グロテスク

著者 :
  • 文藝春秋
3.55
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本棚登録 : 2436
感想 : 369
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  • Amazon.co.jp ・本 (536ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163219509

感想・レビュー・書評

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  • 男に仕事で負けたくない。女にも女の魅力で勝ちたい。主人公の女は自意識の化け物を育て上げた。仕事もできる、男に性を高く売ることができることに自尊心は満足したはずだった。しかし老いは避けられない。高級娼婦は空き地でも性交させる中年の安街娼となってしまったのだ。女は自意識に臓腑を食い破られて悲嘆の血液を路上に垂れ流す女の末路に胸を締め付けられた。濃厚な描写が悲劇を艶やかに映し出す読み応えある作品です。

  • 「わたし」、ユリコ、和恵、ミツル、チャン、全員が記憶を捻じ曲げてでも自分を正当化する。ひょっとすると自分の存在意義を保とうとするあまり壊れていく過程が痛々しい和恵が、最も普通の人に近いのかもしれない。堕落する様は壮絶そのものだが。

    人の心に無関心なのに人の心を掻き毟る者をグロテスクな怪物とするならば、最も「グロテスク」な怪物は百合雄なのかもしれない。

    決して読んでいて楽しい娯楽作ではないが、娼婦の内省を深く推察する筆者の洞察力は一読の価値あり。

  • 長かった。
    結局まともだったのは誰?
    読めば読むほど何が真実かわからなくなってきて混乱するばかりだった。
    美しいのがいいのか、頭がいいのがいいのか...何とも複雑。

  • 凹まされるグロテスクさに引き込まれてしまった。
    人間を丁寧に描いていると思う。

  • タイトルの通りとにかくグロテスク。登場人物の話に全部少しずつズレがあるのがリアル。誰もが心に抱えている歪みが大げさなほどに痛々しく描かれていて読むのがつらかった。パンチはあったけど読み返したくはない。笑

  • まず、タイトルで読むのを避けていらっしゃる方!
    この小説には、いわゆる「グロい」模写はほとんどありません。
    何がグロいって、人間模様がグロいんですよ。(汗)

    語り手の「私」を中心にして、色々な人の視点から
    物語が進むのですが、まともな人間が一人も出てこない。(笑)
    その反面、登場人物の考え方が自分にも思い当たるふしがあり、
    ドキっとすることもあります。
    メインの登場人物はほとんど女性なので、女性読者の方が
    共感するかもしれませんね。

    非常に長い小説ですが、おすすめできます。
    桐野さんって、とんでもない作家さんなんですね。
    特に、「売春日記」のパートは圧巻です。

  • 再読
    東電OL事件を下敷きに描かれる

  •  2006年11月12日読了。

     途中からは一気に最後まで読んだ。人間の性質のマイナス面をグロテスクに抉り出したような作品。実際におこった東京電力OL殺害事件をヒントに書かれた作品で、舞台設定や主人公の言動などは実際の事件そのままらしい。

     ただ、被告人であるチャンの供述は、主人公のストーリーと直接関係ないのに、長すぎると感じた。物語の中に、違う物語が入っている感じ。

  • 図書館にて借りました。
    カゴテリが私にとって桐野先生は殆どホラーになってしまう(笑)

    東電OL事件をモチーフとして描かれた作品。
    ハーフの姉妹。
    ひとりは美人、ひとりは・・・。

    悪意が渦巻く名門高校で生き抜く4人。
    「家族」って凄く影響を及ぼすんだと実感する作品。
    高度成長期が過ぎ、雇用均等法が施行された世代に就職したけど、男女の違いは埋まらない。
    それから何年も経っているのに守られているか?
    と、言い切れない世の中が哀しい。

    しかし、登場人物は本当にグロテスク。
    そうとしか云いようがない。
    私には少し消化が出来なかった。

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著者プロフィール

1951年金沢市生まれ。1993年『顔に降りかかる雨』で「江戸川乱歩賞」、98年『OUT』で「日本推理作家協会賞」、99年『柔らかな頬』で「直木賞」、03年『グロテスク』で「泉鏡花文学賞」、04年『残虐記』で「柴田錬三郎賞」、05年『魂萌え!』で「婦人公論文芸賞」、08年『東京島』で「谷崎潤一郎賞」、09年『女神記』で「紫式部文学賞」、10年・11年『ナニカアル』で、「島清恋愛文学賞」「読売文学賞」をW受賞する。15年「紫綬褒章」を受章、21年「早稲田大学坪内逍遥大賞」を受賞。23年『燕は戻ってこない』で、「毎日芸術賞」「吉川英治文学賞」の2賞を受賞する。日本ペンクラブ会長を務める。

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