人工知能と経済の未来 (文春新書)

著者 :
制作 : 井上智洋 
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784166610914

感想・レビュー・書評

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  • 現在の特化AIだけなく2030年以降汎用AIが登場すると仮定した上で、経済成長と雇用に与える影響を多角的に分析した内容。機械によって仕事を奪われた多くの人々はベーシックインカム(BI)の導入で救えると著者は論じる。
    現状においてベーシックインカムを日本に導入することに対して賛成の立場だが、著者のようにAIで失業した人々はベーシックインカムで救える、財源は考えなくていい、なぜなら増税すればいいから、と、屈託なく楽観的には考えられない。
    仮に著者がいうように2045年以降にシンギュラリティが訪れ、汎用AIが経済を回していると仮定しよう。社会保障の原資となるお金を持つ一握りの人たちが果たしてBIに賛成するだろうか。

    経済成長し豊かになるためには一生懸命働く人たちが必要。戦争に勝つために優秀な指揮官と兵士が必要。そのために学校教育制度や福祉の充実、社会保障制度を国家はここ100年かけて紆余曲折しながら作り上げてきた。でも、未来において全てがAIやテクノロジーを含む機械が行う。ほとんどの人は必要がない。
    そう仮定すると近代が作り上げた制度もお払い箱。だから生きていけない人たちはBIで生き永らえる。でも消費しない、安全保障にも貢献しない、AIより無能な大勢の人たちを、AIやテクノロジーで巨万の富を築いた一握りの人たちが果たして養うだろうか?国家や企業は少なくともそう考えるだろう。
     
    それに疑問点もちらほら。本書で紹介されているBIを導入した家計モデルはAI資本主義が実現した未来において適切だろうか。年収いくらで~、リターンはこれぐらい、と計算しているが、未来ではこんな世帯収入の家庭はとっくにAIに駆逐され失業しているんじゃなかろうか。

    このままだと超絶な格差社会しか到来しないという個人的な未来予測は悲観的過ぎるかな。でも著者の楽観論と自信はどこから来るんだろうか。腑に落ちない箇所が多々ありAIについてあまり参考にならない内容だった。

  • 「人工知能」とはコンピュータに知的な作業をさせる技術だそうです。
    そうなると人の仕事を機械がやってくれる時代が来るのかもしれません。
    それを「技術的失業」と言うそうです。
    本書でもベーシックインカムに言及されてますね。
    「ビッグデータとデータマイニング」
    僕もいまいちビッグデータの活用方法がよくわからないんですよねσ^_^;
    ビッグデータには無数のテキストデータが入っています。
    テキストマイニングが重要でデータからどんな成果を引き出すのかは人間がやらないといけないのではないかと思います。
    しかし今後はディープラーニングによるブレイクスルーがあるのかもしれません。
    それがAIがAIを教育するシンギュラリティなのかもしれません。
    そうなると人間に何ができるのか…ってなりますσ^_^;
    「特徴表現獲得の壁」
    また読まないといけないんですが東大の松尾豊さんはAIはディープラーニングによって特徴表現獲得の壁を越えたとおっしゃってます。
    これでAIが自ら特徴を見出すことが可能になると人間を越えるベースができたのかもしれません。
    今後人間はどうしていけば良いのか悩ましいところです。
    AIが
    ①生産の効率性を向上させる
    ②人間の労働の大部分を代替し経済構造を変革する
    という2つの効果を通じて経済成長を促進する
    「産業政策とイノベーション政策は峻別する」
    民間に任せていては街灯が十分設置されないのと同様に政府が研究開発を支援せず、ただ民間に任せているだけではイノベーションは過少にしか引き起こされない。
    政府はAIの産業育成ではなく新たなAI技術を生み出す研究開発の促進にそこ力を入れるべき。
    とあります。
    最後にベーシックインカムについて書かれていました。
    負の所得税的な書き方をされてます。
    これを読んでるとベーシックインカムを導入するかしないかは結局は政治がどう判断するかにかかってくるのかなあと思います。
    日本でもやってやれんことはないんやと思います。

  • 考え方として勉強になりました。

  • AIが発達する2030年頃はベーシックインカムがないと貧富の差がつきすぎてヤバイらしい。著者は月7万円くらいあればよいと言っているが。

  • 「遠い未来には、機械に労働させて、人間はベーシックインカムで暮らすようになるのかな」

    この本では、人工知能の登場により、2030年から世界は第四次産業革命に突入し、2045年くらいにはその経済の形が出来ているという。
    今の生産活動では機械と労働の両方を必要としているが、AIの普及によって生産活動に必要なのは機械だけになるだろう。これは経済構造の大きな変動である。純粋機械化経済に移行することで、経済の成長率も上昇する。

    第二次産業革命の時、イギリスを始めとした欧米諸国の経済は、工業化し機械化することによって豊かになり、逆にそれを取り入れなかったアジア・アフリカ諸国は停滞し、むしろ欧米諸国に収奪されることになり、より貧しくなった。
    今が第四次産業革命の分岐点だとしたら、AIをいち早く導入した国々が経済面で圧倒的となる。
    実際、第三次産業革命に乗り遅れた日本は、パソコンの基本ソフトウェアはWindows、捜索エンジンはGoogle、ネットショッピングはAmazon、SNSはTwitterというように、それらのサービスや製品で得られる収益はアメリカの各企業に持っていかれてる。
    日本は今度こそこの分野に乗り遅れてはいけないのではないだろうか。リードできる可能性はある。
    AI研究を進め、その技術を平和利用し、世界中の人々が豊かに暮らせるよう役立てる。軍事国ではないアメリカや中国ではない、日本だからこそできると思う。

