アンブロ-クンアロ-: 戦闘妖精・雪風

著者 :
  • 早川書房
4.28
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本棚登録 : 745
感想 : 94
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  • Amazon.co.jp ・本 (328ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784152090515

感想・レビュー・書評

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  • 10年の沈黙を破り、雪風シリーズも三作目へ。ジャムの特殊な攻撃によって時間、空間に対する人間の認識そのものが混乱したフェアリー星に舞台に、人類を裏切りジャムの支配を目指すロンバート大佐との丁々発止のやり取りを軸として特殊戦の奮闘を描く。

    前作までのような華々しい空戦はほとんど陰を潜める一方、「ジャムとの戦いには哲学が有効だ」というブッカー大佐の言葉通りに、隊員達は自分達の世界認識に目を向ける。依然ジャムの正体は明かされないが、今作のジャムの攻撃がそもそも根本的に人間と異なるジャムの姿を示唆する。

    これまでの雪風シリーズのような空戦の妙味はないが、混乱した世界を延々と彷徨っただけに、通路を目指す最後のレース、通路を抜け地球の存在を確定させる最後の交信の爽快感は筆舌に尽くしがたい。やはりこれは雪風シリーズなのだ。文句なしの星五つ。

  • 読了感が最高。理解出来たかと問われたらいいえと答えるが。
    そこが良い。何度でも読む。
    零さんと雪風の関係性が堪らない。
    桂城君は可愛い。そうじゃないかと思ってたけど結構神経太くて良い性格してる。
    あとクーリィ准将が格好良くて好きになった。
    皆負けるな!

  • 最高に面白かった!!!!

    もうただのSFではないのよ。
    すでに哲学の部類に入ったと思うのよ。

    自分は自分だと認識するに至るまでの過程が面白い。
    ほぼ禅問答みたいなもんだったなぁ。
    でもそれが面白いんだよね。

    本気で神林長平が大好きだから身悶えた…。
    やばいやばい、面白い…。

    前回も飛び立つ場面で終わってるのでー。
    次回が何年後かは分からないけれど…。

    待ってる!!!!

  • まず、機械知性体と人間(と異星体)の意識が混ざり合うという舞台設定が素晴らしい。前作からの続編をどのように出してくるか、という期待のハードルを軽く越える発想。
    そして、その意識の混ざり合う状況に対する登場人物たちの思考過程もおもしろく読める。読者が疑問に思いそうなところは彼らも疑問に思ったり、と無理なく追いついていける。
    次回作がどうなるか楽しみ。

  • 5/3
    3作続けて読んだけど、どんどん文学に寄って行ってる気がした。

    それぞれの視点で語られたことを雪風の視点から確認する場面の、発話が終わると映像が停止するという描写は、実時間を伴わないことが可能な小説の地の文そのものである。
    大幅な路線変更があったシリーズ最新作だけど、これはこれで完成度高い。

  • 戦闘妖精雪風の第3段
    第一段を読んだときには「スカイクロラ」の亜種なんて言い方をしましたが、全くの別物でした(;_ _)スイマセン

    機械と生物のコミュニケーションを描いた前作に続いて、今作では機械と生物の見る世界の違いにまで話が及んでいって、ほとんど哲学みたいな話。
    「飛行機飛んでないじゃん(゜Д゜)」っていうのは、言わないでおきます(笑)

