ものすごくうるさくて、ありえないほど近い

  • NHK出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (488ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784140056035

感想・レビュー・書評

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  • 2012.02.10読了。

    9.11で父親を失った男の子オスカーの話。オスカーの心理描写がすごくリアルだと思った。
    そんな中でももがき、どういう結果になろうとも前に進んで行く姿に心を打たれた。

    最後は泣いた。

    おばあちゃんと、若い頃に出て行ってしまったおじいちゃんの話も。

    オスカー目線、おばあちゃん目線、おじいちゃんのトーマス目線で書かれているのではじめはこんがらがって読みづらかったけど、終盤いろんなことが明らかになりつながっていき、最後は温かい気持ちになれた。

    映画化されたのも観てみたいな。

  •  2001年9月11日、ニューヨーク貿易センタービルの爆破事件によって、最愛の父を亡くした9歳の少年オスカー。ママが家でロンという友だちと楽しそうに話しているのがたまらなくイヤで、カウンセラーの先生の言うことも気に食わない。パパの葬式に、中が空っぽの棺桶を埋めたことも納得がいってない。時間があれば、科学者に弟子入りを乞う手紙を書いたり、頭の中であれこれ「発明」したり。
     そんなオスカーには、ともに暮らす母にも、いつも唯一の理解者で隣人の祖母にも言えない秘密があった。それは、亡くなる直前父が自宅にかけてきた留守番電話の記録。
     ある日、オスカーはパパのクローゼットで、青い花瓶を見つける。中には、封筒があり、太目で短い鍵が入っていた。この鍵でパパのことがわかるかもしれない。そう考えたオスカーは封筒に書かれた“black”という文字を手掛かりに、ニューヨークじゅうのブラックさんを捜そうと外に飛び出す。

      物語は9.11のテロ事件で父親を亡くした少年オスカーが、父の遺した鍵を手掛かりに、さまざまな人と出会い、「再生」していくというもの。が、この本には、ドイツのドレスデン空爆で家族を失った祖母や、父が生まれる以前、祖母のもとを去った祖父の手紙が織り込まれていたり、オスカーの集めた写真や校正の赤ペンなど様々な趣向が凝らされていたりして、単に本を読んで想像するのと違う構成で、咀嚼するのに時間がかかりました。
     何気ない日常に突然飛び込んでくる悲劇、遺されたものはどう向き合い、どう生きていけばよいのか。
     現実に折り合うことでしか前に進めないけど、それは果てしない道のり。突飛に見えるオスカーの行動の一つ一つが胸に迫り、苦しいくらいでした。

  • ★10個くらいつけたい。震災から少しずつ前に進んでいく今、この本に出会えたことは大きな収穫。私たちは生きているし、生きていかなければならないのだから。オスカーの悲しみとユーモア、彼を取り巻く人々全てにいとおしさを感じる。

  • 翻訳ものが好きな人には、ぜひともお薦めしたい作品

    電子書籍が隆盛となりつつある時代だが、この作品はその中にあって
    ペーパーとしての本に視覚的な試みを最大限といってよいほど盛り込んで
    いて、余韻を残す。

    字を重ねて、重ねて、真っ黒になった頁
    言葉を失い真っ白な頁
    パラパラ動画のように何十頁にもわたる写真

    これらが、文章と相まって、登場人物たちの心理を描くのに
    とても効果的だ。

    こんな本はこれまで見たことがない。
    体験(?)の価値あり。

    作品は、9.11で父親を亡くした少年の物語が中心だが
    この他に、謎の男性と、女性の視点の
    3人の物語が並行して進んでいくので、しばらくは理解しにくい部分が
    あり、そこは我慢。
    その点で☆一つ減に(^_^;)

    しかし、主人公の少年の心のうちを描いている部分は魅力たっぷり。
    あとがきにあったかと思うが、主人公の少年は、「ライ麦畑でつかまえて」のホールデン少年を思い起こさせる部分がある。

    そして、本作は映画化されて、2012年公開予定
    しかもその監督は
    「リトルダンサー」 「めぐりあう時間たち」 「愛を読む人(原作「朗読者」)」
    の名匠スティーヴン・ダルドリー監督で
    主演がトム・ハンクスとあれば、期待大!!
    公開がとても楽しみだ。

    追記
    試写会でいち早く映画を見ることができた。
    原作の、錯綜している部分をカットして、愛する者を喪った悲しみと
    魂が再生を果たす部分そ、巧く掬いあげて、とても美しい物語となっていた。
    原作のラストの、あの・・・が、映画ではちょっと形を変えながら、巧く織り込んでいたのにも、驚き。

    先に、この映画を見てから、本を読むというのもありかも。

  • 9.11で父を失った少年の物語、そして第二次大戦中のドレスデンで心に傷を負った祖父母の物語が交錯し、やがて収束する。

    凝ったタイポグラフィや写真を多用し、視覚に訴える手法は、著者が前作でも駆使したものらしい。そうした実験的な面に、一見、目を奪われそうになるが、物語はむしろシンプルである。
    哀悼と希望とどうしても埋められない穴を抱えた、「喪失」を描いている。

    過去の物語と現在の物語が両輪のように進んでいくが、個人的には現在の方が魅力的に思える。
    祖父母の物語は、祖父が言葉を失う経緯や、祖父母の間のルールなど、どこか寓話的に感じられ、輪郭がややぼやけている。出口のない迷路のようだ。祖母の自伝の話は尻すぼみに思えて少々残念だった。祖父が出て行った後に祖母が動物を放すシーンなど、非常に印象的な箇所もあるのだが、単発的でやや散漫な感じがする。
    現在の主人公であるオスカーは、著名人に手紙を書いたり、風変わりな発明をしたり、タンバリンを叩きながら歩いたり、変わっているが利発で、変な言い方だが、学校では苦労しそうなタイプだ(実際、作品中でも級友たちのなかで浮いている)。この少年が語る、亡き父が残した鍵が開けるべきものを探してニューヨークのあちこちを訪ね歩く旅は、繊細でいとおしい、心を揺さぶられる物語となっている。

