帳簿の世界史

  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (384ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163902463

感想・レビュー・書評

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  • 長くかかって、やっと読み終えた。

  • 昨夏に1/3くらい読みかけだったのを一から再読。なぜ完読しなかったのかというのが第一の感想。ちなみに原題はReckoning("決算"と"最後の審判"のダブルミーニング)で、副題を直訳すると「財務報告の説明責任と国家の興亡」くらいか。会計帳簿が古代から現代まで歴史の舞台裏でどのような存在でどのような機能を果たしてきたか(あるいは果たせなかったか)が単なる為政史視点からだけでなく宗教史、経済史、文化史として語られています。おまけの日本史はいまいちでしたが、歴史好きに会計の重要性を教えたいオススメの一冊です。

  • 複式簿記がいかに富をコントールできるかを歴史から紐解く流れが分かりやすい。後書きにもありますが、アジアでの帳簿の歴史記載があればさらに良かったかと。

  • 壮大な物語で描く会計史。
    帳簿とは長い間付き合っているが、
    とても新鮮な感覚で読めた。

  • ジェイコブ・ソール(村井章子訳)『帳簿の世界史』(文藝春秋)読了。
    今年読んだ本の中では一番時間がかかったかな。約3か月。
    歴史書として読むことはできますが、複式簿記や企業会計について少しでも知識がないと難解に思えるかもしれません。
    ローマ帝国のアウグストゥスやハムラビ法典からリーマン・ショックまでを扱った内容なので、さながら時代と場所を超えた絵巻物のような構成で、世界史に疎い小生には分からない部分も多々ありました。
    もちろん、現存する最古の簿記書といわれる『スンマ』(1494年)の著者パチオリや英国の有名な陶器会社創業者ウェッジウッド、18世紀ルイ16世時代の仏国の財務長官ネッケル、あるいは19世紀初頭の米国鉄道会計と公認会計士の誕生など、比較的馴染みがある人物や会社、職業などについても触れられていて、知識を新しくすることができました。
    著者は歴史学と会計学を専攻する南カリフォルニア大学の教授なので、学術書といっても不思議ではありません。事実、おびただしい数の脚注が付いています。
    著者によれば、民主国家の政府が会計を活かせないのは、会計や金融がごく基本的な原則を理解するためでさえ高度な知識を必要とするようになったからだと結論づけています[p.333]。
    やろうとしていることは簡単なことなのに(いくら儲かったのか、どれだけ財産があるのか)、その計算に複雑な処理方法や評価方法をいくつも考え、それらひとつひとつをパッチワークのように結び付けようとすると、何が何だか分からなくなるわけです。今もまさにそんなことになっているような気がします。
    また著者は、「本書でたどってきた数々の例から何か学べることがあるとすれば、会計が文化の中に組み込まれていた社会は繁栄する、ということである。」[p.334]とも述べています。
    知りませんでしたが、ルネサンス期のジェノバやフィレンツェ、17世紀東インド会社で大いに潤った黄金時代のオランダ、18世紀から19世紀にかけての英国や米国の社会では、会計が教育に取り入れられ、宗教や倫理思想に根付き、芸術や哲学や政治思想にも反映されていたそうです。
    たしかに本書では、帳簿や会計にかかわる絵が数枚紹介されています。表紙の絵は「二人の税収人」(1540年)という絵だそうで、台帳、手形、封印、書類箱などが写実的に描写されています。
    写真がなかった時代に描かれていますが、税収人を描いた画家がいたわけで、破棄されず今でも残っているということは、芸術に会計が反映されたといえますし、この絵に文化的価値があるといえます。
    原題はThe Reckoning.
    Reckoningは、計算とか帳簿とか決算とか訳しにくい単語です。(苦笑)
    サブタイトルは、Financial Accountability and the Rise and Fall of Nations.
    会計責任と国家の盛衰といったところでしょうか。
    ただひとつ不満があるとすれば、貴族や国家の会計と企業会計が入り乱れて紹介されていること。政府の会計と営利企業の会計は、同じように帳簿を用いて記録するという点では同じですが、目的は違っていたのではないかと思われます。今でこそ、政府の会計も自治体の会計も企業会計的ですが、長らく分化していたのは、目的の違いを認識していたからでしょう。であるとすれば、同列で紹介することは読者が誤解(勘違い)するのではないかと思いました。
    もっとも、先にも触れましたように、会計教育が社会的に取り入れられていた時代は、今のように国家会計も企業会計も同一視していたのかもしれませんが。
    20年ほど前に、お酒を酌み交わしながら、日本経済史の先生から「歴史というのは見方によって幾通りにも見えるもんだよ。だから自分の見方を定めなければならないんだ。」といわれたことがあります。
    小生にとって歴史は趣味の範囲を出ません。
    しかし、帳簿という記録ツールに焦点を当てて歴史を見た本書は、たしかに、ひとつの見方を示していることを実感させられました。
    そういえば、『訳者の名前、どこかで見た名前だなあ』と思っていたのですが、ピケティ本の訳者でした。ものすごい翻訳能力をお持ちで、会計に関する記述はまったく問題ないものでした。
    というわけで、読了した今年最後の本となりました。
    今度は軽めの本に切り替えます。

  • 古代アテネの時代からリーマンショックまで、国家や商業の発展と凋落をその時の会計の扱いから読みとく本。
    例えばイタリアルネサンスの繁栄のうらには確かな会計スキルと内部監査制度を備えたメディチ銀行の発展があった、とか、スペイン帝国は植民地が赤字でも複式簿記の整備ができなかったから国家財政全体の把握ができなかった、とか。

    とくに一代で巨万の富を築いた中世イタリア商人の500冊もの帳簿が今も残っていて、彼の商売はもちろん、どんなことを考えてどう暮らしていたかまで700年後のわたしたちが知ることができる、という話がおもしろかった。
    鉄の職業的倫理観で会計の機能がフルに発揮されて、商売に役立ったという事例だし、逆にいうと厳正な会計を貫くのは本当に大変ということがよくわかる。

    読み物としてもおもしろいけど、現代において会計責任が真に果たされるにはどうしたらいいのか?という点についても考えさせられた。

  • 帳簿・会計で反映する国、滅びる国。この歴史は面白い。

  • 帳簿でくくって世界史を眺めるとこんなにも面白いとは。権力と会計の関係はずぶずぶ。

  • 「会計が文化の中に組み込まれていた社会は繁栄する」
    「厳正な会計はよき事業のみならず、よき統治に欠かせない 」などなど、経理の仕事をしていた私には、我が意を得たり。
    でも、「アウグストゥスが帳簿をつける物語など、全然魅力的ではないのである。」で、やっぱり仕事的には地味…。
    公認会計士が鉄道の発達によるもの、フランス絶対王政の凋落に会計も絡んでいるというのが面白かった。
    日本の帳簿の歴史が巻末に。日本人の気性に合っていたのか。

  • 会計の重要性を教えてくれます。自分の人生に戦略を持つことは伊東先生の本で参考になりましたが、自分の人生を複式簿記で記録していくことも必要だと思いました。

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