魔術の殺人 (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)

  • 早川書房
3.25
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本棚登録 : 549
感想 : 65
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  • Amazon.co.jp ・本 (380ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784151300394

作品紹介・あらすじ

旧友の依頼で、マープルは変わり者の男と結婚したキャリイという女性の邸を訪れた。そこは非行少年ばかりを集めた少年院となっていて、異様な雰囲気が漂っていた。キャリイの夫が妄想癖の少年に命を狙われる事件が起きたのも、そんななかでだった。しかもそれと同時刻に別室では不可解な殺人事件が発生していた。

感想・レビュー・書評

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  • 今回はなかなか話に入り込めず読了まで時間かかった。不穏な感じがするという旧友の依頼で、マープルが更生施設の併設されたお屋敷に滞在中殺人事件が起こる。事件が起こるまでが説明的でもどかしい。マープルらしさが少なかったかな。

  • 過去の作品の中でもアンフェア。動機、殺人トリック、犯人、タイトル、色々と納得感が薄い。もしかしたらややこしい登場人物名や翻訳がそうさせているのか?読んでいて分かりにくかった。妹・キャリイ夫人の姉(ルース)から不穏なことが起きそうだと相談を受けたマープル。マープルはキャリイ家に滞在する。そこで不可解なイザコザと同時に別室で起きた殺人事件。殺人事件は関係者がホール内にいる中でどうやって別室で殺人ができたのか?動機何か?トリックどうしたのか?その真相はアンフェアと思ってしまう。うーん、今回は楽しめなかった。。②

  • 旧友の依頼で、マープルは寄宿学校時代の友人・キャリイの家を訪ねた。その邸宅には非行少年を集めた少年院があり、夫・ルイスは彼らを救う慈善事業にのめり込んでいた。そんなある時、妄想癖のある少年・エドガーに夫の命が狙われる事件が発生し──。
    ミス・マープルシリーズ、長編の五作目にあたる作品(どこから読んでも大丈夫)。

    「あの家の雰囲気が普通ではないの。証拠はないけどあたしの勘は間違いないわ。あなたの眼で確かめてきてほしいの」
    という旧友でありキャリイの姉・ルースの無茶ぶりによって、ミス・マープルはセロコールド邸に潜り込むことになった!その家は実に奇妙ッ!少年院が併設されていて、その事業に没頭する圧倒的善人・ルイス。元精神病患者で妄想癖があるが、ルイスに雇われて秘書を務めるエドガー。さらに、キャリイの元夫たちとの子どもや、養女の子と夫、気難しい付き添い人など、癖が強い住人が勢ぞろい。何も起きない方がおかしいやろ!という、ただならぬ雰囲気が漂っている。

    そんな中で事件の号砲が!ホールで衆人環視の中、扉を挟んだ書斎にて錯乱したエドガーがルイスに向けて発砲するという事件が発生する!ルイスは撃たれずに済み、事なきを得たと思いきや、別の部屋で手紙をタイプしていた男が射殺されていた。な、何を言ってるのかわからねーと思うが(略)状態!しかも、キャリイの身にも災いが降りかかっている。混沌とした舞台でミス・マープルが見るものは魔術による幻覚か、それとも真実か?!

    ネタがわかってしまうと、なんでこんなことに気づかなかったんだろうと思うトリックが合っている作品。元夫と子どもが多すぎでわかりづらいのと、ミステリや人間ドラマとしては他作品と比べると薄味に感じるかも。ただ、タイトル回収からの結末のビターさは余韻深い。善と悪が紙一重であるということ。それは華やかな舞台の裏に回れば、それを隠す舞台裏があるという人生の二面性を内包しているのかもしれない。

    個人的に、ミス・マープルを評した刑事のこの一言が好き。

    「年はとっているが、なかなか鋭いばあさんですね──」

    なかなかどころじゃない鋭さなんだよなあ(笑)

  • ミス・マープルシリーズ。
    妹を心配する旧友から頼まれて、ミス・マープルはキャリイの邸宅を訪れる。
    キャリイは少年更生に力を注ぐルイスと再婚し、屋敷の一部は未成年犯罪者の教育施設となっていた。
    さらに、屋敷では、キャリイの養女ピパの美しい一人娘、ジーナとその夫、実娘で器量の良くないミスドレッド、ジーナに恋するキャリイの2番目の夫の息子、スティーブンが同居するという複雑な環境にあった。
    キャリイが命をねらわれているという噂を耳にし、不穏な空気を感じるミス・マープル。そしてある夜、事件は起こる。

    登場人物は多いけれど、『ナイルに死す』ほど伏線回収がこなれておらず、取っ散らかってしまった印象。ただ、何かが起こりそうな不穏な空気で物語を引っ張りながら、あくまでも現実的に解決するクリスティーの健全な精神が私には心地よい。

    陰の主役であるキャリイのキャラクターも好きだ。ちょっとぶっ飛んだところはあるけれど、考え方は極めて現実的で安定感がある。ジーナに嫉妬するミルドレッドと最後にわだかまりが解けて本当に良かった。
    ちなみに、先日BS11でこの『魔術の殺人』が放映されたが、キャリイは人の好い夫人として描かれていた。もう少しあくの強さを出したほうがキャリイらしかったのでは、と少し残念。

  • 文章自体がトリックと言ってもいいのかな。真相から目を逸らさせるような記述が多く、その結果、謎が成り立っている。

    クリスティに関しては、ポワロもの長編を全て読んでマープルものも5作目となると、もはや謎解きよりもドラマとして見てしまっているので、殺人事件が起こらなかったとしてもさして不思議ではないかもしれないが、本作もミステリである以上、事件は起こる。が、事件が起こるまでが長い…そしてその後も動きが少ない。

