星新一 一〇〇一話をつくった人

著者 :
  • 新潮社
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感想 : 68
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  • Amazon.co.jp ・本 (571ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784104598021

感想・レビュー・書評

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  • 非常に読み応えのある人物評伝。ショートショートの達人 星 新一(本名 親一)の素顔に熱く迫った作品。ショートショートは昔いくつか読んだけど、どんな人なのかはほとんど知らなかった。かつて一世を風靡した製薬会社の御曹司だったとは。さらに起業した父 星 一(ハジメ)の事業家としての閃きと行動力と人脈活用には驚嘆する! 作家 星新一と事業家 星 一の2人の評伝のような読み応えになっている。
    父に纏わる政財界の面々、新一に纏わる作家の面々、いずれも私たちがよく知る大物たちの名前がずらずら出てくるので非常に興味深かった。
    あらためて星新一の作品を読んでみたくなった♪

  • 最相葉月の本は長い。徹底的な取材をして、自分の考えを語るとそうならざる得ないのだろう。長いけれども引き込まれる。まず、題材が良い。最相がギモンに思ったり知りたいと思うことは、私も知りたいと思っていたことが多い。そして素人の目線で調べが進んでいくことが読者を魅了する。専門家の立場で書かなくて、素人が確かな調査をして書くから良いのだ。
    星新一の話もズンズン読みました。私は司書だから周知の事柄も含まれるが、それ以上に知らないことが多くて面白かった。知っている作家がガンガン出てくるのも楽しいです。それからSFやたんぺんが文学的地位がなかったことに驚いた。

  • ショートショートの日本における創始者にして、レジェンド。おそらくもうすでに伝説。そんな星新一の伝記、評伝。
     星製薬創業者にして、戦前、戦後に国会議員まで務めた星一を父親に持つ新一。森鴎外を叔父にもつ、一の妻、精の華麗なる家系。一はとんでもないバイタリティで、野口英世、新渡戸稲造、伊藤博文、後藤新平、張作霖・・・・などと関係を持ち、台湾や満州で利権を獲得して星製薬や関連する会社を拡大していくが・・・。戦後は一転、星製薬は傾き、一はアメリカで客死。長男の新一は会社の利権に群がる有象無象に翻弄される。いい時にはその利の分け前に群がり、傾きかけると徹底的に貪り尽くす・・・そんな人間たちの姿を見てきた新一は昭和31年、「日本空飛ぶ円盤研究会」に出会う。そして、SF界の巨匠となっていく。
     しかし、ショートショートが文壇からは正当に評価されない。筒井康隆や小松左京など後輩たちは様々な文学賞を受賞する。認められたい・・。たくさん読まれる、教科書にも採用されるという栄誉の一方で、正当に評価されていないのでは苦しみ、苦悩が新一を蝕んでいく。少し寂しい、晩年。
     でも、この人すごいや・・・・。

  • お坊ちゃんで才能ある人だとしか思ってなかったけど、もの凄い父親や、会社や、ショートショート作成などのプレッシャーが多い人生だったのですね。
    最後の方ホロリときました。

  • 装丁がクラフト・エヴィング商会の二人だったのがきっかけで手にとった本。
    大人も子どもも楽しめるショートショートの作家、星新一。あの独特な作風の裏には、こんなベースがあったのですね…
    星新一作品が、また読みたくなりました。1001篇…読んでみようかな。

  • ショートショートの神様とも言うべき星新一の評伝。父星一の話から新一の死まで、遺族や周囲の人にインタビューして纏められた労作。「一〇〇一編」以降に関しては若干著者の思い入れが入っている。全体には抑制の効いた記述で興味深い内容。

  • 大好きだった星新一のショートショート。中学生時代の通信教育で国語教材だったのが初期の傑作「おーいでてこーい」これが僕の最初の星新一であり、新潮文庫への入口でもあった。読み易く短い文に凝縮された様式が如何に長編と対等に扱われるか。この命題が彼の仕事にはついてまわっていた。その本人を綴るノンフィクション。端正な構成でしみじみと読まされる大揺れの人生ではあるが、巷でよく聞くユニークな人物像からはかけ離れたストイック過ぎる生き様だ。
    後期の作品が失速する様も客観的に淡々と描かれる。あらゆるものにセンシティブな若い時期から、そのピークを過ぎてしまう時期との折り合いは、作者にも読者にもツライものです。

  • 2011.7.29 図書館よりレンタル)

  • ショートショートの神、星新一の生涯を追った作品。
    追ったと言っても、逝去後に星さんの手に入るありったけの情報を集めてまとめた本。これは力作と言ってもいいと思う。それほど分厚く、内容も濃い。
    著名人たちも多く登場する。
    前半は時代背景もあまり知らず、人物も大量に出てくるのでちょっと理解できなかった。

    これを読むちょっと前、ちょうど「ショートショートは小説って言えるのか?ほとんどの話を覚えてないし、単なる娯楽だったのかも」と思っていた。
    そんな感情を本人に話していたら激怒されていただろう。

    すらすらと読んでしまう話ばかりだけど、1001話を作るという途方もない偉業を成し遂げることがどれだけすごいことか、これを読んで初めてわかった。


    御曹司の息子として生まれ、父の後をついで大企業の社長になり、信頼していた重役に裏切られ、会社を手放し、SF作家になるも周りから受け入れられず、1001話の重圧に苦しみ、最後まで人を信じられなかった星氏。

    そんな、波乱万丈で、とても悲しい、一人の偉人のお話。

  • 『ボッコちゃん』『ようこそ地球さん』『人民は弱し 官吏は強し』…文庫の発行部数は三千万部を超え、いまなお愛読されつづける星新一。一〇〇一編のショートショートでネット社会の出現、臓器移植の問題性など「未来」を予見した小説家には封印された「過去」があった。関係者百三十四人への取材と膨大な遺品から謎に満ちた実像に迫る決定版評伝。

著者プロフィール

1963年、東京生まれの神戸育ち。関西学院大学法学部卒業。科学技術と人間の関係性、スポーツ、精神医療、信仰などをテーマに執筆活動を展開。著書に『絶対音感』(小学館ノンフィクション大賞)、『星新一 一〇〇一話をつくった人』(大佛次郎賞、講談社ノンフィクション賞ほか)、『青いバラ』『セラピスト』『れるられる』『ナグネ 中国朝鮮族の友と日本』『証し 日本のキリスト者』『中井久夫 人と仕事』ほか、エッセイ集に『なんといふ空』『最相葉月のさいとび』『最相葉月 仕事の手帳』など多数。ミシマ社では『辛口サイショーの人生案内』『辛口サイショーの人生案内DX』『未来への周遊券』(瀬名秀明との共著)『胎児のはなし』(増﨑英明との共著)を刊行。

「2024年 『母の最終講義』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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