戦闘妖精・雪風〈改〉 (ハヤカワ文庫 JA カ 3-27)

著者 :
  • 早川書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (413ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784150306922

感想・レビュー・書評

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  • いやいや、面白かった!
    途中まで、「そこまでかー?」なんて思ってたけど、ジャムが人間じゃなく、地球産の機械を相手にしてるんじゃないか、そして地球産の機械もそれをしってるんじゃないか?ってあたりから、たまらなくなってくる。
    日本SFなめてました。
    すいません!
    そして、日本SFみんな読もうぜ!

  • さて。ここに一冊の本がある。タイトルは『戦闘妖精・雪風<改>』。一切のヒントがない状態で、いったいどのような内容を想像するだろう。

    まず「戦闘」と「妖精」という言葉が目を引く。「美しい親切な女性」という妖精の説明からは、戦闘という言葉は連想できない。かといって妖精と戦闘が全く相容れないものだとは言い切れない。『ロマンシング・サガ3』に登場する妖精というキャラクターは、主人公達の仲間に加わり戦闘に参加する。とすると、戦闘妖精というのは戦える妖精のことなのだろうか。雪風というのがその妖精の名前だとすると、水だか風だかの属性を持った(吹雪系の魔法が使える)妖精というイメージが湧いてくる。

    さらに『戦闘妖精・雪風』の表紙を飾るのがグレーの戦闘機だという情報が与えられたとしよう。モノトーンな戦闘機。妖精の影も形もありはしない。ということはこの本は戦闘機の話であって、妖精は関係ないのだろうか。妖精の話なのか戦闘機の話なのか、判断に困るところである。

    最初の数ページを読んでようやく、戦闘妖精雪風というのが戦術用の人工頭脳を積んだ高性能戦闘機のことらしいと分かって来た。しかしこの人工頭脳、無駄なおしゃべりは一切しない。というか任務の遂行に関わること以外の反応をしない。戦闘マシーンに搭載された人工知能と言うと、『フルメタルパニック』のアルや、『E.G.コンバット』のGARP、『スカーレット・ウィザード』のダイアナ・イレブンスなどを思い浮かべてしまい、雪風の異質さに少し戸惑いを覚えた。(ラノベばっかじゃん。)雪風に比べるとHAL9000がとてつもなくフレンドリーに見えてくる。


    指揮官のブッカー少佐が行進をする人形を作ったとき、彼が雪風の人工頭脳のインターフェイスを作るものだと信じて疑わなかった。こう、ホログラムかなんかで妖精が出て来てパイロットをナビゲートする感じで。戦闘妖精雪風がアニメ化されているって話は聞いていたから、無意識に萌要素を求めてしまっていたのかもしれない。この予想は最後二重の意味で裏切られることになった。

    萌えなんていう甘っちょろいものはない。ファンタジーのような夢も救いもない。親切な美女もいない。

    ひたすら殺伐とした、正体不明の敵との戦争。人間の理解を超えた無機質な機械頭脳。積み重なる犠牲。戦いの意味を見失いそうになる人類。

    ハードだ。ハードすぎる。先ほどラノベを引き合いに出してしまったのが申し訳なくなるほどハード。「戦闘妖精」っていうタイトルはミスリーディングではなかろうか。といいつつ、それに代わるぴったりのタイトルは思いつかないわけだが。むしろ読後、妖精という言葉の認識がガラリと変わってしまうので「戦闘妖精」にすとんと落ち着く。


    妖精という軟派(?)な語感に惑わされず、騙されたと思って読んでみて欲しい。

  • 再読。年齢が近づくと零の社会不適合者っぷりがよく分かる。同時に零の生きづらさ、雪風への執着についても、以前より理解できるような気がした。無機質な戦闘シーンが好き。

  • 約30年前に読んでいたら、衝撃度が増していただろう。戦闘機による戦争の話だと思って読んでいたら、全く違った展開になった。今でこそマトリックスやターミネーターなどで一つの物語ジャンルとさえ言えるようになった、機械が人間を超えてしまう話。

    ただ、戦闘機乗りが人間というよりも感情が薄く機械化していたり、アンドロイドの方が人間味を帯びていたり、その中でいつの間にか戦闘機雪風は人の能力を追い越している。対比の書き方が見事。そして、渇いているのに、うっすらと抒情的なのがとてもいい。

  • 初め人間と機械という対立かと思ったがそう綺麗にわけられるほど両者は違わない。雪風という人間には手の届かない、まさしく戦闘妖精がどこに向かうのか、人間と機械の違いとは、そう考えると強いメッセージ性のある作品だった。

