解錠師〔ハヤカワ・ミステリ1854〕 (ハヤカワ・ミステリ 1854)
- 早川書房 (2011年12月8日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (427ページ)
- / ISBN・EAN: 9784150018542
感想・レビュー・書評
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主人公が喋らないからこそ、人の感情が間近に感じられたり、スリリングなシーンの緊迫感が増されたりしていました。
解錠を芸術的に描いている分、主人公がより芸術家気質な人に見えてくるのですが、
それが犯罪に繋がり、どんどん大変な事態に巻き込まれてしまうのがつらいところです。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
技術と癖のあるピュアなシーフの物語。ストーリーのどこかで、無口設定をロマンティックに解錠するのだろうと思って読んでいたら、見事に裏切られたのでとても嬉しい。
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こんな解錠師もいていいのだと思う。陳腐だけど唯一自分の意志で開けた鍵は恋人の心。鍵を開けることへの興味から、知人の思いつき、大人の思惑によって鍵を開ける手段としてのみの存在となり、唯一のつながりは恋人のアメリア。
しゃべることをやめた主人公と恋人をつなげるのは、芸術域まで高められた絵物語。たった1年の間に起こった主人公の大きな人生の変化と、そして守るものができた行動は、彼の人生の新しい扉を開ける。今はまだ、刑務所の中で鍵の中の生活だけれども、その鍵は時間が書けば物理的ではなく、いつか解錠される。
主人公の閉まっていた無防備な心の扉を勝手に開いていく友人や大人は、その解錠の腕前だけを認め、本当に開けたのは恋人のアメリアだけだった。一度開けられた鍵は番号を変えない限り、開いたままだ。鍵だけではどうしようもない。それがまたこの物語の幼い愛の永遠性をロックする。ハードボイルドでもなく、ハーレクインでもない、純情を貫く若き青年の必死な恋の物語。 -
言葉を発することのできない解錠師の少年の物語。
ミステリではなく甘酸っぱいボーイ・ミーツ・ガールものだと思う。青臭い正義感とか満載だし。
時世を行き来する構成は、この作品の中で触れられている鍵の開け方を模しているかのようで。
こういうの、好きだわ。
鍵の開け方に関する独特の表現が面白かった。
これは中高生に読んで欲しいなあ。 -
非常に読みやすかった。ミステリというよりもハードボイルドな青春小説って感じ。読みどころはアメリアとマイクルの心の通い合いなんだろうけど個人的にはリート伯父にグッときた。
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青春小説。
マイクががぜんカッコイイ!寡黙な男、というか話をすることができない少年なんだけど、心の声は響いてくる。偶数章、奇数章で時系列を分けストーリーを進める様はテクニシャンと言う他はない。
犯罪モノをこんなにキュートに描いてくれてしかもボーイミーツガール。
キュンキュンしまくり。 -
マイクルの過去が明らかになるシーンは良かったんだけど、冷静に想像すると漫画家とアシスタントみたいでおかしいw叔父さんはいい人。
空手チョップに引っ掛かったけど他に言い様がないっちゃあない...原文は何だったんだろう。 -
ミステリーというよりは、青春小説なんじゃないかな。ミステリーを期待して読むと、ちょっと肩透かしをくらいます。でも一気に読ませる力はある。
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てっきりベテランの解錠師の犯罪物語かと思っていたので、全然違って驚いた。解錠していくように少しずつ物語が動き、過去と現在が合わさっていくところが面白った。
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『解錠師』、原題では“The Lock Artist”。
このタイトルの響きは物語の始まる前と後では異なって聞こえ、読み終えた今ではそれはそう、あたかも錠が解放される瞬間のようにすべてが正しい位置にぴたりと収まっているような印象すら与える。
英語で「鍵師」は“locksmith”、「金庫破り」は“safecracker”と呼ぶそうだが、マイクルが単なる“smith(金属細工師)”や、ましてや“cracker(破壊者)”ではなく、本物の“artist(芸術家)”であるということには読者全員の賛成がもらえると思う。
幼い頃とある事件を生き延びた「奇跡の少年」がやがて「解錠師」となり、運命の坂を転げ落ちる様・・・に眉間にしわ寄せながら、手に汗握りながら、はやる気持ちを抑えながら夢中になって読みました。
まだ読み終えてない人に言いたいことがあります。
大丈夫、最後に扉は開かれる。