいいスパイスになっている。
    角田理事長の食えない人柄もとても好ましい。


    私自身、高校は普通科の募集を停止する最後の年に滑り込み、
    行きたかった専門学校は高2のタイミングで募集停止・閉校が決定、次に選んだ短大も私の代で募集停止……と、
    閉校と縁がありすぎる学生生活を送ってきたせいで(そんな縁いらないけど)物語の状況がありありと想像できた。
    試験が甘々になるとか、先生たちがとにかく全員卒業させたいと躍起になって学校規約をぶっ壊そうとするところとか(笑)
    留年するにも場所がないしね。
    「後がない」ってのは結構なプレッシャーだ。




    話がそれたが、一押しは「プリマドンナの休日」。
    菜々子の鋼のメンタルと圧倒的行動力、加えて尋常じゃないほどの強かさ、ぜひ見習いたい。あの子すごすぎる……色んな意味で。
    てっきり文武両道品行方正なお嬢様だと思ってたから事の顛末には度肝を抜かれた!
    最後の1行を読み終わった後、本を握り締めたまま固まり暫く呆然としてしまったほど。
    二重の意味で腹にとんでもないもの抱えてた。完璧そうに見える人も、一癖二癖あるもんだよね……。


    「ワンダフル・フラワーズ」。
    玲奈と私の境遇が少し似ていて、読んでいて胸が痛かった。
    私の父も作中にあるような人柄で、私も母も散々苦しめられた記憶がある。
    この半年間角田理事長夫妻から温かい愛を与えられ、玲奈にとっては束の間の休息のように思えただろう。
    彼女にも幸せになってほしい。
    「あなたは素晴らしい」、お守りみたいな花言葉だ。




    加納朋子先生の作品を事前情報無しで初めて読んだけど、本当にいい買い物したなあというきもち。
    他の作品も読んでみたい!





    最後に。
    私が一番共感して読んでいたキャラクターは真実。
    きっと彼女とは仲良くなれると思う!百合いいよね!!(笑)

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著者プロフィール

1966年福岡県生まれ。’92年『ななつのこ』で第3回鮎川哲也賞を受賞して作家デビュー。’95年に『ガラスの麒麟』で第48回日本推理作家協会賞(短編および連作短編集部門)、2008年『レインレイン・ボウ』で第1回京都水無月大賞を受賞。著書に『掌の中の小鳥』『ささら さや』『モノレールねこ』『ぐるぐる猿と歌う鳥』『少年少女飛行倶楽部』『七人の敵がいる』『トオリヌケ キンシ』『カーテンコール!』『いつかの岸辺に跳ねていく』『二百十番館にようこそ』などがある。

「2021年 『ガラスの麒麟 新装版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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