- Amazon.co.jp ・本 (250ページ)
- / ISBN・EAN: 9784121018625
感想・レビュー・書評
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『ぼくらの頭脳の鍛え方 必読の教養書400冊』で紹介されていたので読んだ。
特に、議論(ディベート)するのに必要らしい「排中律」と「矛盾律」と「同一律」について知りたいと思って手に取ったのだが、「排中律」と「矛盾律」についてはよく分かったと思う。
「同一律」については見逃してしまったのか、索引にも単語が載っておらず、他の本を見るまでのお預けとなってしまった。インターネットで調べた方が早いような気もしている。
と、個人的な読書動機はさておき、本書は「論理学」を、記号や式を用いずに言葉で説明しようという試みがなされている。
著者曰く、現代論理学は「記号論理学」と呼ばれるくらい記号や式のオンパレードらしい。
確かに、図書館の論理学の棚の本をパラパラとめくって見ると、見慣れない記号や式が書いてあって慌てて退散してしまったので、著者の試みは正しかったのではないかと思う(文系脳)。
しかしながら、本書を読み進めていくうちに、「否定」の論理の段階で、「この論理学の考え方、既視感があるような…」と、全くの論理学ド素人のはずなのに思い始める。
そして、「かつ」「または」が出て来た辺りで疑惑が確信に変わり、極めつけに「ド・モルガンの法則」と「背理法」が出て来たところで
「これ、高校の数学か!」と内心叫ぶのであった。
記号や式を見ると拒否反応を起こしていたくせに、いざ「数学で見たあの図か」と思うと、「そっちを見せてくれたらパッとわかってたかも…?」と思ってしまうのだから現金なものである。
しかし、そうは言っても、懇切丁寧に説明してくれているので、言葉ならではの味わいや、数学では自明のこととされていたのが、実はある一つの立場に立った物の見方だったのだ、ということが分かり、新たな発見があった。
というわけで、本書を読む際には、数学が好きな人は高校数学の教科書を横において、数学を見るのも嫌な人は同著者が書いた(監修している)『ロンリのちから』のようなイラストつきの本を手引書として読むと、より分かり易くなるかもしれない。
もちろん、この本だけでも分かるように書かれてはいると思うが。
最後に、メモがてら、「排中律」と「矛盾律」について、理解したことを書いておく(論理学ド素人なので、理解が間違っていたら悪しからず)。
◎排中律:Aまたは(Aではない)
(例)結婚しているか、していないかのどちらか。
…ただし、これを採用できるのは「実在論的立場」(神の視点)に立つ時のみ。「A(例えば、赤)」と「Aではない(例えば、赤ではない)」の間にキッパリと線を引き、中間を認めない・排しているので「排中律」と呼ぶ。
これに対し、「赤からオレンジの間、どこからが赤・赤でないという線引きをどうやってすんの?無理だと思うんだけど」という人間視点に立ったものを「反実在論的立場」と言う。
◎矛盾律:(Aかつ(Aではない))ということはない。
(例)「大学生かつ大学生ではない」ということはない。
…これは、実在論的立場でも反実在論的立場でも採用する。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
橋下さんが論理学を学ぶべきだ。みたいなことを言っていたから興味があって、本屋で目にとまったので買って読んでみた。言葉でつくる文書を数学みたいに読んでいくってことなのか?後半は難しかった。現実世界では、議論の時とか論文を書くときは使えそう。だけど、論理的じゃない文書や感情があったって面白いよね。
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命題論理,述語論理への入門書.
命題論理はほぼ高校の数学で習うような内容.しかし,それを数式ではなく,日常言語をつかって説明してあるので,ある意味でやさしく,別の意味では難しい.それでも丁寧に繰り返しをいとわず説明してあるので,学校で一通りの勉強をした高校生くらいなら読み通せるのではないか.
私は理論自体は,もう少し抽象的に書いてあったほうがわかりやすいが,「この本で私は,論理学という学問が,私たちが日常用いていることばに潜む論理を理論化し,体系化していく,その実際の手触りを伝えようとした.だから,できあがった理論のみごとさよりも,むしろあれこれ迷いながら理論化を模索していくそのプロセスを,ぜひ味わい,楽しんでいただきたい(あとがきより)」という著者の意図はしっかり伝わったし,それを十分楽しんだ.どういう分野でもこういうプロセスを説明するのはとても難しいと思うので,それを成し遂げた著者には拍手をおくりたい.
