- Amazon.co.jp ・本 (365ページ)
- / ISBN・EAN: 9784151200038
感想・レビュー・書評
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ダウントンアビーの風景と重なる。旅の目的がが期待通りにいかなくても、失望を露わにしないすました語り口調に、執事らしさを感じた。
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古き良き英国が描かれている。老執事の回想で、長く仕えてきた主人への忠誠と自分の仕事への誇り。
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戦前の旧き良きイギリスを描いた作品、と一言で言えばそうではある。ある意味、清廉潔白で美しすぎる作品。それがイギリス紳士なるものなのかもしれないけど、何というか、もう少し人間らしい側面からも登場人物たちを描いてほしかった、と思うのは浅い読み方だろうか。読み手によっては、違う読み方もあるかもしれない。そういう点では、幅広いファンがいそうな一作。
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ノーベル文学賞の本というものがどういうものなのか気になり購入。
過去に映画化されており、そちらも高評価。
観てませんが…
イギリス、ダーリントンホールでダーリントン卿に仕えた一流の執事が本作の一貫した語り手。
時代は移り変わり、館の新しい主人となったファラディの提案により、執事スティーブンスは出発する。
旅をしながらスティーブンスはダーリントンホールでの自分の人生を回想する。
執事としての仕事への姿勢、哲学。
主人への忠誠心。
歴史を動かさんとするダーリントンホールでの会合。
そこに集まる要人たちや主人との出来事。
会合の最中に起きる父親の死に向き合うスティーブンス。
向き合っていた彼は果たして息子としてのスティーブンスなのか、執事としてのスティーブンスなのか。
同じ館で共に主人に仕えたミスケントンとのやりとりが「日の名残り」としてスティーブンスの脳裏を巡っていく。
仕えた主人に対する彼の忠誠は、旅先で主人への世界の認識に触れる時試される。
そして、小旅行終わりに、館を後にしたミスケントンと再び逢う時、日の名残りは彼の心を動揺させる。
人としての、そして「地位にふさわしい品格」、持つべき矜持、主人への忠誠心。
スティーブンスの持つそんな特質が胸を打つ。
小説を締めくくる最後のシーン。
海辺の町の桟橋での見知らぬ男との会話。
小旅行によって過去の出来事を反芻し、選ばなかった自分の過去の決定に区切りをつけて、スティーブンスは思いを新たにし、今使えるべき主人へと思考は前進してゆく。
一人の紳士の凜とした姿、歳をとり、過去への思いと戦いながらも、前進していくそんな美しくも哀愁の漂う物語。
言葉にすると陳腐だけれど、人としての品格、ひいては、「地位にふさわしい品格」。そんな考え方も大きなテーマだと感じた。
ようするに、面白かった。 -
執事が語る。
英国の良き時代、執事の品格。
どこのなく懐かしいような、静かな作品。 -
土屋さん訳、すっと頭に入ってくる。すごいなあ。夕方が1番いい。人生においても余生が1番いい。そんな風に思えるのがよいなあと思う。
remains =名残り。 残りが名残となるだけで奥深さが全然違うから言葉は楽しい。 -
淡々と叙述されていく。どこかに盛り上がりがあるわけでも、思わぬ展開があるわけでもない。もしも小説の価値が、エンタテインメント性で決まるとすれば、この作品の価値は低いだろう。しかし良い。すっと沁み込んでくる。良質な鉱泉水を口にしたような読後感。
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すごくわかります!
ところで、機会があればジュンパ・ラヒリの停電の夜に、をぜひに。カズオイシグロと並んで大好きですすごくわかります!
ところで、機会があればジュンパ・ラヒリの停電の夜に、をぜひに。カズオイシグロと並んで大好きです2018/05/14
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イシグロ作品初読み。
美しい文章で綴られる老執事スティーブンスの回想。読後は温かい余韻が心の中に残った。
英国の名家の戦前戦後を支えてきたスティーブンスが、かつての同僚と再会すべくひとり旅に出る。
そして道中、のどかな田園風景の中をドライブしながら、これまでの自分の人生や執事としての仕事についての思い出に浸る。。。
実直を絵に描いたようなスティーブンス、自分の感情も押し殺して主人に仕え、ただひたすら執事としての品格について考え追い求める半生だったが、真の意味の品格って何なのか?それは本当に正しい事だったのか?品格にこだわり過ぎたがために気づくことができなかったミス・ケントンの本当の気持ち。最後の数ページ、すべてに気付き衝撃を受けるスティーブンの心の描写が見事だった。
旅先で出会った元同業の男性の言葉が深い。
-人生、楽しまなくっちゃ。夕方が一日でいちばんいい時間なんだ。
ジョークが上手くなったミスター・スティーブンスとまたいつか再会したいなぁ。 -
意識高い系執事による品格を追い求めるストーリーです。