    前半は「???」って感じになりますが、零達とともに徐々に世界の見え方がわかる、個人的にはなかなか面白い作品でした。

  • 戦闘妖精・雪風シリーズの3作目にして最新刊。
    前作から大分時間がたちましたが、待ってたかいがあったよ(その間に0VAなども出ていたので、そちらを楽しんだりしてましたが)。
    航空戦闘SFでここまで哲学する作品なんて、この雪風シリーズ位でしょ。
    今回の作品も、本の厚み以上に内容は分厚かった!!
    リアルとは何か、コミュニケーションとは?
    異性体ジャムを神になぞらえもしつつ、彼らの本質を解明しようと紛走するフェアリィ基地の特殊戦メンバーたち。
    彼らの内面の想いや葛藤が丁寧に描き出された部分も読みごたえがあったし、ジャムになろうとするロンバート大佐と零&雪風の対決も見ものだし、読んでいる間中ずっと気を張り詰めてしまいました。
    (なので読後はしばらく呆けてしまったww)
    これは「こういう話です」って、簡単にレビューは書けないなぁ。
    でも第一作目から、読んで絶対損はないです。
    私も多分、この先何度も何度も読み返してゆくんだろうな。
    そんな本の一冊に出会えたことに、感謝したいと思います。
    (そんな本を生み出してくれた神林先生にもね!)

    あ、ただ私の好きな雪風の戦闘シーンがあまり無かったので星4つです。
    次回作があるのなら、雪風の航空戦闘シーンがもっと読みたいな~。

  • 未知の存在ジャムによる地球侵攻を食い止めるための組織FAFに所属するパイロットの目を通して描かれる、戦闘機オタクのSF者向けシリーズかと思いきや、そこは言語にこだわる著者。ただでは済まされない。そのこだわりはエスカレートするばかり。なんですか、あの延々と続くダイアログ。ドッグファイトはどこへ〜。自分が立ち向かっている相手はいまだ不明。何のために戦っているか不明。守られているほうは、本当に戦争状態になっているか実感がもてず疑っている始末。戦闘組織は戦争が終結してしまえば役目は終わるはずなのに、存続しようとし始める。なんだか、実生活のいろんな寓話にも見えてきます。思考することとは、頭のなかで言語(母国語)で行われる活動であるから、きちんと考えるためには言葉は大事にしなければいけない、ということはビジネス書やセミナーでも言われていることですが、この本はさらに凄い。頭のなかでうずまいていることは自分でもまったく把握することはできない(=無意識)、言語を通してようやく一部は自分でも理解できるようになるいう、言語=自意識エミュレータという考え(おもしろ〜)。無意識のなかから面白いものを引っ張りだせるかは言語力にかかっているのだ。やっぱり言葉は大事です。

  • 戦闘妖精雪風を始めて呼んだのは中学1年のときだったかな。たぶん自分の人間形成にかなり影響を及ぼしたシリーズになるんだろう。主人公の性格とか生き方には大なり小なり影響受けて今の年齢になったはずである。無意識のうちにそんな人間関係の作り方だとか物事の捉え方をしていると本作品をよんで気づいた。
    で、全体的な感想。シリーズ一作目は新装版の「戦闘妖精雪風・改」だった。とはいえストーリー上の変化はなく表紙と一部の改定だったようだが、そのときから比べると単純さが消えてなくなった。ジャムをただ打ち落とすだけの一作目本作品は神林SFの中心的テーマ言語とは何ぞや、現実とは何ぞや、を突き詰めたある種の集大成だと思う。特に、アンブロークンアローの章では主人公深井零が前作から引き続き登場するブッカー等と今「自分」が置かれている状況を打開すべく会話をする。その内容がまた神林SFならではの「現実」に対する答えといえるだろう。今までもっとも面白い神林作品だった。ただ、次回作が5年以内に発刊されることを祈る。

  • これを読む前に、前の2冊を読んでからにすればよかったなぁ、と。ずうっとラストスパート状態で勢いがとまりません。ここからはブッカー少佐達の思惑が書かれていて、実は(読者にとって)得体の知れなかった(おそらく主人公が無関心だったせいで)特殊戦の内側がはっきりと見ることができた。零がちゃんと向き合ったんですね、ウンウン。この特殊戦の一体感が、すごくゾクゾクします。後から考えると、アレ?と思うこともあったりしますが、面白かったです。

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著者プロフィール

作家

「2023年 『ベスト・エッセイ2023』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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