競争と公平感: 市場経済の本当のメリット (中公新書 2045)

著者 :
  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (245ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784121020451

作品紹介・あらすじ

日本は資本主義の国のなかで、なぜか例外的に市場競争に対する拒否反応が強い。私たちは市場競争のメリットをはたして十分に理解しているだろうか。また、競争にはどうしても結果がつきまとうが、そもそも私たちはどういう時に公平だと感じるのだろうか。本書は、男女の格差、不況、貧困、高齢化、派遣社員の待遇など、身近な事例から、市場経済の本質の理解を促し、より豊かで公平な社会をつくるためのヒントをさぐる。

感想・レビュー・書評

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  • 経済学者が経済現象を一般向けに紹介した新書。タイトルが競争と公平感とあったので、もう少し行動経済的なミクロな内容かと思ったが、ミクロなものも含みつつ、マクロな話もかなり扱ったものだった。新自由主義的な潮流に対して、研究的な知見をあてがって補強していくような内容。タイトルの内容は一部なので、知りたい情報が知れずちょっと残念だった。新自由主義の根拠となる経済現象や研究的知見はわかったものの、それに当てはまる現象を前提の吟味なく載せているような印象を持ち、読んでの納得感はあまりなかった。

    ——以下、Twitter(リンクは3/16以降)

    読了本。大竹文雄「競争と公平感 市場経済の本当のメリット」 https://amzn.to/4bMbUqp 心理学的に経済を眺める行動経済的な知見を交えつつ、新自由主義的な経済・金融の考え方を一般向けに解説した新書。行動経済な内容をもう少し期待したものの、思ったほど多くはなかった #hrp #book #2024b

  • 資本主義国のなかで、例外的に市場競争に対して拒否感の強い日本。男女の格差、不況、貧困、高齢化、派遣社員の待遇など、身近な事例から、市場経済の本質の理解を促し、より豊かで公平な社会をつくるためのヒントをさぐる。【「TRC MARC」の商品解説】

    関西外大図書館OPACのURLはこちら↓
    https://opac1.kansaigaidai.ac.jp/iwjs0015opc/BB40124781

  • 大竹文雄(1961年~)氏は、京大経済学部卒、阪大大学院経済学研究科博士課程退学、阪大社会経済研究所助教授・教授・所長、阪大副学長、日本経済学会会長等を経て、阪大大学院経済学研究科教授。専門は、労働経済学、行動経済学。日本学士院賞等を受賞。
    私は新書を含むノンフィクションを好んで読み、興味のある新刊はその時点で入手するようにしているが、今般、過去に評判になった新書で未読のものを、新・古書店でまとめて入手して読んでおり、本書はその中の一冊である。(本書は2011年の新書大賞第4位)
    章立て及び内容は以下である。
    Ⅰ.競争嫌いの日本人 ●なぜ日本人は競争が嫌いなのか? ●競争の好き嫌いは何で決まるのか? ●競争のメリットは何だろうか?
    Ⅱ.公平だと感じるのはどんな時ですか? ●競争は格差を生む。その格差の感じ方に差が出るのはなぜか? ●価値観や選好は、経済のパフォーマンスにどう影響するか?
    Ⅲ.働きやすさを考える ●競争と公平感は、私たちの働く環境にどのような影響を与えているか? ●働きやすい環境を作るポイントは何か?
    著者の基本的なスタンスは、「市場による自由競争によって効率性を高め、貧困問題はセーフティネットによる所得再分配で解決することが望ましい」という、(2010年当時の)多くの経済学者と同じであり、本書は、リーマンショック後に日本社会に広がった「行き過ぎた規制緩和と自由競争への反発」に対して、市場競争のメリットを改めて強調し(もちろん、市場競争にもデメリットがあり、それを小さくする規制や再分配策の必要性は認めているが、具体的な言及はあまりない)、市場競争重視の価値観を再醸成することを主な狙いに書かれたように見える。
    一方、私の昨今の主たる関心事は、行き過ぎた資本主義(=新自由主義)を元凶とする世界的な諸問題(経済格差の拡大に留まらず、環境問題や気候問題等も含む)に対して、我々は今後どのように対処していくべきなのかという点にあり、本書についても、「競争と公平感」という題名から、そうした問題意識に対する何らかの示唆が得られると思って読み進めたのだが、残念ながら期待は外れた。尤も、ピケティの『21世紀の資本』(2013年)、水野和夫の『資本主義の終焉と歴史の危機』(2014年)、斎藤幸平の『人新世の「資本論」』(2020年)等がベストセラーになり、資本主義の問題や限界に対する様々な議論が高まったのは、本書出版の後と思われる(2010年当時の状況はあまり記憶には無いが)ので、本書に多くを求めるのは酷なのかも知れない。
    また、本書には、「競争」と「公平感」に関わる、生物学・脳科学的な(行動経済学につながるような)研究結果の紹介も多数あるのだが、今となっては目新しい内容は殆ど見られない。
    経済書はその性格上、賞味期限があるものが多いが、本書も多分に漏れず、残念ながら今読むには物足りなさを感じざるを得ない。
    (2022年10月了)

  • 日本人がなぜ資本主義なのに市場競争に拒否反応が強いのか。
    たしかに市場経済の授業ってまともに受けたことなかったなあと。
    慣れのない中で「負ける苦痛」もそうですが「勝ち続ける苦痛」も耐え続けるのがしんどいんやろなあと思います。

    本書を読むと「生産性の低い人」は辛いことになるんやろなあと思います。
    例えば残業規制が緩かった時は長時間労働で帳尻合わせてたのが時間内で結果を出さざるを得ないようになると仕事が追いつかなくなるんですよね。
    仕事の持ち帰り規制があって長時間労働規制があって有給取得義務化につながるとますます「生産性」が仕事できる人になれるか否かに直結するようになるんやろなあと思います。
    大竹先生の本もかなり読み進めることができました。

  • 題名でひかれて読んだだけとなった。ありきたりの事の文章で全然響かない。所詮そんなことなのかも。

  • 中央公論新社 新書大賞2011 4位

  • 近著の行動経済学につながっていく。どの章でも具体的なデータを基に様々な知見が得られ、内容が濃い。社会学的ともアプローチが近いので、経済学と社会学の橋渡し的な学びも得られるのでは。

  • 参考文献は非常に多く、時間をかけて研究されたのだろう。データも多く使われ、説得力はある内容。
    だが、思い切った自論を展開するのではなく、今後の改善案的なものは平凡な気がした。
    団塊の世代のボリュームが選挙結果にも影響しているとのことだが、たしかに多数決の論理ではそうだろう。
    日本人には自分のことだけでなく、日本全体の今後のことを考えている人が多いことを願いたい。

  • 競争の大事さわ経済的に語る本
    日本人に競争嫌いが多い理由を説明
    いろんなことに触れてはいるが、なんか散発的な印象を受ける

  • 人間とは合理的な意識を持つことがいかに難しいかがよくわかる本である。
    本書は言う。「日本は市場経済への期待も国の役割への期待も最低というとても変わった国である」。とても驚いた。目から鱗である。
    経済学者は普遍的な定理を主張するのものと思っていたが、本書では国民文化の違いから考察が始まる。なるほどこれが「応用経済学」と言うものか。
    本書を読むと、縦割りの狭い領域を超える知見こそが新たな発見をもたらしてくれることを感じさせてくれる。まさに知性には限界が無いと思えた。

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著者プロフィール

大阪大学感染症総合教育研究拠点特任教授。

「2023年 『検証・コロナ期日本の働き方』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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