- Amazon.co.jp ・本 (447ページ)
- / ISBN・EAN: 9784151300059
感想・レビュー・書評
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ポアロが出てくるまでが長い……という感想があるのは頷けますが、それまでの様々な人々の会話を楽しみ、女性同士の会話は絵になるような気がしました。
あともうポアロが遅めに登場には慣れました(笑)
事件が起きてからは真相が知りたくてウズウズ。
正に列車のように時折停まってはまた進むというポアロの捜査がまた作品にあっています。
ポアロが列車についてラストの方で喩えますが、その喩えも美しく感じました。
賛否両論あるようですが、このシリーズは全てそうだろうと思います。
その分、今まで色んな人に愛されてきたシリーズだと思います。
次のポアロの活躍も楽しみです♡詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
ブルートレインという密室の中で行われた殺人事件に偶然乗り合わせていた名探偵ポアロが得意の推理を活かして、論理的に事件を解決していきます。
登場人物が複雑でしたが、非常に読みやすく、予想外の犯人でオーソドックスなミステリーです。さすがアガサ・クリスティという感じで初めて推理小説を読む方にもオススメです。 -
列車内の強盗殺人を捜査するポアロ。名推理によって意外な犯人を見つけ出す。相変わらず分かりませんでした。アガサ・クリスティーはプロットの巧さもあるけど、推論の前提を覆す展開が魅力のひとつ。被害者が別人だったり、死んだはずの人が実は・・みたいな。
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ポアロシリーズ5冊目。
1928年の作品で、有名な失踪事件ののち最初の夫と離婚したころに書かれたもの。そのせいかクリスティー自身はこの作品を気に入っていないようですが、普通におもしろいです。大富豪の娘ルースが夫の浮気に悩んで離婚を考えていたりするのがまた。
登場人物が限られているので今回はめずらしく犯人が当たりました。でも謎解き以上にミス・グレーをめぐる三角関係の行方がおもしろかった。
日本人は黒髪黒目がほとんどなので小説でも髪や目の色に関する描写があまりないですが、海外文学だと登場人物の紹介に目の色はよくでてきますね。キャサリン・グレーの瞳にみんなが夢中になる。
「きみは彼女の目に気がついたかな」
「男なら」と、ナイトンは言った。「彼女の目に気づかないはずがありません」
今回はポアロの紳士ぶりと洒脱な会話も光りました。宝石商とのお互い相手に敬意をしめしながら手の内をさぐりあうような会話とか、その娘に対する優しい言葉とか。
タイトルが「ブルー・トレイン」じゃなくて「青列車」なのも良い。
ロンドンとニースの距離感がわからなかったので調べてみましたが、ロンドンからドーバーまでは2時間ほど。ドーバーからカレーまでフェリーで90分。カレーからパリまで2、3時間。パリからニースまでは6時間。いずれも現在の所要時間で小説の中では軽食と夕食をブルー・トレインの食堂車でとり、朝にニースに到着しています。
今では海底トンネルがあるのでロンドンからパリまではTGVで2時間。東京大阪ぐらいの感じでしょうか。ポアロもちょっと調査にみたいな感じでパリに行ったりしてますよね。
ちなみにミス・グレーの住むセント・メアリ・ミード村はミス・マープルシリーズの舞台。
以下、引用(長いよ)。
「ルース、離婚という言葉を初めて聞いたような言い方をするじゃないか。おまえの友達は毎日のようにしているっていうのに」
「でもある意味では行動の自由を制限されると、精神的な自由は広がります。どんな時でも考えるのは自由ですから。いつも精神的に自由だと感じていました。すてきなことですわ」
「そうね。彼がそんなことをするとは思わないわ。どっちにつけばパンにバターを塗ってもらえるか、よくよく心得ているもの」
男は彼の本性を見抜くが、女には見抜けない。
「ムッシュー・ポアロ、わたしは金持ちです。金持ちはどんなものであろうと人であろうと金で買えると思い込んでいると世間は言いますが、それは違います。わたしは自分の専門分野では大物です。ある分野の大物なら、他の分野の大物にお力添えをお願いできるのではありませんか」
「女性は彼に簡単にまいっちゃうの」
「どうしてかしら」
「ありふれた理由でよーとてもハンサムで悪(ワル)だから。みんな、彼に夢中になるのよ」
「あなたも?」
「ときどきね」と、レノックスは答えた。「それからすてきな助任司祭と結婚して、田舎に引っ込んで植物を温室で育てて暮らしたいと思うこともあるわね」
「アイルランドの助任司祭が一番いいんじゃないかしら。そうなると探すのは大変だけど」
