- Amazon.co.jp ・本 (336ページ)
- / ISBN・EAN: 9784151814518
感想・レビュー・書評
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なかなか珍しい題材の本だった。
今まで読んだことない感じがする、ピエールルメートルさんはもう作者買いみたいなところをしてしまうから毎回本当に驚かされる。海外の本は結構わかりにくいけど、この人の本から入れば比較的に入りやすいんじゃないかなとまで思う。
今回の本は戦争中に生き埋めになりかけた男をその男を助けたばっかりに顔の下から半分を失った男の話。いまのことろ先の見えなさや、やっと前向きになれそうな部分にまでやってきた。下巻がとても楽しみ!詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
「ピエール・ルメートル」の長篇作品『天国でまた会おう(原題:Au revoir la-haut)』を読みました。
『死のドレスを花婿に』に続き「ピエール・ルメートル」作品です。
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膨大な犠牲者を出して、大戦は終わった。
真面目な青年「アルベール」は、戦争で職も恋人も失ってしまう。
画才に恵まれた若き「エドゥアール」は顔に大怪我を負い、家族とのつながりを断つ。
戦死者は称揚するのに、生き延びた兵士たちには冷淡な世間。
支え合いながら生きる青年たちは、やがて国家を揺るがす前代未聞の詐欺を企てる!
第一次世界大戦後のフランスを舞台に、おそるべき犯罪の顛末を鮮やかに描き上げた一気読み必至の傑作長篇。
ゴンクール賞受賞作。
〈上〉
1918年11月、休戦が近いと噂される西部戦線。
上官プラデルの悪事に気づいた「アルベール」は、戦場に生き埋めにされてしまう!
そのとき彼を助けに現われたのは、年下の青年「エドゥアール」だった。
しかし、「アルベール」を救った代償はあまりに大きかった。
何もかも失った若者たちを戦後のパリで待つものとは―?
『その女アレックス』の著者が書き上げた、サスペンスあふれる傑作長篇。
フランス最高の文学賞ゴンクール賞受賞。
〈下〉
第一次世界大戦直後のパリでのしあがる実業家「プラデル」は、戦没者追悼墓地の建設で儲けをたくわえていく。
一方、「アルベール」は生活のため身を粉にして働いていた。
そんな彼に「エドゥアール」が提案したのは、ある途方もない詐欺の計画だった。
国をゆるがす前代未聞のたくらみは、はたしてどこにたどりつくのか?
日本のミステリ・ランキング一位を独占した人気作家が放つ、スリルと興奮に満ちた群像劇。
一気読み必至の話題作。
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これまでに読んだ「ピエール・ルメートル」作品の『その女アレックス』、『死のドレスを花婿に』のような、眼には眼を、歯には歯を… 的なミステリ作品とは異なり、第一次世界大戦後のフランスを舞台に、戦争で財産や身体の一部、職、恋人等の様々なモノを喪失した若者たちを、彼らが関わった前代未聞の犯罪を絡めて描いた文芸作品、、、
どんでん返しはなく、悪役がわかりやすい勧善懲悪のエンターテイメント作品でしたね… 映画化して欲しいような、そんな作品でした。
■一九一八年十一月
■一九一九年十一月
■一九二〇年三月
■終わりに……
■訳者あとがき 平岡敦
舞台は第一次大戦終結直前の1918年11月2日… 主な登場人物は、兵士の「アルベール・マイヤール」と「エドゥアール・ペリクール」、そして二人の上官の「アンリ・ドルネー=プラデル中尉」の三人、、、
主人公的な存在の「アルベール」は元銀行の経理係で、平凡を絵に描いたような若者… 優柔不断で意気地なしで、びくつくとすぐズボンのなかにちびってしまいそうになり、おまけに閉所恐怖症の気まであり、恋人とベッドにいるときでさえ、毛布にすっぽりくるまれるとパニックを起こしかける程の小心な人物、、、