    個人的にはブッカー少佐が人間くさく作者の気持ちを代弁してるのではないかと思った。

    戦闘描写は細かく、リアリティはあるので取材をよくしたことは分かるが専門用語が多く、素人には食いつきにくかった。
    日本の近代SFの代表かと思ったが個人的にはそれほど残るものではなかった。

  • 初めて読んだ時は戦闘機のドッグファイトに胸踊らせたものだが、今読んでみるとまた違った面白さがある。機械と人間の関係を描く<雪風>は25年近く経った今でも色褪せない。

  • 小説のあらすじはamazon辺りに任せるとして。SF愛好家などのオススメを見ると高い確率で上がっている本作品。その人気ゆえOVAも製作されたほど。個人的には国産SFのバイブルがこれで、海外SFは「星を継ぐもの」なのかなと勝手に勘違いしている。(星を継ぐものは読んでないけど)
    勝手な勘違いはさておき愛好家にオススメされ、レビューでも高評価を受けているだけあって非常に面白い。全体的に暗めのトーンが横たわっている感じが心地よい緊張感を生み出しており、細かい設定やトンデモはあまり気にさせずに物語りを十分に楽しめることができる。ただ著者は戦闘機マニアなのか、戦闘機についてはかなり細かい描写が繰り替えされ若干食傷に感じた。後半はその辺りの描写は飛ばして読んでしまっていた。
    ネタバレせずに本品の場面や言葉などを賛美するのは非常に難しいのだけど、ブッカー少佐が勲章の件でコンピューターと対話するシーンや、雫が病院に運び込まれるシーンなどはかなり緊張感を持って読むことができる。かなり昔の作品なので取り扱うテーマは特に目新しさは無いといえるが、評判通りにSF好きなら誰もが楽しめる内容であろう。むしろこのような「枯れたテーマ」を扱っているからこそ、SFマニアだけでなくライトな小説好きにも受け入れやすく、評価に繋がっているのかもしれない。
    何れにしてもエースコンバットシリーズが好きな人であれば迷うことなく読むべきである。メビウス1は人間であっても、マシン自身であってもロマンにあふれているだろう。

  • 私にSFの面白さを教えてくれた本です。時間の経つのも忘れて読みふけり、読み終わった途端、続編の「グッドラック」を買いに本屋へ走りました。
    人間は機械にとって代わられるのか。人間と機械知性体の違いは。言葉の力とは。そしてなにより、「私」と「あなた」の関係は何で作られるのか。読み返す度に異なる印象を受ける(読み手の環境により読後の感想が変わるのだと思いますが)本です。空中戦描写も大変素晴らしいです。是非まだ読んだことのない方に読んで頂きたいです。

  • 続編「グッドラック」と比べるならばこちらを挙げる。いわゆる架空の戦記にはなろうが、事象を羅列しがちなそれらとは一線を画し、神林の真骨頂とも言える「言葉」を駆使して登場人物の心情、互いの関係性を深く掘り下げていく。すでに神林作品を読んでいるならばその世界観には違和感なく入り込めるだろうし、未読であればこの作品は入門書として決して悪くない。若干ハードに過ぎる面はあるが。戦闘機動の緻密な描写は圧巻であり、脳内で再現しその齟齬のなさを確認する作業も面白い。
    基本的には短編集である。架空の空軍に属す深井零、雪風、彼らを中心に物語は展開していく。零はパイロットであり、雪風はその乗機、戦闘機、だ。あくまでも兵器であり機械である物言わぬ雪風、常に機械のようと形容される冷徹冷酷なパイロットである零、共通するのは「機械」だ。零はしかし機械ではないが、零が信ずるに足るものは雪風しかない。雪風を自らの一部と信じた初期、物語が進むにつれ、その零の思いが実は空転していることを知る。雪風の認識する世界、自己と他。そして零と雪風、彼らの共通の敵であるはずの異星体、ジャム。
    雪風とジャムによって呈される人間という存在。単にそれだけではなく、深い。そこは自ら読み、目の当たりにするべきである。

    とここまでは珍しく真面目に書いたのですが正直超カッケーのですよ。ええ。神林の書く機械知性体はとにかく魅力的であります。雪風ことスーパーシルフの外見自体がすでに好みド真ん中ですし。クリップドデルタ翼に双発エンジン大好き。
    水と油を取り持つ界面活性剤という描写は苦労性ブッカー少佐の心労を端的に表した名言だと思います。石鹸。

  • 人間性とは何か、意志とは何か、思考とは何か。ジャムの作った機会人間の存在と、ファティマの存在がかぶるのは私だけではあるまい。

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著者プロフィール

作家

「2023年 『ベスト・エッセイ2023』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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