- Amazon.co.jp ・本 (111ページ)
- / ISBN・EAN: 9784106021046
感想・レビュー・書評
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著者は西洋美術史家。文章に女性らしく、繊細で時に皮肉の交じった視点を感じながら読みました。
フェルメールは、資料がほとんど残されていない謎の画家と言われていますが、当時の画家は概してほとんど資料が残っていないものだとバッサリ書かれてあり、著者の伝説化しすぎないドライな捉え方に好感が持てました。
フェルメールと同時代の風俗画家は、絵の中に、マニエリスムのようにさまざまな意味を含めた仕掛けを書きこんでいましたが、フェルメールは逆に、そういった意味深なモチーフは一切排除していたそうです。
彼の潔いまでのシンプルさは、もともと自然発生したものではなく、画家の主義としての独自性だったわけですね。
「牛乳を注ぐ女」は、見慣れた作品ですが、描かれたテーブルが台形の不自然な形になっていると、初めて知りました。
さりげないながら、赤・青・黄の基本色のバランスのとれた作品だということも。
また、彼の生まれ育ったデルフトには、今や彼の作品は1枚もないそうです。
これはフェルメールファンにとっても、町にとっても残念なことですね。
フェルメールは、あんなに静謐な絵を残しているのに、ヤクザな家系出身というのは意外でした。
祖父と叔父は贋金づくりに手を染め、父は刃傷沙汰を起こしたことがあるため、彼の結婚は相手の家族に反対されたそうです。
カラヴァッジョの人生を彷彿とさせるような面が、彼とは正反対の人物のように思えるフェルメールにもあったとは。
どうも日本人は、フェルメール作品と聞いたら無条件に礼賛するような風潮がありますが、「眠る女」には、フェルメールらしからぬ空間構成の混在があったり、また40代になってからの晩年の彼の作品は、神秘性が欠けたものになっているということも、時代ごとの作品を比べてみてわかりました。
やはり彼も実験を重ねてきた画家。作品の良しあしもあるのです。
「デルフト眺望」は、見たままをスケッチしたものかと思っていましたが、火薬庫の爆発で打撃を受けたデルフトの町へのオマージュだったと知って、そこに深い画家の悲しみがあったと知りました。
この本の後半は、「カメラ・オブスキュル」を画家が使ったか否か、という仮定への反論に割かれています。
専門家である著者としては、作成法に関しては看過できないポイントだとは思いますが、作品ありきの私はそこまでは特に気にはならないため、さらっと流し読みしました。
最後に、過去のフェルメール作品窃盗事件の記載があり、平和な世界を伝える小作品が、どろどろとした現実の政治的駆け引きに利用されてきた詳しい経緯を知りました。
今なお見つかっていない作品もあり、早く発見されることを祈るばかりです。それもいい状態のままで。
フェルメールの作品を見ていると、ノスタルジーを感じます。
彼の作品が好きな日本人が多いのは、その抒情性が国民性と合うのでしょうし、また日本に一作もないというのも希少性を感じさせるのかもしれません。
タイトルの通り、なんとなく謎めいていたフェルメール自身と作品について、身近に感じられるようになった一冊です。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
絵画に詳しくなくても読める、フェルメールの絵にまつわる本。
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制作年代に紹介されており、絵が洗練されていく様が素人目にも分かって面白い。解説も分かりやすいし、改めてフェルメールの作品の魅力に惹きこまれた。
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図書館本。
読みやすいけど、個人の主観がかなり入ってるので
これだけ読むのは危険危険。 -
[ 内容 ]
現存する作品、わずか30数点―その1点1点を読み解き、人間フェルメールの真実の姿に迫る。
[ 目次 ]
フェルメールはどこがどう凄いのでしょうか?
デルフトに生まれ、死んだひとりの画家のことを教えてください
フェルメールはどんな時代に生まれたのですか?
“風俗画家”としての本領はどこにあったのですか?(物語画から風俗画へフェルメールの選択―1650年代半ば;デルフト風景を描いたそのわけは?―1650年代末;フェルメール、何かを掴む;美しき到達点;翳りゆく晩年)
真作か?非真作か?論議のわかれる4作品
“200年後に再発見”の真相は?
世紀の贋作事件はなぜ起きたのですか?
フェルメールの絵はどこまで「写実」なんでしょうか?―21世紀の視点
なぜ狙われる?―フェルメール盗難史
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[ 関連図書 ]
[ 参考となる書評 ] -
京都の「ルーブル美術館展」に行く前に読みたい。
(読まずに美術館へ行って想像力をふくらませて、その後に『あぁ、こうだったのか…』と謎解きするのも楽しいかも♪)
フェルメールも好きだけど、一番好きなのはルノワールの絵です。 -
だいすきよ。
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1672年、フェルメールの住んでいたデルフトからアムスまでは船で片道12時間。船というのがオランダっぽい。
フェルメールの絵画はオランダでたくさん観た。家の近所のアムステルダムの国立博物館の壁にもしょっちゅうポスターが貼っていた。 -
フェルメール作品の実物を見てないでこんなことを言うのもなんですが、もっとわくわくする謎解きのやり方がある気がした。