そんな「アルベール」に一生立ち直れないほどの恐怖を味あわせる徹底した悪役として登場するのが「プラデル中尉(のちに大尉に昇進)」… 自分の利益のため、自らの欲望を満たすためならば他人を犠牲にし、どんな汚い手を使うこともいとわないという、あまりにも憎々しい存在。
そして、もう一人そこにもうひとり「アルベール」の運命に深く関わっていくのが「エドゥアール」… 裕福な実業家の家庭に生まれ、画才に恵まれた天才肌の男で、反俗精神に溢れるという「アルベール」とは正反対の性格、、、
この三人が、戦場で数奇な運命により、生死を含めた、己の未来を変えてしまうような因縁の出来事に遭遇… そして、三人の因縁の物語は、戦後においても戦没者追悼墓地を巡るスキャンダルや慰霊碑詐欺という事件により微妙に交錯していく。
「アルベール」の考えに共感しつつ、いつの間にか感情移入して読み進めていました… 自らの出世のために、兵士を鼓舞するために、斥候に出した部下をドイツ兵に撃たれたように見せかけて銃殺し、それを知った「アルベール」を生き埋めにして殺そうとした「プラデル」、生き埋めになった「アルベール」を助けた際に砲弾の破片により負傷し顔の下部(下顎)を失った「エドゥアール」、、、
戦傷兵となった「エドゥアール」は、確執のあった父「マルセル・ペリクール」の元に帰ることは望まず、「アルベール」の協力を得て、戦死した兵と入れ替わり、別な人物として生きることを選択… 戦後、「アルベール」は、自分の命を救ってくれた「エドゥアール」の世話をするため共同生活を始めるものの、貧しいながらも実直な生活を送ろうとする「アルベール」と、取返しのつかない負傷を負い、世の全てに反逆するかのような放埒さを見せる「エドゥアール」との間には、微妙な心のずれが生じて行く。
一方、「プラデル」は戦後の混乱に乗じ、持ち前の野心と才覚で財産を増やし、「エドゥアール」の姉「マルセル・ペリクール」と結婚することで、更なる飛躍を目論むが、、、
戦没者追悼墓地に関する受託業務での不正行為が暴かれ、仲間からも裏切られ、徐々に追い詰められて行く… 同じ頃、「アルベール」と「エドゥアール」は、「エドゥアール」の発案による世間をあっと言わせる前代未聞の慰霊碑詐欺で大金を入手することに成功、国外への逃亡を計画するが、欺かれた被害者の一人である「エドゥアール」の父「マルセル」の命により「プラデル」は犯人を捜すことになり、再び、三人は接近することになる。
大きなサプライズはないですが、善には救いがあり、悪は罰せられるという結果だったので、納得感のあるエンディングでしたね、、、
「アルベール」は、「ポリーヌ」と幸せな生活を送っているのかな… でも、ずっとずっと、死ぬまで、逃亡する汽車に現れなかった「エドゥアール」のことは気になっていたでしょうね。
それにしても、「エドゥアール」と「マルセル」の運命的な父子関係… 特に「エドゥアール」の最期は切なかったですねぇ。
意外性は少ないないけど… 主人公の「アルベール」に感情移入して、恐怖を感じたり、悩んだり、悲しんだり、喜んだりすることができて、愉しめた作品でした。
以下、主な登場人物です。
「アルベール・マイヤール」
兵士
「エドゥアール・ペリクール」
兵士
「アンリ・ドルネー=プラデル」
アルベールとエドゥアールの上官。後に実業家、プラデル社の社長
「マルセル・ペリクール」
エドゥアールの姉
「マルセル・ペリクール」
富裕な実業家。マドレーヌとエドゥアールの父親
「セシル」
アルベールの恋人
「モリウー将軍」
軍の大物
「フェルディナン・モリウー」
プラデル社の出資者。モリウー将軍の孫
「レオン・ジャルダン=ボーリュー」
プラデル社の出資者。代議士の息子
「ラブルダン」
区長
「リュシアン・デュプレ」
プラデルの部下
「アントナプロス」
密売人。通称「プロス」
「ベルモン夫人」
アルベールとエドゥアールの大家
「ルイーズ・ベルモン」
ベルモン夫人の娘
「ウジェーヌ・ラリヴィエール」
戦死した兵士
「ルイ・エヴァール」
戦死した兵士
「ジュール・デプルモン」
架空の彫刻家
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先の展開が読めません。プラデルは許せない。それとエドゥアールの作戦はどんな展開になるの?
