小澤征爾さんと、音楽について話をする

  • 新潮社
4.11
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本棚登録 : 2198
感想 : 280
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  • Amazon.co.jp ・本 (375ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103534280

感想・レビュー・書評

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  • こんなに解らない分野のことを、こんなに面白く読めるって
    やっぱこの人の文章力なんだろぉか。
    それとも、心から好きなことを語り合う人同士の話って
    解る解らないを跳びこして、こんなにも面白いものなんだろぉか。
    ともあれ、凄い♪

    録音した会話の中から、丸々書き起こしてる訳じゃないだろうに、
    例えば
    「これ、砂糖ですか?」みたいな本題とは関係ない部分のチョイスが
    効いてるんだよね~。
    その辺は、やっぱり著者のセンスだわね♪

  • 考えてみれば、この二人の対談というのはアリだろう。村上も自分で書いているが、二人には確かに共通する部分があるからだ。何点かの共通点は、実際に村上の文章で読んでもらうことにして、一つ思い出したのは、どちらも日本で権威があるとされている人たちにこっぴどくいためつけられていながら、ちょうどそれとは反対に海外ではたいそうな評価と好意を得ている点だ。

    今の人は知りもしないだろうが、小澤は忘れていない。ちゃんとN響からボイコットを受けたことを口にしている。村上にしても日本文学の権威筋からはかなりバッシングを受けている。はっきりと書いているわけではないが、村上はそうした二人の共通する部分をかなり意識しつつ、このインタビューを持ちかけたにちがいない。

    小澤がここまで心を開いて音楽について語ることができたのは、村上に対する信頼があってのことである。たしかにかつてジャズ喫茶のマスターであった村上は自分で言うほど音楽の素人ではない。クラシックにしても、そのレコードコレクションがどれほどのものかは、小澤が驚くほどだ。

    ではあるにせよ、演奏家でなく単なる聴き手にすぎない作家相手にずいぶん突っ込んだ話をしているし、最後にはセミナーの会場に同席を許してさえいる。音楽と文学という異なる分野で仕事をしていても、互いを理解し合える相手を得たという悦びがインタビューから伝わってくる。音楽について話される内容は勿論のことだが、何よりそういう生き生きした前向きな感動があるのだ。

    音楽については、大好きなマーラーについて「巨人」第三楽章の曲をかけながらの対談が素晴らしかった。小澤の「とりーら・ヤ・った・たん、とやらなくちゃいけない」というようなくだけた語り口調がそのままマーラーの曲になって頭の中に響いてくる。音楽について書かれた本を何度も読んだが、こんな経験ははじめてだ。

    対談の中で村上が文章を書く方法を音楽から学んだと語っている部分に感銘を受けた。「文章にリズムがないと、そんなもの誰も読まない」「でも多くの文芸批評家は、僕の見るところ、そういう部分にあまり目をやりません。文章の精緻さとか、言葉の新しさとか、物語の方向とか、テーマの質とか、手法の面白さなんかを主に取り上げます」。このあたり、かなり手厳しい日本の文芸批評に対する反論になっている。村上はきっと音楽を聴くように自分の作品を読んでくれる批評家を待っているんだ。そう思った。

    でも、日本にも村上の良さを分かる批評家はいる。例えば、清水徹が、こう語っている。「普通に書いているようでいて、突然予想外な発展をしていくし、それから文体に魅力というものがある」(『書物への愛』)。これなど、村上の「しっかりとリズムを作っておいて、そこにコードを載っけて、そこからインプロヴィゼーションを始めるんです。自由に即興をしていくわけです。音楽を作るのと同じ要領で文章を書いていきます」という発言の言い換えのように読める。

    村上は小澤の音楽についての話を書き残しておきたいという思いがあったのだろうが、期せずして作家としての自分の仕事について誰かに心おきなく話しておきたいという気持ちも無意識の裡にあったのではないだろうか。それが、小澤という願ってもない相手と向き合ううちに自ずから顕れ出たのが、このインタビューであったような気がする。まさに、運命の出会いというべきである。

  • 一気読みした。
    村上春樹がクラシックを勉強しすぎていてビックリした。小澤さんよりも音楽史的なことは把握出来ていて、小澤さんに「そうなんだ。」と言わせていた。

    小澤さんが本をあまり読まない様で、「文章にリズムなんてあるんだ。知らなかった。」みたいなことを言ってる。村上春樹がインタビュアーだったら何かしら作品の話するかな、と思ったけど一切出ず。。。

    バーンスタインの弟子時代・副指揮時代の小澤さんの勉強の取り組み方はすごい。早朝からスコアとにらめっこする。誰にとっても楽譜を読み込むことは基本中の基本なこと。誰も劇場にいなくなってからスコアをピアノで勉強する。安月給でも他のアルバイトをしていては勉強の時間が無くなるので一切しない。常に劇場へスタンバイしている。だから、急遽指揮者交代しないといけないときは小澤さんが信頼されて指揮を任された。ここまで仕事にかけていたから今の成功があるんだと思った。