    しかしなぁ…何とも釈然としない。ジーナはいつもの素敵な女性枠ですね。何だか救われます。

  • ミス・マープルもの。

    旧友・ルースから、彼女の妹・キャリイの家の様子を見てきてほしいと頼まれた、ミス・マープル。訪れたその邸は、敷地内に民間の少年院のような施設があり、本宅の方もキャリイの親族やら居候やら、複雑な関係の老若男女が共に暮らしている状況です。
    そんな中、妄想癖のある青年が、キャリイの夫・ルイスに襲いかかるというハプニングと同時に別の人物が実際に殺されてしまうという事件が勃発します。さらに、キャリイの命も狙われているかも?と、いう疑惑まで出てきて・・。
    まるで魔術のトリックのような事件の真相に、ミス・マープルの人間観察力を絡めた推理が冴えわたります。
    ミステリとしての構成もさることながら、人間ドラマとしても興味深い展開となっているのが、流石クリスティーですね。

  • クリスティの長編ミステリー。
    マープルシリーズ。古典作品の読みにくさがこれでもかと詰まった作品だ。(笑)
    女主人、現在の夫、1番目の夫の継子と実子。そして養子の娘、2番目の夫の子供二人、ここに付き添い人や使用人、医者等中々難しい環境設定のため序盤は苦しんだが、後半迄に何とか整理して読み進める事が出来た。さらに、舞台設定が非行少年たちを集めた少年院であり、すべてが作用しながら非常に面倒臭い、異様な世界観を漂わせている(人間関係の設定の難しさも作風に合わせている様に思っている。)
     マープルの旧友であるルースは自身の妹であるキャリイをとても心配しているが原因がわからない。マープルは昔から空気感をよむ鋭さがある為、キャリイの住む邸に赴き(マープルに生活苦を演じる様にすればキャリイはきっと招待してくれるという、何とも屈辱的な依頼だが)不穏な空気の原因を探る様に依頼される。
     (現在の少年院とは少しイメージが違うが、生まれや生い立ちなどにより罪を犯したり精神的に不安な少年達を改心させ、優秀な仕事や役割を与える住み込みの学校の様なものだ。)
    そんな環境下においてエドガーという一人のおかしな青年が、キャリイの夫であるルイスに陰謀論等をふっかけて部屋に立て篭もり銃を発射する事件が起こる。結局、実際に弾は発射されるが空騒ぎに終わり、事なきを得るが、実は同じ邸の別の部屋にて銃殺された死体が見つかる。
     マープルシリーズ特有の特殊な殺害現場、方法であり今回は安楽椅子探偵ではなくマープルが自ら乗り込んでいる点が面白い。マープルシリーズでは警察も協力的であり、現代ではありえないが皆んなで考えようの精神があり、捜査で発見された謎は次々と共有される。
     トリックも手の込んだアイデアで、正にそれが一番しっくりくる方法だ。夫ルイスはキャリイを愛している事に変わりはないし、実はキャリイが狙われている場合には犯人の割り出しは彼女の遺産などから検討しなければならない。今回、様々な「魔術」がクリスティによってかけられており、①キャリイが実は狙われているという偽装②キャリイに毒が盛られているのが嘘だという偽装、③ホール内での立て篭もりが実は二人の共犯でありトリックの肝だという偽装。④動機がキャリイに関わるものではなくルイスの横領によるものだという事実。
     つまり幾重にも罠が張り巡らされており、読者を惑わし偽装へ誘う。少なからず世界観もある作品の為引き込まれていく。
     残念な事に最後、犯人の結末が滑稽で勿体ない退場の仕方だ。二人が実は親子だった事や夫婦は少なからず本当に愛し合っていた事等を踏まえ、もっとスリリングな、衝撃的な結末があった様に思う。(終盤にまとめて発見される二人の死についてもおざなりな印象を受けてしまう。死体が一つじゃ足りないから・・・的な印象を持ってしまった。)
    クリスティの作品でよく言われるが、夫婦の殺人は相手を疑うはもはや王道であり、結局王道に至るのだがそういう結末だと終盤迄感じさせない描写力が今作の魅力だ。最後、批評にてマープルを魔女と評しているが、今作の彼女はどちらかと言えば友人への優しさが溢れる役回りであり、一瞬で真相を突く恐ろしさは控えめだった様な思う。

  • 視点を変えれば、世界がそれまでとは全く違って見える。精巧なだまし絵のような、ミス・マープルもの。イギリスの壮麗な大邸宅に、個性的で怪しげな登場人物たちと、クリスティーらしい道具立てが揃っています。トリックよりも、人間性を丹念に描いている作品かも(わたしはマープルものの、そういうところが好き。一見地味だけど、読みこなすと奥が深いの)。

  • ミス・マープル長編5作目。今回はマープルがある女性の屋敷を訪ねることになり、そこで事件が起きるという展開。マープルが頭から登場してくれて出番も多いのだが、ちょっと盛りあがりに欠ける気もした。人物描写は良いのだけど、犯人が分かるくだりのクライマックス感が今ひとつ。

  • プロットはよくできていると言えばよくできているが、トリックは凡庸。登場人物も類型的で「らしくない」一冊。正直なところ、私設少年院という筆者が(おそらく)あまり馴染みのない舞台を選んだがために臨場感が薄れ、物語に深みを欠いたのではないかと推測。

    これでミス・マープルが登場する長編12作のうち 6作を読んだ/読み返した計算。あと 6冊だし、まあ読むか。

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