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1918年11月、休戦が近いと噂される西部戦線。上官プラデルの悪事に気づいたアルベールは、戦場に生き埋めにされてしまう!そのとき彼を助けに現われたのは、年下の青年エドゥアールだった。しかし、アルベールを救った代償はあまりに大きかった。何もかも失った若者たちを戦後のパリで待つものとは―?『その女アレックス』の著者が書き上げた、サスペンスあふれる傑作長篇。フランス最高の文学賞ゴンクール賞受賞。
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あの、「悲しみのイレーヌ」で有名な著者の作品。
うーん。「悲しみのイレーヌ」は、非常に衝撃的な作品だったけど、こちらはどうか。紙面ぎっしりと文字が配置されているページもあったりするので、読み進むのには、少し力がいる。また、内容的にも、すこし入り組んでいるので、そういう意味でも力がいる。
上巻では、テンポが良いとは言い難い。下巻で、どう巻き返すか。 -
魅力的なタイトルの戦争小説だと思って読んだら全然違った。物語の発端は独仏戦争の前線なのだがそこでの若者たちと上官との宿命的な事件と人間関係を引きずって舞台は戦後のパリへ移る。その上官であったプラデルは悪辣な手腕で成り上がり、片や戦争で重傷を負った兵士エドゥアールとアルベールは逼塞した貧しい暮らしを送る。そこからはじまるコン・ゲーム。物語はあれよあれよという間に流れ出し、予測不能のカタストロフへなだれ込む。エドゥアールの父への過剰な葛藤がなければ、そして致命的な負傷を押して家に帰ってさえいれば、何ごともなかったろうにと思ってしまう。しかしエドゥアールの実家ペリクール家に取り入るプラデルとはどこかで衝突する宿命になっていたのだろうし、であればこの結末はそう悪いものではないのかもしれない。が、それにしても父と子の運命の糸が劇的に交わる最終章は悲痛だ。どこかで見たような頑固な役人メルランの厳正な摘発と、身から出た錆で周りの誰彼にも見放されたプラデルの哀れな末路は痛快だが、それをエドゥアールもアルベールもついに知らずじまいなところが残念でならない。
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読者の浅はかな予想を翻弄するかのごとく展開した「その女アレックス」とは趣を変え、本書は第一次世界大戦の戦場における場面からじっくりとした語り口で惹きつける。上官の私欲による愚かな惨劇の被害者となった二人の若者が辿る運命が重い。
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129・130/10000
「天国でまた会おう」上下
ピエール・ルメートル
平岡敦 訳
早川書房
「その女アレックス」の作者、ピエール・ルメートルの作品です。単行本と同時に文庫も発売!粋ですねぇ~✨
今までの作品が、がっちりミステリーだったので、今回もそうなのかなと思ってたら、全く趣の違う作品です。
第一次世界大戦。ヨーロッパ戦線では、休戦の噂に、兵たちは戦意を失っていた。そんな中、下された突撃命令。混乱の中、上官プラデルの悪事に気づいた主人公アルベールは、事実の隠蔽のため、戦死を装った生き埋めにされてしまう!そんなアルベールを救ったのがエドゥアール。しかし、この出来事が、三人の運命を大きく変えていく…
大きな時代の流れの中で、のし上がろうとする者、自分を守ろうとする者、運命をせせら嘲う者、様々な思惑が絡み合って、どうしようもないところまで行ってしまう恐ろしさが、余すことなく描かれている。
中学生の頃、背伸びして読んだものの、細かいところは忘れちゃった「チボー家の人々」がなぜか痛烈に甦ってならなかった。
これは、すごい作品です。
ルメートル、すごい作家です。
可愛い顔したこのおじちゃまから、絶対目を離さないぞ❗(σ≧▽≦)σとここに誓いマス。