くじ (ハヤカワ・ミステリ文庫)

  • 早川書房
3.40
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感想 : 37
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  • Amazon.co.jp ・本 (432ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784151823015

感想・レビュー・書評

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  • 年末に書店で見かけて気になっていた一冊を今頃。短編22編収録。初っ端の「酔いしれて」のオチが分からなかったから不安になりつつも書き出しが秀逸な短編ばかりだからか読み進めた(られた)。続く「魔性の恋人」「おふくろの味」で後味の悪さを味わった。「大きな靴の男たち」もそうだけれど、地上波TVバラエティ番組のスカッとジャパンのスカッとしないまま終わる版みたいな。
    「もちろん」「アイルランドに来て踊れ」はその逆で割とスッキリ。「歯」の夢遊感が好き。
    表題の「くじ」は宮部みゆき氏の帯文どおり、じわじわ効いてきた。黒い!

  • 2018/11/05-11/12

  • 後味の悪い物語を集めてあるとの、帯だかPOPだかのコピーを見て購入。読み始めても最初の方は何のことだかピンと来ず… 読み進めて行くとなるほどな、と。読後にちょっと引っかかる感じが癖になります。
    あと、訳者のあとがきとしての解説が、個人的に好きです。
    ただ翻訳故か、はてなと首を傾げ得ない部分も少なくなかったので、星四つにしました。

  • 奇妙な味で有名な短編集。中でも”歯”が好きです。 全体的に人の悪意などの負の感情を描き出す作家さんですが、サスペンスというほど明確ではなく、ホラーというほどセンセーショナルではありません。言ってしまえば無自覚の気持ち悪さ。どこにでもありそうな、だけれども明確に名付けられないような醜悪さを描いている短編集だと思います。 なんとも後味が悪く、けれども癖になる作品集です。

  • シャーリイ・ジャクスンの短編集。
    収録作の中で、有名作である表題作と「チャールズ」は読んだことがあったが、それ以外は初めて。
    ジャクスンらしい、日常の中に潜む狂気や悪意を鮮やかに切り取った作品が多い。
    「魔性の恋人」の、自分の恋人を誰も知らないというという筋立ては私が昔好きだったウールリッチ作品を想起させるが、残念ながらウールリッチのような納得いく結末は用意されていない。
    その分主人公の女性の狂気が浮き彫りになるのだが、丁寧に描写される彼女の姿に感情移入してしまい、単に「狂気」の一言では片づけられない気分になる。
    また、個人的に好きだったのは「歯」。現実と幻想世界の境目が曖昧で、理解するために二度読んだ。再読時、所々の描写から、彼女は最初から「そのつもり」だったんだな、と気づいた。バスに乗る前から、ハリスに出会う前から。

    やはり表題作「くじ」が素晴らしいが、それ以外もジャクスンらしく楽しめた。
    また時間を置いて読み直したい。

  • 表題作『くじ』
    何度読んでも読後感が最悪。
    展開も結末も知ってるけど、この後味の悪さは変わらない。

    初めて読んだ中では『歯』が一番ゾッとした。

  • じわじわと心に何かが忍び寄って来る感じがクセになる。「魔性の恋人」と「歯」が印象強い。

  • ジャクスンの悪意は癖になる。
    まるで体に毒だと分かっているのに止められない
    濃厚なチョコレートのように。
    一粒一粒に違う味のガナッシュが詰まっているために
    欲張りな私はすべてをつまんで口に含んで唾液に絡めずにはいられない。
    悪魔のお菓子、怠惰と肥満とヒステリーのお菓子。

    これに詰められている短編はどれにも美味しい悪意がみっしり。
    読み終えるころには、この本に降臨している悪魔に神性さえ感じるだろう。悪魔?それはもしかしたら異教の神かもしれないとさえ思う。
    冥界を往還したディオ二ソスのような…。

  • 「くじ」は読んだことがあって衝撃を受けたので、同じような衝撃があるかと期待して読んだのだが…。
    これは、あれね、「山椒魚」。「山椒魚」に衝撃を受けて井伏鱒二の短編集を読んだら、「山椒魚」が異色作だったという。
    井伏鱒二の短編は味わいがあっていいのだけど、「山椒魚」の衝撃を求めると物足りなく感じる。特に若くして読んだ場合、その滋味に気づきにくい。
    これも、「くじ」みたいなものを期待しなければ、結構いい短編集だと思う。初めて読む人のために、「くじ」は最後に置いてあるという親切設計だし。
    若くない女が騙されていると本当はわかっているのに、恋人が自分にプロポーズしに来ると信じて待つ「魔性の恋人」、調子のいい隣人に、恋心に付け込まれて利用される「おふくろの味」、黒人に対する親切心をひけらかす(本当はレイシスト)上品ぶった母親を描く「どうぞお先に、アルフォンス殿」、同様に貧しい老人に施しをして自己満足をする「アイルランドにきて踊れ」など、こうやって考えてみるとどれもいい。人間の心の闇や、悪人に利用されがちな心の隙を描いて絶妙。厭な話ではあるが、心底うんざりするとか肝が冷えるというのではなく、「あー、あるある」というあきらめにも似た共感。その描き方が絶妙。
     というわけで、はじめは「くじ」みたいなのないじゃん!と思いつつ読んでいたのが、読むうちかなり楽しめたのだった。
     

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