「ドイツ帝国」が世界を破滅させる 日本人への警告 (文春新書)

  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (232ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784166610242

感想・レビュー・書評

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  • 1 ドイツがヨーロッパ大陸を牛耳る
     自ら進んでドイツに隷属するようになったフランス
     ウクライナ問題の原因はロシアではなくドイツ
     ドイツがヨーロッパ大陸を牛耳る
     アメリカとEUの産業上の不均衡
     アメリカと「ドイツ帝国」の衝突
    2 ロシアを見くびってはいけない
    3 ウクライナと戦争の誘惑
    4 ユーロを打ち砕くことができる唯一の国、フランス
    5 オランダよ、さらば! 銀行に支配されるフランス国家
    6 ドイツとは何か?
    7 富裕層に仕える国家
    8 ユーロが陥落する日

  • この本も昨年末の大掃除で部屋の片隅で埃にまみれてました。表紙にまでこびりついていて、クイックルワイパーしました。帯に書かれているように、ドイツと中国の貿易の関係はとても密のようですね。

    ドイツはEUで、唯一の勝ち組とされているようですが、それに貢献しているのは、ユーロ安を活用できる輸出が旺盛で、それに貢献しているのは中国です。

    この本の最も印象的なのは、開いた一ページ目にある「ドイツ帝国の勢力図」です。ドイツはEUを使って、事実上のドイツ帝国の復活を目指しているような感じがしますね。

    以下は気になったポイントです。

    ・ドイツ帝国=ドイツ+ドイツ圏(ベネルクス、オーストリア、チェコ、スロバキア、クロアチア)+自主的隷属(フランス)+ロシア嫌いの衛星国(ポーランド、スウェーデン、フィンランド、バルト3国)+事実上の被支配(その他EU諸国)+離脱途上(イギリス、ハンガリー)+併合途上(ウクライナ)(p1)

    ・ドイツ帝国は最初のうちはもっぱら経済的であったが、今日では政治的なものになっている。ドイツはもう一つの世界的な輸出大国である中国を意思を通じ合わせ始めている(p37)

    ・乳児死亡率(1歳未満での死亡率)の再上昇は、社会システムの一般的劣化の証拠である、1976年にソ連で上昇していた(p81)

    ・経済指標はねつ造できるが、人口学的指標はねつ造できない(p82)

    ・ドイツはグローバリゼーションに対して特殊なやり方で適応した、部品製造を部分的にユーロ圏の外の東ヨーロッパへ移転して、非常に安い労働力を利用した。国内では競争的なディスインフレ政策をとり、給与総額を抑制した。平均給与はこの10年で4.2%低下した(p150)

    2017年1月3日作成

  • 2015年刊行。

     困った本である。
     面白い視座だなぁと読み始めたら、どうもドイツの内政・外交に関して、経済的に独の一人勝ちのみという結果だけが適示され、その政策分析は皆無。つまり著者の言い分がいかなる事実に裏打ちされているのかというのが適示されず、下手な陰謀論並でしかないのだ。

     しかも、著者のこの感情的な独忌避の意味を考えるに、著者が仏人だったという笑えないオチ。かつ、WWⅠ前の露仏協商の如く、露を殊更持ち上げて見せる辺り、仏人の対独ルサンチマンを雄弁に語る書のように思えてくる。

     すなわち、本書の結論部分の是非を味読するのに必要な情報。それは現代の独仏露の政治・外交・経済政策の詳細である。
     その各種政策の利害得失を切り取って見せて初めて、本書の言うドイツ帝国主義の再来の正誤を語りうるはずである。

     そもそも日本において、欧州各国の各々の政治情勢やその対立を詳細に報道されることは殆どない。ならば、本書では脚注での解説が重要で、訳者ないし編集者の現代欧州の政治経済(特に経済と外交)への造詣が問われるところである。
     しかるに、脚注皆無な上、訳者の専門も仏文と仏思想で、やや外している。

     「文春」しっかりしてくれと言いたくなるのだ。

     ところが、困ったことに、切って捨てれない。
     すなわち、①「政府債務(≒国債?)は民間金融機関の発明」であるとか、「政府債務の立て直し(≒国債の価値と償還可能性向上)は(国債保有者たる)富裕層・金融機関の利益のため」であるとか。
     さらに、②国家は一般意志の体現者でもあるが、支配階級の表現者という両義性を持っていること。③市場システムというより、寡頭支配者層が国家や財を制御・支配という関係性が問題である、など、ウイットに富んだ面白いことを言うので始末に負えない。読み飛ばせないのだ。
     実に困った本である。

  • ドイツ語勉強の足しに、と思って読んだが、こちらの基礎知識不足で難解だった。

  • 日本だけではなく、フランスでもドイツでも、アメリカも権力中枢にいるエリートたちの頭がおかしくなっているのだそうだ。人類補完計画の始まりなんだろうな...
    気を確かに持ちたいものである。

  • 著者はフランスの歴史学者。EUの創設時の話は、すべての加盟国家がパワーの大きさにかかわらず平等に扱われることが掲げられたはず。実際には強国と弱小国に分けられ、絶対的強国のドイツが牛耳っていることを著者は指摘する。なぜ副題に日本人への警告とあるのか。それは日独両国の間には何となく共通性があると思いこまれているが、昨今の政治情勢を見てドイツと比せられるのはむしろ中国だからである。現代版「帝国」形成という地政学的変化を指摘した書籍。

  • 冷戦後のヨーロッパの情勢とこれからの世界の情勢がそれぞれの国の文化から書いてあった。国単位でもエリート国が存在する。これから世界中のエリートが国境関係なしに0.01パーセントが勝つ状態になるそんなエリート(国も人も)が暴走しないようにどうコントロールするかがこれからの鍵

  • ルーマニア、ハンガリー。ためになります。

  • もはやEUは、ヨーロッパの自由と平等を体現した共同体ではなく、ドイツの言いなりばかりのドイツ帝国だ。

  • 2016/08/26:読了
     今年読んだ本の中では、ベスト3に入っている。
     ベスト1かもしれない。
     ドイツ、EU、アメリカ、ロシア、フランスの現状分析が素晴らしい。読んでいる間中、納得し続けた。
     文脈上、イギリスの離脱も、当然。
     東アジアについても、こういう納得感のある本を、読んでみたいと、つくづく思った。

    【書評】
    イギリス人はある種のフランス人たちと違い、ドイツ人に従う習慣を持っていないのだ。E・トッド
    - 株式日記と経済展望
    URL=http://blog.goo.ne.jp/2005tora/e/bc3086dd2f0c2de74f899beed52562ca?fm=rss

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著者プロフィール

1951年フランス生まれ。歴史人口学者。パリ政治学院修了、ケンブリッジ大学歴史学博士。現在はフランス国立人口統計学研究所(INED)所属。家族制度や識字率、出生率などにもとづき、現代政治や国際社会を独自の視点から分析する。おもな著書に、『帝国以後』『「ドイツ帝国」が世界を破滅させる』などがある。

「2020年 『エマニュエル・トッドの思考地図』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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