充たされざる者 (ハヤカワepi文庫 イ 1-5)

  • 早川書房
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  • / ISBN・EAN: 9784151200410

感想・レビュー・書評

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  • 2013/04/24 購入
    2013/05/10 読了

  • 「私を離さないで」は良かったが、本作はいまいち。
    文庫で900ページを超える、冗長で、まるで悪夢を見ているような作品。
    このシュールな作品を、どうとらえるかは、ひとそれぞれだが、個人的には時間とお金の無駄。

  • カフカ的不条理世界が展開される大長編。イシグロ作品ではこれが一番好きだな。長いけどねw

  • 最高。イシグロの作品の中で、一番気にいっている。カフカ的だけど、カフカはこんな長編を最後まできっちりと仕上げたりはしないだろう。

  • <ある東欧の町にやってきた世界的ピアニスト、ライダー。
     「木曜の夕べ」で演奏することが決まっている彼の元にさまざまな相談が持ちかけられる・・・。>

    今作でカズオイシグロの長編制覇!!
    900ページ以上の大長編にもかかわらず、なぜか上下巻に分かれておらず文庫本で一冊。
    分厚い本がすきなのですが、正直文庫本でこれは重くて仕方ない・・・
    ちゃんと単行本では上下巻に分かれているのに何故なの?ハヤカワ書房さん。。

    さて感想。

    背表紙の内容紹介を読んだ限り予想していたのは
    「わたしを離さないで」や「わたしたちが孤児だったころ」のような
    “どうすることもできない運命の受容”みたいな結末かと思いましたが全然違いました。

    とにかく不条理な世界の連続。一つ先の扉をくぐればまた新しい不条理な世界。
    そしてその扉は時間と空間を飛び越えることを可能にする。
    読んでいくうちに靄のかかった不思議な世界に迷い込み、
    主人公ライダーとともに、読者もどこからが本当にあったことで、どこまでが本当はなかったことなのか、
    この町の迷路にまよいこみます。

    とにかく全ての人間が言い訳ばかりで少しずつ、何かが欠けている=充たされざる者。
    そしてそれは主人公であるライダーも同様である。

    三谷幸喜曰く
    「フィクションの中で、その場にいないにもかかわらず、一人称で自分が見ていないことの内容を話すことは作法に反する」と述べていたけど、この本の場合、それがさらに靄のかかった世界観を出すのに力を貸しているんだろうな・・・

    しかしいかんせん長い・・・。
    たぶんこの本からカズオイシグロに入ったら、他の作品読まないだろうな 苦笑

  • これは長引いた。
    文庫で900ページ超と厚いし、内容はなんとも奇妙な展開が
    延々とくりかえされ、ついていくのは困難。
    作者自ら言っているが、これがかなり実験的な構造なのだ。
    小説というもののあり方を考えさせられた。

  • これはなんというか、ライダーの悪夢を読まされている感じです。
    読みやすい文体ではあるけれど、「ダロウェイ夫人」やマキューアンの「土曜日」を思い出させる実験的な小説。

  • 正直、イシグロのファン以外は読まなくて良いかも。主人公のライダーが周りの人間に翻弄される、夢とも現実ともつかない不思議な小説。これは読者を選びます。イシグロファンの僕は好きですけど、オススメはしません。

  •  世界的ピアニスト、ライダーはコンサートのためにヨーロッパのとある町にやってきた。
     町の住人は、それぞれに問題をかかえ、その解決をライダーに求める。

     ごついです。
     1000P近くあります。ま、これを上下巻とかに分けなかったハヤカワ文庫は、グットジョブだと思いますよ。

     ライダーは、ホテルのボーダーや支配人に始まって、とにかくありとあらゆる人から相談を持ちかけられたり、依頼をされたりするんだけど、どれも彼を尊敬しているといいながら、とにかく利己的なのだ。多分、本人も気づいていない欺瞞であったり、偽善なんだろう。
     そして、そういうのを延々と読まされるわけだ。

     ライダーじゃないけど、いい加減にしてくれといいたくなるのである。
     
     このどうしもようない不条理な感じが、カフカっぽいといわれてるらしいが、カフカの主人公には確固たる自我があるのに対して、ライダーには自我がない。
     その自我の変容は、まるでコンピューターグラフィックで人の顔が微妙に変っていく様子をみている感覚に近い。
     確かに、他人は自分を映す鏡ではあるけど、本来そこにあるべきゆるぎなさが、ない。

     ピアニストでコンサートのためにやってきたというのに、ライダーがピアノを弾くシーンはとても少ない。
     そのことが、彼のゆらぎの要因なのだろう。
     
     で、読み終わって「タイトル通りだな」と思った次第である。
     充たされない者は、なにがどうあっても、何を手にしても、結局は充たされることはないのだ。その充たされてない所以は、結局自身のせいであると気づかない限り、悪循環は続く。

     …そうか、そういう悪循環の話だったのかと、思う。

  • ついに読み終わった。
    文庫本で935ページ、厚さ3.5センチ。
    その量はともかく、登場人物は緻密でありながら、時間感覚だけが
    奇妙に歪んで話が進行、主人公がどんどん薄らいでいくような
    不思議な感覚・・・。
    「カフカ的」とよく評されている。たしかに出来事の不条理だけは
    たしかにそうかもしれないけれど、自分はほとんどカフカ的とは
    感じなかった。現実の世界なんて、むしろ「これぐらい歪んでいる
    んじゃないか?」そうではないと思い込みたいだけで・・・

    カズオイシグロの最高傑作は、今のところこれではないか?


    2017.10.5追記
    ノーベル文学賞!おめでとうございます!

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著者プロフィール

カズオ・イシグロ
1954年11月8日、長崎県長崎市生まれ。5歳のときに父の仕事の関係で日本を離れて帰化、現在は日系イギリス人としてロンドンに住む(日本語は聴き取ることはある程度可能だが、ほとんど話すことができない)。
ケント大学卒業後、イースト・アングリア大学大学院創作学科に進学。批評家・作家のマルカム・ブラッドリの指導を受ける。
1982年のデビュー作『遠い山なみの光』で王立文学協会賞を、1986年『浮世の画家』でウィットブレッド賞、1989年『日の名残り』でブッカー賞を受賞し、これが代表作に挙げられる。映画化もされたもう一つの代表作、2005年『わたしを離さないで』は、Time誌において文学史上のオールタイムベスト100に選ばれ、日本では「キノベス!」1位を受賞。2015年発行の『忘れられた巨人』が最新作。
2017年、ノーベル文学賞を受賞。受賞理由は、「偉大な感情の力をもつ諸小説作において、世界と繋がっているわたしたちの感覚が幻想的なものでしかないという、その奥底を明らかにした」。

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