かつて英国で社交界の中心的存在だったダーリントン・ホールの執事スティーブンスは、現在の雇用主である米国人実業家ファラディの許しを得て、北イングランドへのドライブ休暇をとる。その目的はかつての同僚ミス・グランドを訪ね、人手不足に悩むダーリントンホールに戻ってくる気はないか誘う、というもの。旅の途中、これまでの執事人生を誇りとともに振り返るスティーブンスですが、読者は彼の静かな口調の中に、そこはかとない違和感を覚えます。
スティーブンス自らの語りで物語が進みます。
自分の心情を吐露しているはずなのに、どこまで本気なのかわからない。
「偉大な執事は、紳士がスーツを着るように執事職を身にまといます」というスティーブンスにとって、スーツを脱ぎ捨てるのは、完全に一人でいる時だけ。
語り口調ということは他人を前にしているということであり、その間はスティーブンスは、自らを犠牲にしてでも主人に仕える執事だからです。
その自己犠牲を尊ぶ彼の執事感がもっとも現れるのが、父の死に際に立ち会わなかったことを思い出す行。
同じ屋敷の中の、ほんのすぐそこの部屋で父が死の床に伏したにも関わらず、設宴での接客を続けたときを振り返るスティーブンスの言葉は、静かな執事言葉にも関わらず、壮絶な「職業意識」が現れています。
「私にとりまして、あの夜はきわめて厳しい試練でした。しかし、あの夜のどの一時点をとりましても、私はみずからの「地位にふさわしい品格」を保ちつづけたと、これは自信をもって申し上げられます。」
〜
「そして、あの夜の私をうらやまぬ執事がどこにおりましょうか」
揺るぎのない断定口調なだけに、スティーブンスの葛藤が伝わってきます。
旅の終盤、ある人物との出会いをきっかけに、その口調に変化が見られる。
執事のスーツに綻びが生じたとも受け取れる変化は、スティーブンスにとって幸福だったのか、救いになったのでしょうか。
「あたし執事さんだから」的な自己犠牲を賛美するでも批判するでもなく、人間としての「品格」に迫る傑作です。
みんなのうたの歌詞に炎上する人もそうじゃない人も、ぜひ読んでほしい一冊です。 -
読み終わってまた深い満足感に包まれた。
執事という、日本の(私の)日常生活からではほぼ想像のできない仕事についている男の独白で物語は進んでいくが、その内容が非常に興味深い。
イギリスの歴史、地理、執事という仕事について、奥深く語られる。すべて興味深かった。
イギリスへ行ったことがないので、想像力をかき立てられた。
また他の作品も読んでみたい。 -
「結局、時計をあともどりさせることはできませんものね。架空のことをいつまでも考えつづけるわけにはいきません。」p343
スティーブンスは現在の主人から暇を出され、以前いたミス・ケントン(現在 ミセス・ベン)に会いに行きます。その道すがらダーリントン・ホールで開催された重要な外交会議や「理想の執事」に近づくべく仕事をしていた過去に思いをはせます。スティーブンスの胸に去来するものは一体なんでしょうか。
ブッカー賞授賞作。主人に忠実であること=品格ある執事。と思い仕事を遂行していたスティーブンス。しかし、自分が思い付かない事が起こるのが人生の面白みであり哀しみです。その変化にスティーブンスは戸惑い、旅の最中に出会う人々と話すことで「自分の価値観」や「自分が当たり前」がそうではない事に気づくのではないでしょうか。ミス・ケントンと会った後にくる哀しみを和らげてくれたのは、たまたま会った初老の男性のひと言です。哀しくても後悔しても過去は変わりません。「これから何をしていくのか。」変えられるのは自分だけだと思いました。 -
<内容紹介より>
品格ある執事の道を追求し続けてきたスティーブンスは、短い旅に出た。美しい田園風景の道すがら様々な思い出がよぎる。長年仕えたダーリントン卿への敬慕、執事の鑑だった亡父、女中頭への淡い想い、二つの大戦の間に邸内で催された重要な外交会議の数々ー過ぎ去りし思い出は、輝きを増して胸のなかで生き続ける。失われつつある伝統的な英国を描いて世界中で大きな感動を呼んだ英国最高の文学賞、ブッカー賞受賞作。
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土屋政雄の訳によるところでありましょうか、文章が非常に美しい言葉で綴られていましたことを、述べておかないわけにはまいりますまい。
みたいな文体で、「品格」を自身のアイデンティティとしていた執事のスティーブンスが、過去の思い出を語っています。
自分の感情や考え等を明らかにすること無く、「忠誠心」をもってダーリントン卿に仕えるスティーブンスの姿勢は、まさに「執事の鑑」と思わせるものでした。
「古き良き」時代であるのか、「過去の遺物」であるのか、評価は別れるかもしれませんが、個人的にはプロに徹する、時として冷徹にも見えるスティーブンスの在り方に魅力を感じました。 -
素晴らしいの一言。
ノーベル文学賞発表の前日、カズオ・イシグロさんが選ばれたらいいな〜と何と無く思った翌日ニュースを見てびっくり‼️
土田正雄さんの翻訳が素晴らしいのでページを開くごとに場面場面の風景や登場人物の動向が目に浮かび上がるようだった。 -
イギリス、貴族のお屋敷を切り盛りする責任者 “執事” 。
そうお嬢様の面倒を見てるだけじゃないのだった。
スティーブンスは、理想の執事像を体現する事が目標だったのだろうか。時は流れ主人は貴族からアメリカの富豪に変わり仕え方に戸惑う彼。与えられた休暇旅行にこみ上げるものは何だろう。最盛期だった自分、衰え始めた今、微かな恋心?
空の色が変わる夕暮れ、そこにある日の名残り、暮れても希望は先の楽しみは何かある。