しかし思うに,こういう命題論理,述語論理が役に立つのは数学と情報科学くらいかもしれないな.もう少し複雑な世界を扱おうとするとこれだけでは足りないのは著者が最後に指摘している通り.そしてこの世の中はいかなる論理をも超えておこる出来事がたくさんあり,論理的に考えることは良いことなのかどうかわからないこともたくさんある.大変だよほんとに. -
難しい。とにかく難しい。はっきり言って一回読んだくらいではさっぱりわからない。
まずは理解できるまで何度も反復することから始めねば。 -
【内容】
記号を使わずに記号論理学をお話してくれる感じ。
雑談的に噛みくだきつつ、卑近な例で論理のつくりを解きほぐしてくれます。さらには言葉の輪郭を固め、その連なりを丁寧に見ながら用いることの楽しさをも教えてもらえるかもしれません。
【類別】
論理学。
筆者によれば実在論的立場から現代論理学、記号論理学、数理論理学の根の辺りを扱っています。
【着目】
第1章で「論理」を概観、2「否定」、3「連言」「選言」、4「条件法」、5「命題論理」、6「述語論理」(「全称」と「存在」)。
証明はそこそこ。導入則と除去則はかなり。出題を交えつつ進めますので眠くなりにくいでしょう。
書かれている内容を頭の中でベン図や論理記号に置きかえてみると能動的に楽しくアレです。どうぞ。
【備考】
このレビューは第17版に拠っています。 -
通常の論理学の本ではふれられない、「なぜそんなことを考えたのか」「なぜそんな風に考えなければならないのか」を説明してくれる本当の「入門」書。いちど、標準的な論理学の本を読んでモヤモヤした気持ちのまま読む方が、より納得できるかもしれない(!?)。
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40
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何かを否定するって難しいことだなあ、なんて思っちゃいました。
論理的に考えるってそういう文章とかじゃない限りなかなか意識してませんよね。
口語で書かれているんですけど、どんどん言葉の闇に嵌る感じ。真面目に考えると面白いけど難しいです。 -
哲学者・野矢茂樹が、「論理学ってけっきょく何なんだ。何をやっているんだ」ということを著した、論理学の入門書である。
本書の最大の特徴は、「はじめに」で語られる通り、現代の論理学の主流は「記号論理学」と言われ、入門書も横書きで記号が頻繁に出てくるものが大多数である中で、本書は縦書きで、普通は記号を使って書かれる部分も文章で説明されているところである。
著者はまず、「論理的」であるということを、「ことば」は意味の連関性を持っており、その連関性によってつながる意味のネットワークを踏み外すことなく正確に行き来することである、と述べる。
そして、
「A」と「Aではない」(否定)、
「AかつB」(連言)、
「AまたはB」(選言)、
「AならばB」(条件法)の4つと、
「何からその主張が導けるのか」(導入則)、
「その主張から何が導けるのか」(除去則)の2つ、
計6つのシンプルな公理から成り立つ演繹的推論を扱う体系(公理系)の作り方を、
日常の具体的な事例を示しながら分かりやすく説明している。
命題論理と述語論理の入門書なのだが、「もっと進んで勉強していくひとのために、その第一段階の基礎を教える入門書(p.iii)」ではなく「その学問の根本的なところ、その本質を、つかみとり、提示する(p.iv)」ことを目指す。
著者はまた「論理学という学問が、私たちが日常用いていることばに潜む論理を理論化し、体系化していく、その作業の実際の手触りを伝えよう(p.245)」としたとも言う。たしかに、頭ごなしに公理が登場したり、定理が証明されたりするのではなく、「日常」から丁寧に議論が組み立てられていく。しかもとてもユーモラスな文章を通じて。
笑いながら読み進め、なおかつ「なるほど論理学者というのは、こういう風に(厳密に)物事を考えていくのか」と感嘆することしきりである。
・推測ではなくて推論=演繹(前提を認めたら必ず結論も認めなければならないような導出)(ちなみに、前提が正しいことも加えて導出すると、論証)を日常的姿勢で!
・「ではない」「そして」「または」「ならば」「すべて」「存在する」の五つで演繹的推論の全体を統一的に見通すことができる!とな。
・「ではない」否定とは、そこに関心のある人だけの行為。それを無くすのが排中律=明日お金を拾うか拾わないかのどちらかだ、というのではなく、どちらか、に決定すること=実在論的立場。一つの立場を引き受けることが、論理的思考の第一歩。
→先に進めるためには、ここが重要ーーーーー(1)曖昧な概念を考えない、2)「神の視点を想定するような立場からものごとを捉えていくということ」
・二重否定入れ=A→(Aではない)ではない
・二重否定取り=(Aではない)ではない→A:ここは排中律を拒否すると受け入れられない。
・矛盾律の結婚話の例69p
・直接論証ではなくて間接論証としての背理法=否定したい仮説の矛盾の論証/導出
・否定、連言、選言、条件法で成立する世界が、命題(何事かを主張した文)論理
・命題=命題の型(具体的なものではなく)=公理(出発点となる論理法則)→公理から導出された論理法則を定理と呼ぶ、こうしたアプローチが形式的アプローチ。
・対して、具体的な命題の内容を考えるのが内容的アプローチ=意味論。意味論の世界では、真偽。
・公理系は「健全(過剰でなく)」で「完全(不足なく)」
・形式と内容が緊密な関係にある公理系が、自然演繹
・ゲーデルの不完全性の証明とは、自然数論についての不完全性。数学の公理系はどうしたって不完全でしかない。でも自然演繹の世界は完全。
・「すべて」と「存在する」を用いて成り立つ推論を体系化する、というのが述語論理。
・必然性様相と可能性様相 -
哲学者・野矢茂樹が、「論理学ってけっきょく何なんだ。何をやっているんだ」ということを著した、論理学の入門書である。
本書の最大の特徴は、「はじめに」で語られる通り、現代の論理学の主流は「記号論理学」と言われ、入門書も横書きで記号が頻繁に出てくるものが大多数である中で、本書は縦書きで、普通は記号を使って書かれる部分も文章で説明されているところである。
著者はまず、「論理的」であるということを、「ことば」は意味の連関性を持っており、その連関性によってつながる意味のネットワークを踏み外すことなく正確に行き来することである、と述べる。
そして、「A」と「Aではない」(否定)、「AかつB」(連言)、「AまたはB」(選言)、「AならばB」(条件法)の4つと、「何からその主張が導けるのか」(導入則)、「その主張から何が導けるのか」(除去則)の2つ、計6つのシンプルな公理から成り立つ演繹的推論を扱う体系(公理系)の作り方を、日常の具体的な事例を示しながら分かりやすく説明している。
上記の公理系を論理的に理解することが、普段の仕事・議論をロジカルに進める上で有益であることは言うまでもないが、そのような完全な体系を作ることの面白さも味わうことができる一冊である。
(2009年12月了)