    AIの普及によって無くなる仕事は多い
    機械との競争に負けている平均的なスキルを持った労働者の需要は増えないだろう
    しかし、機械に奪われにくい仕事もある。それは以下の三つ

    ・クリエイティブ系 創造性
    小説を書く イラスト 発明 新しい商品の企画 研究して論文を書くなど

    ・マネージメント系 経営・管理
    店舗やプロジェクトの管理、会社経営など

    ・ホスピタリティ系 もてなし
    介護士 保育 インストラクターなど

    これらの仕事に共通しているのは、他人との感覚の通有性が必要。

    AIが普及し、多くの労働者が働けなくなる状態になったとしたら。
    クーポン型至上主義とベーシックインカム(収入の水準に関係なく、全ての人に無条件に、最低限の生活費を一律にあげる制度)の考えは面白い。
    今の人間は、仕事が見つからなかったり収入が少ないだけで、自分は意味のない人間だと感じてしまい勝ちではないだろうか。私もそうだ。自らを社会にとって役に立つ道具かどうかとして考えてしまっている。しかし、有用性があるかどうかとしてしか自分を見れないのは辛い。AIの発達によって、真に価値あるものを明らかにしてくれるといいな。
    人間の生それ自体に、価値があるのではないだろうか。それを実感できる時代、その価値観が広まった時代にはやくなってほしい。

  • 人口知能がこれからの社会をどう変えていくのかについて論じている。人口知能は、今は特化型(目的に応じたもの)だが、いずれ人間のように、汎用型人口知能が開発されていくと指摘されている。
    人口知能には言語の壁と生命の壁がある。言語の壁とは、抽象的な言葉の意味が分からないこと、生命の壁とは、感覚の通有性と身体知である。前者は、人間が共通して持っている感覚。例えば、レストランの接客中に現れたゴキブリは潰しても、ネズミは潰さないこと。後者は身体がないということ。
    また、人口知能によって代えられない仕事としては、クリエイティブなもの、マネージメント系、ホスピタリティ系と言っているが、それらの仕事でさえ、汎用型人口知能に代替されるだろう。

    最後のベイシックインカムには賛同できないが、全体的に論理的かつ説得力があり、読んでよかった本だった。

  • 先生の本はこれで3冊読んだけど、やはりこの本を最初に読むべきでした。この本の前半が「人工超知能」に後半が「AI時代の新・ベーシックインカム論」でさらに展開されたような気がする。そういう意味では先に続く2冊を読んでしまって、改めてここに戻ってきて書くべきことも少ないような気もするけど、あとがきに書かれていたバタイユの話が印象的。バタイユは有用な営みに覆われた人生は奴隷的と考え、有用性の対極に至高性を対置している。なぜ、有用性が奴隷的なのかというと役に立つが故に価値があるものは、役に立たなくなった時点で価値を失うので、その価値が独立的でないというのだ。AIやロボットが進化し、人間にとって有用なことはどんどん機械によって提供されるようになる。故に人間の価値も有用であることではなく至高性があることに価値が見いだされるのだと解釈すべきらしい。何だか今の価値観を180度変えるような考えでもあり、またそういう時代が来る可能性を考えると、とても示唆に富む内容だったように思う。

  • 人工知能についての概略を知るにはよいものの、内容としては初心者向けの内容

  • 人工知能の技術が発展して、経済がどう変わっていくのかを話した本
    納得感はあるけど、結構普通の視点であまり新しい発想というものはない。
    結局ベージックインカムという結論出し。ベーシックインカムの弱者優位性が面白かった。特に子供のあたり。

    肉体労働、事務労働、頭脳労働の3種類がある、ITにより事務労働が減っていく
    そうして中央の事務労働層がへり、資産が2極化していく
    人造肉は研究はされている
    AIには欲望がない、もし持った場合にシンギュラリティが起きるだろう。人間の欲望とは方向が違う

    イノベーションには2つの効果がある、この2つによりロジスティック曲線で成長する。
    肩車効果:先人たちの知識を役立てることで発展すること
    取り尽くし効果:発展が進み新たな発展がなくなっていくこと

    クリエイティブ、マネージメント、ホスピタリティの仕事はAIに取られにくいと考えられている

    月7万円ほどのBIがちょうどいいのではないか、暮らすのに完全に十分ではないが、基本的には生きていけそう
    子育て世帯が今より大きな利益を得ることとなる
    お金持ち、独身が比較的不利益を被ることになる。

  • AIが人の知能を超えることは考えにくい。クリエイティブ、マネージメント、ホスピタリティは人の仕事として残る。

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著者プロフィール

経済学者。駒澤大学経済学部准教授。慶應義塾大学環境情報学部卒業。IT企業勤務を経て、早稲田大学大学院経済学研究科に入学。同大学院にて博士(経済学)を取得。2017年から現職。専門はマクロ経済学、貨幣経済理論、成長理論。著書に『人工知能と経済の未来』(文春新書)、『ヘリコプターマネー』『純粋機械化経済』(以上、日本経済新聞出版社)、『AI時代の新・ベーシックインカム論』(光文社新書)、『MMT』(講談社選書メチエ『)「現金給付」の経済学:反緊縮で日本はよみがえる』(NHK出版新書653)などがある。

「2022年 『東大生が日本を100人の島に例えたら 面白いほど経済がわかった!』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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