「あれはベストに油染みがついているよ」と、ポアロ。「火曜日にリッツで昼を食べた時に、舌平目のジャネット風の一片があそこに着地した」
「もう染みはございません」ジョージはとがめるような口調で言った。「取り除きました」
「あなたのことは分かっているわ、デリーク。わたしを見てーほら、ミレーユよ、ミレーユが話しているのよ。あなたはミレーユなしでは生きていけない、分かってるくせに。わたしはこれまであなたを愛してきたけど、これからは今までの百倍も愛してあげるわ。あなたの人生をバラ色にしてあげるーそう、バラ色に。ミレーユに代わる女性はどこにもいないわよ」
「きみは彼女の目に気がついたかな」
「男なら」と、ナイトンは言った。「彼女の目に気づかないはずがありません」
「探偵小説をお読みになるとおっしゃいましたね、ミス・グレー。完全なアリバイのある人物が常に疑われているのをご存知のはずですよ」
テニスコートに着くと、ポアロが出迎えた。その日はぽかぽか陽気だったので、ポアロは白麻のスーツを着て、衿のボタン穴に白椿の花を挿していた。
「ですが、ムッシュー、あなたの属する民族は物事を忘れないと言っても間違いではないのではありませんか」
「ギリシャ人ですか」パポポラスは皮肉っぽい微笑を浮かべて、言った。
「わたしが言ったのはギリシャ人という意味ではありません」
沈黙が流れた。やがて老人は誇らしげに背筋をぴんと伸ばした。
「おっしゃるとおりです、ムッシュー・ポアロ」と、彼は静かに言った。「わたしはユダヤ人です。そして確かにわれわれの民族は忘れません」
ポアロはメイドにいつものように丁重に挨拶した。それはメイドの階級の人間には例外なく効果があった。
「年寄りがおせっかいなことを言うとお思いでしたら、ムッシュー、お許しください。あなたにイギリスの諺を一つお聞かせしたい。こういうのですよ。〝恋を始めるなら、古いのを片付けてから〟」
「あなたは彼女と別れたでしょう。しかし彼女はあなたと別れたんでしょうか」
「泥棒を愛することは、マドモアゼル、できるでしょうが、人殺しはいけません」
ミレーユのような性格には、〝待つ〟という言葉自体が呪詛であることを、ポアロはよく知っていた。
「人間というのは愚かなものですね、マドモアゼル。食べて、飲んで、いい空気を吸う。実に楽しいじゃありませんか、マドモアゼル。単にお金がないーあるいは心が痛むというだけで、すべてをあきらめるなんて、まったく愚かです。愛(ラムル)のために何人死んだことか」
「わたしの名前はエルキュール・ポアロだ」
「はい、ムッシュー?」
「きみはこの名前を知らないのか」
「一度も聞いたことがございません」と、イポリート。
「悪いけど、きみの教養の程度が知れるね。世界の偉人に数えられる人間の名前だよ」
「鏡は真実を映しますが、人はそれぞれ違った場所に立って鏡をのぞいています」
「あれは、あのろくでもないブルー・トレインよ」と、レノックスは言った。「汽車って、ムッシュー・ポアロ、無情じゃありませんか。人が殺され、死んでも、汽車は相も変わらず走り続けています。馬鹿なことを言っていますけれど、わたしの言いたいことはお分かりでしょう」
「ええ、ええ、分かります。人生は汽車ですよ、マドモアゼル。走り続けるんです。それはいいことですよ」
「汽車をお信じなさい、マドモアゼル。汽車を走らせているのは神(ル・ポン・デュ)ですからね」
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前置きで挫折しそうになったけど、事件が起こってからはいつも通りさくさく読んじゃう。
ヘイスティングス不在の代わりに、キャサリン・グレーがポアロの話し相手。読者と同じ目線と思いきや、ポアロとの意味深な会話にかえって混乱させられたり。
今回も完敗、敗因はまさしく「そうあればいいと思ったからでしょうね」。 -
走行中の豪華列車“ブルー・トレイン”内で起きた陰惨な強盗殺人。警察は被害者の別居中の夫を逮捕した。必死に弁明する夫だが、妻の客室に入るところを目撃されているのだ。だが、偶然同じ列車に乗り合わせたことから、事件の調査を依頼されたポアロが示した犯人は意外な人物だった!新訳でおくる初期の意欲作。
引退したポアロが偶然乗り合わせた電車内の殺人事件で謎解きします。オリエント急行と違って閉じ込められていないからこそのトリックでしたね。犯人が身近な人というよりは後から急に出てきたので少し面喰いました。結局"伯爵"がクソ人間だったってことだけど、あまり今までの所業などが描かれずぴんとこないところもあります。ミス・グレーが鋭い女性であり、恋に落ちそうになりながらも真実を見つけるところはすごいなあと簡単しました。誰かの聞き役をつとめられるってすごいことだし、彼女は報われて幸せな人生を送ってほしい。 -
再読。
登場人物は意外と少ない。しかし犯人は意外や意外のノーマークの人物。読み終わってまだ謎が全て頭の中で解決しなかったが、最終章を二回読んで納得した。