    • mitsukinomoriさん
      面白そう!!読んでみたくなった。
      面白そう!!読んでみたくなった。
      2011/12/26
    • なっちゃんさん
      ありがとうございます!面白いです★是非♪
      ありがとうございます!面白いです★是非♪
      2011/12/26
    • 猫丸(nyancomaru)さん
      早く文庫にならないかなぁ~
      早く文庫にならないかなぁ~
      2012/05/29
  • 162春の祭典、指揮が難しい。作曲者自身が上手く指揮出来なくなって改訂版を出したらしい※印税切れ対策?説も
    40 カラヤン先生は長いフレーズを作っていくことを重視
    レニー(バーンスタイン)は天才肌
    マーラー、オーケストラの使い方がすごく上手い。楽譜には指示ビッシリ
    マーラーは突然変異、ドイツ音楽の流れではスコア読めない
    オペラのセット、貸し出しで元をとる、ウイーン。
    ミラノ、オペラのブーイングは文化

  • 小沢征爾とは、何者なんだろう。
    どうしてこんなにも、自分の好きなこたに向かっていくことができたのだろうか。

    この世代にはいるのだろうか?
    オノヨーコや、草間彌生、コシノジュンコ。塩野七生もそうか。

    戦争で抑圧されて、飛び出た世代。


    世代論だけではないと思うかわ。

  • クラシックつながりが止まらない。やっぱり、村上春樹はエッセイのほうが面白い!インタビューの中に出てくる音楽を収めたCDを合わせて聴きながら読むと面白さ倍増!マーラー聴きたくなった。音楽って不思議な世界だな。

  • 2011.12記。再掲です。

    いや、こんな本がいきなり書店に並んでいたら「また出版社にまんまと乗せられて・・・」と言われようとも買うしかないのであった。

    村上春樹と言えば小説に出てくる音楽の描写はもちろん、「意味がなければスイングはない」に代表されるマニアぶりをさく裂させた評論などもあり、本書でもそれが遺憾なく発揮されている。

    冷静に読むと、対談部分はともかく、ところどころに挿入されるエッセイは、村上春樹のもっとも上質なそれに比べるといまいち精彩を欠くというか、本来「うまく言葉では言えないが」と言いつつ、それこそ「その世界のありようをありありと思い浮かべることができるような」日本語にするのが彼のすごさなのに、今回はいささか表面的な表現になってしまっている気もする。たとえば小澤のレッスンを受ける前と受けた後の学生の変化について触れている部分。らしくないですよね・・・

    が、しかし伝わってくるのだ、村上春樹の「楽しくて仕方ない」雰囲気が。
    「ノルウェイの森」に伊東君、という登場人物が出てくる。
    「(伊東は)あまり多くを語らなかったけれど、きちんとした好みと考え方を持っていた。フランスの小説が好きで・・・音楽ではモーツァルトとモーリス・ラヴェルをよく聴いた。そして僕と同じようにそういう話をできる友だちを求めていた」「彼は田舎の人々が山道について熟知しているように、モーツァルトの音楽の素晴らしさを熟知していた」。
    その彼から主人公が音楽の良さを教わる暖かいシーンは、そのままこのインタビューの風景と重なる。

    ところでこの本で一番印象に残ったのは若き日の小澤さんが文字通り死ぬほど仕事をしていること。気に入った仕事しか受けない、みたいな気難しい若き天才芸術家のステレオタイプとはもっとも遠いところにいる。超一流の人はやっぱり人とは桁違いのレベルで働いて勉強している、ということが分かる。

  •  村上春樹がクラシック音楽にまつわる様々な感想を展開し、小澤征爾が村上の発言に同意するというような組み立て。
     流石に売れっ子小説家だけあって、音楽を言葉で表現する術に長けているとは思うが、村上春樹の音楽のとらえ方、聞こえ方が的を射ているのかどうかの判断はぼくにはできない。小澤征爾が殊更ツッコミを入れないところを見ると、間違ってはいないのだろうけど。
     それより、これまで毛嫌いしてきた小沢の演奏を聴いてみても良いかなというのが、この本を読んだ唯一の収穫。
     村上春樹の本は読んだことがない。正確に言えば「ノルウェーの森」を読みかけて途中でギブアップしたんだが、こちらの方は当分の間敬して遠ざけようという意志は変わらない。
     

  • 以前読んだ本の再読。

    小澤征爾と村上春樹という、ある意味「道を極めた」人どうしの対話だから、面白くないはずがない。

    村上春樹氏はジャズの人かと思っていたら、クラシックにも深い造詣があることが、本書を読むと理解できる。

    また小澤征爾氏の音楽家との交友関係も垣間見え、非常に興味深い。多くの音楽家とのふれあいから、マエストロが形作られたのだろう。

    本書で村上が「世の中には「素敵な音楽」と「それほど素敵じゃない音楽」の二種類しかない」というデューク・エリントンの言葉を引用しているが、まったくその通りだと思う。

    音楽好きであれば楽しめる一冊だと思う。

  • WikipediaやYouTubeを参照しながらじっくり読むのがおすすめという感じ。文章と音楽の関係というくだりになんとなく共感できて、村上春樹読んだことないけどひょっとするとわたし読めるのでは……?と脱線。どこを読み取るとかここを学ぶみたいなことを決めにくいけれど楽しい本ではあった

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