ゼロ年代SF傑作選 (ハヤカワ文庫 JA エ 2-1)

  • 早川書房
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感想 : 79
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  • Amazon.co.jp ・本 (380ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784150309862

感想・レビュー・書評

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  • 『次世代型作家のリアル・フィクション』と初めて銘打って刊行された冲方丁『マルドゥック・スクランブル』の外伝をはじめ、『SFマガジン』の「リアル・フィクション」特集号に掲載された若手作家たちの作品を中心に収めたSF短編集。

    長編の外伝的な作品もいくつかありますが、本編を未読でも十分に楽しめます。ぼくがSFを敬遠しがちな理由の、ふだんからSFを読み慣れていないとよくわからない理論や概念もほとんど登場しなかったので(あえて言えば、海猫沢めろん『アリスの心臓』が少し…)読みやすく、どの作品もおもしろかったです。

  •  そのタイトルのとおり、リアル・フィクションと呼ばれるSF作品を集めたアンソロジー。秋山瑞人さんの短編が載っているのを偶然発見して、ものすごい勢いでレジにもっていきました。
     顔ぶれは、秋山瑞人、冲方丁、海猫沢めろん、桜坂洋、新城カズマ、西島大介、長谷敏司、元長柾木。

     秋山さんはもとから大好きすぎて、収録されている短編『おれはミサイル』を、客観的に評価できている自信はないんだけども、やっぱりものすごくツボでした。秋山さんのSFに独特の臨場感というか、壮大な設定にめまいのする感じ、いい意味で強烈なもっともらしさを感じさせる絶妙な描写が、たまらなく好きです。

     ほかで好きだなと思ったのは、冲方さんの『マルドゥック・スクランブル“104”』。ちょっと芝居がかった、フィクション的なフィクションで、そこがいいなあと思いました。皮肉まじりのユーモアが楽しく、喋る鼠の姿をした生物兵器という、コミカルで、かつ哀しい背景をもつキャラクターが、すごくいい味を出しています。

     それから長谷さんの『地には豊穣』も。「経験伝達」という新技術が開発され、Aという人物が積んだ経験を、ほぼそのままBという人間に移植することができる社会が、もう目の前にやってきている。何の経験も持たない若者が、突然、ベテランの技術者と同じスキルを身につけることができる。けれど、例えば英語圏の人間の経験記憶を、ほかの言語を話す人間にそのまま移植するのでは、言語野に齟齬がおきる。そこを解消するために、経験記憶を各国の人間の脳に適合させるための研究も進められている。けれどそこで、経済効果を優先することに重点を置いて開発したがる研究者と、効率を犠牲にしてでも、施術を受ける当人が元から持っていた文化的精神になるだけ影響を与えないことに重点を置こうとする研究者との間で、亀裂が生まれて……
     自分とは何か、集団に帰属するとはどういうことか、文化のもつ精神的支柱としての役割。そうしたテーマについて、新技術の設定に絡めて丁寧に掘り下げられた作品でした。

  • たぶん、これからのSFを引っ張っていく作家さんたちの競演本。

    最近こういう短編集増えてきて、非常に嬉しいです。
    創元SFのほう(年刊日本SF傑作選 )が
    バラエティに富んでる感はあるけど、こちらも楽しめました。

  • 痛。最後の総括。現実で手に入れられないものを仮想で手に入れているとか言われている部分が痛い。
    冲方丁の短編狙いで買ったけど、一番好みは海老沢めろんのエロゲーシナリオ風味もの。そういう分かりやすいの好きよ。

  • こういう系統も自分は意外といけるとわかった。リアルフィクションとかエロゲーとか言われてもなんかよくわからないけど。ミサイルの話面白かった。これは子ども向けの絵本にしても成り立つような気がする。この顔ぶれの中だと、マルドゥック〜が一番古典的に見える不思議。

  • 沖方丁と新城カズマに惹かれて買ってみた。
    それぞれ、「マルドゥック・スクランブル」、「サマー・タイム・トラベラー」の短編が掲載されています。その他の作家さんでは、読んでた人もいるし初めて読んだ人もいます。
    ここ10年で活躍しているSF作家さんの作品がそろっているので、0年代SFの傾向と対策にはうってつけかと思います。

  • マルドゥックスクランブルの外伝が載ってると聞いて。

    ボイルドによるウフコック「濫用」前の09、の話。
    といってもヴェロシティと重なる感じではなく、スクランブル準拠の性格設定なので「火力で制圧したがる好奇心旺盛なボイルド」と、「非殺傷兵器でそれをフォローする声の渋そうなウフコック」の相棒時代が描かれている。
    合法的に街中でドンパチするために暗殺者側と09側どちらも詭弁を使って法の網を潜り、盾にする戦闘をやっててこれが面白い。たとえば相手が立てこもったホテルを階ごと買い取って私有地で軍事演習をすると市に申請。巻添え食ったら私有地に入ってきた方が悪いと言い張る。といった感じの詭弁合戦。面白い。

    あと秋山瑞人のデビュー作が載ってたことに買ってから気づいた。

    おそらく人類が滅びた後、未だ戦い続けるAI戦闘機の話。
    その頃軌道上の衛星では電波で会話する猫達が・・ってリンクはしない。

  • いまどきの若手SF作家さんの短編集と言うので読んでみました。
    面白い!と思ったのが1作品、普通に面白いと思ったのが2作品、ふうん、と思ったのが3作品、私はこういうのは合わないと思ったのが2作品。
    相対評価で言うとあまりあわなかったということかな?

    とりあえずマルデゥックスクランブルは読んだことがあったのでその外伝は面白く読みました。俺はミサイルとエキストララウンドも面白かったです。是非エキストラのほうは本編も読んでみようかと思いました。

    それにしても私がSFを読み始めた頃のSF的未来は大体宇宙に飛び出す話だった気がするのですが(まあ例外もありますけれども)今回の選出を読むと仮想現実世界の話が多いなあ~と思いました。今の人間の未来観が変わってきたんでしょうね。多分。
    よい悪いではなく、ジャンルとして常に新しい方向を開拓していかなくてはいけないってのは大変だろうな、と思いました。私はラノベには手を出していないのですが(なぜかと言うとたくさんありすぎてどれが面白いのかわからないそして巻がたくさん出ているので全部集めることを考えるとなかなか手がでない)色々な作家さんがそこから出ているんだなあ~と言うことを知りました。
    ま、機会があればそのうち読んでみようかとも思います。

  • 名作の外伝から、しびれる掌編、幻想的な話から、上手いと思わせる作品まで、読んで満足な一冊でした。

  • 冬の時代を過ごしたことのあるSFものとしてはこんな人たちが育っていたのねって言う感じ。ハード・ソフト・ソフトウェア。いい感じです。読み続けたいな、いろいろと。
    色眼鏡っぽく見ていた作家さんもちょっと違うと言うことがわかってよかった。誰かは秘密。

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