    随所に差し挟まれるエピソードが秀逸で、作者は緻密に物語を編み上げるというよりは、感性の人なのかなという感じを受けた。小説家というよりはアーティスト、なのかもしれない。

    本って不思議だ。開かなければこんなに寡黙なのに、ページをめくるとこんなにも雄弁で。そんな感慨を改めて抱いた。


    *オスカーという名前やタンバリンを叩いているという点では、『ブリキの太鼓』を思い出した(あとがきにも触れられていた)。

    *ドレスデンの爆撃については勉強になった。世の中、知らないことばかり・・・。

    *文中でオスカーがしばしば言う「なんぞ?」というセリフ。原文は、”What the?”であるようなのだが、こういう言葉って語感を掴むのが難しい。

    *映画化されていて、日本での公開は来年。トム・ハンクス(作中、エンパイアステートビルのシーンで名前が出てくる)が父、サンドラ・ブロックが母。そして少年オスカー役はクイズ番組「ジョパディ」のキッズウィークで優勝した異色の新人という(先日、IBMのコンピュータがジョパディに挑戦するノンフィクションを読んだばかりなので、ちょっと親しみがわく)。
    本国でもまだ公開されていないようなのに、早くもアカデミー賞の呼び声ってニュースをネットで見たが、いくら何でも早過ぎないのだろうか・・・? 賞の選考ってそういうものなのかな・・・?

  • 何もかもが美しいほど単純で、信じられないほど複雑だ。

    誰もがそれぞれのさよならを探していた。

    読んでいるあいだ、『めぐりあう時間たち』を思いだしていた。『めぐりあう時間たち』の映画を作った監督がこの本の映画も作ったらしい。2012年公開。観たい。

    『ブリキの太鼓』ギュンター・グラス
    『ライ麦畑でつかまえて』サリンジャー
    『紙葉の家』ダニエレブスキー
    ブルーノ・シュルツ
    『デザインのひきだし12』 グラフィック社
    『サッカーが世界を解明する』 フランクリン・フォア
    ジョシュア・フォア 記憶術
    『ヒストリー・オブ・ラヴ』 ニコール・クラウス

  • 辛かった。こんなに時間がかかった読書は久しぶり。

  • 文字通り「ものすごくうるさく」て「ありえないほど」訳がわからなくて、1ページあたりの情報量が多い本書。今年の7月に神保町の書店、豊崎由美さんの棚でこの本を見つけた時は、その夥しい付箋や書込みの量に驚いたけれど読んでいる間は全然気にならず、むしろ赤くて細い線の文字や鉤括弧、棒線に励まされるような不思議な気持ちになった。もし、同名映画を観ていなかったら、そして実際に豊崎由美さんが所有していた本じゃなかったら途中でギブアップしていたかもしれないが、結末を知っているからこそ今のタイミングで読めて良かった。「圧倒的な力で襲いかかってくる歴史の悲劇に愛するものを奪われ、それでも立ち直ろうとする家族の姿」
    訳者あとがきにある文章が忘れられない。
    #豊崎由美 #PASSAGE

  • 正直、一回読んだだけだと良さを捉えきれない。まだ一回しか読んでないので、もう一回読んでみようと思う。
    父親を失った子供が探し物の冒険を繰り広げるのが中心で、そこにおばあちゃんやおじいちゃんの手紙が絡んでくる。ただ、この手紙が物語を理解する上での曲者で、代名詞だらけで途中でこんがらがってくる。おまえ、あの人、おじいちゃん、おばあちゃん、お母さん、お父さんなどなど。そういう構成なんだと知った上で読んでいれば、混乱も防げただろうけど。
    伏線回収に爽快感を感じる人には合わないかも。現実通り、見失ったものは見失ったまま。当たり前だけど。
    途中までパニクりながら読んでいたが、それでも最後は分かる。良い。

  • 私には難しかったです。
    会話のやり取りが噛み合ってないようにも感じ、状況がよく掴めず。
    行間、フォント、文字重ね、写真など、視覚で訴えるアート的な要素のある小説でした。
    訳者の後書を読んでやっと全体を理解出来ました。

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著者プロフィール

1977年、ワシントンDC生まれ。プリンストン大学在学中に作家のジョイス・キャロル・オーツに才能を認められ、2002年に『エブリシング・イズ・イルミネイテッド』(ソニー・マガジンズ。電子版はNHK出版)で作家デビュー。全米ベストセラーとなった同書はガーディアン新人賞、全米ユダヤ図書賞など多くの賞を受賞、世界30カ国で刊行された。2005年に発表した長篇2作目『ものすごくうるさくて、ありえないほど近い』(NHK出版)も各方面で絶賛され、ロサンゼルス・タイムズ、シカゴ・トリビューンなど各紙でベスト・ブック・オブ・ザ・イヤーに選出。同書はハリウッドで映画化され、アカデミー賞にノミネートされた。2009年に食をテーマとしたノンフィクション『イーティング・アニマル』(東洋書林)を発表し、アメリカの食肉・水産業界に一石を投じる。本書『ヒア・アイ・アム』は11年ぶりに上梓された小説で長篇3作目にあたり、前2作と異なり自伝的要素を踏まえ、多視点で登場人物たちの心情をリアルに描くという新機軸の構成が各メディアに絶賛された。ニューヨーク、ブルックリン在住。

「2019年 『ヒア・アイ・アム』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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