人工知能と経済の未来 (文春新書)

著者 :
制作 : 井上智洋 
  • 文藝春秋
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感想 : 147
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784166610914

感想・レビュー・書評

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  • 人工知能はこれから飛躍的に発達するが、人間の知性全てを超えると予想することは難しい、という筆者の主張には説得力がある。全脳エミュレーション方式では人間の脳と同じ働きをするが非常に実現性が低く、今開発が進む全脳アーキテクチャ方式では、潜在的な感性・感覚・欲望の全てを拾い上げることができず、新しい尺度を発明し得ないからだ。加えて、人工知能は感覚の通有性や身体知を持ち合わせていないという点にも合点がいく。ただし、既存の仕事の多くを代替していまうくらいの能力にはなるということだ。
    筆者は、これから人々の仕事が消えるというのだが、本当だろうか。需要にたいする供給が多くの分野で過剰になる可能性を筆者は指摘するのだが、現在圧倒的に供給不足の分野がある。それは、人と人との繋がりだ。定年後話し相手のいない人、一生独身の人、、、そうした人が増加している。携帯端末がどれほど値崩れしようと、若者の車離れが如何に深刻化しようと、仲間を求める人間の本質は変わるまい。VRのキャラクターが話し相手をするにしても、個人の生老病死を受け止めるほど高度化するとは考えにくい。民生委員や日曜教会、あるいは神社の氏子コミュニティのようなものが発展したビジネスが、21世紀の主要産業になるのではないか?そしてそれは、人工知能に最も代替されにくい職種形態であろう。本書はあまりに技術面に偏っており、歴史哲学からの切り込みが少なく、BIに関する議論には説得力がない。

  • 汎用AIが出てきて大概のことはAIによって代替できるが、人間の五感に基づくものは無理だろうという予測は納得がいく。
    経済学者という肩書ではあるが、経済的な考察は浅いように感じられた。
    所得税増税で賄うベーシックインカムというのはマクロ経済的にはわかるが、政治的に実現するとは思えない。どういう経緯をたどるにせよ中東の産油国のような低税率、高福祉国家が目指すべき未来なのではないかと思う。

  • 【由来】


    【期待したもの】
    ・最初は図書館の新書アラートだったかも

    【要約】


    【ノート】
    ・何か、イマイチっぽいと感じたんだけど、帯見たら絶賛されてる。理解が足らないのか?

    【目次】

  • 新書

  • この手の本の著者には当然AI(人工知能)研究者が多いわけだが、本書の著者はマクロ経済学者だ。ただし、大学時代に計算機科学を専攻し、AI関連のゼミに入っていたという。

    つまり、“AIにも造詣の深い経済学者”なわけで、本書にはその立ち位置が十二分に活かされている。今後AIの進歩が加速していった果てに、経済と雇用のありようがどう激変するかに焦点が当てられた内容なのだ。

    先月読んだ『人工知能が変える仕事の未来』(野村直之)が楽観的で希望に満ちた内容だったのとは対照的に、著者の描く未来像は、「2030年雇用大崩壊」という副題どおりの悲観的なもの。

    《2030年頃に汎用AIが登場するならば、その後は急速にあらゆる雇用が失われていくことになります》

    《今から30年後の2045年くらいには、全人口の1割ほどしか労働していない社会になっているかもしれません》
     
    「汎用AI」とは特化型(専用)AIの対義語で、「人間に可能な知的な振る舞いを一通りこなすことのできるAI」を指す。この汎用AIの開発の目処が立つのが2030年頃だと言われており、それこそがAIによる雇用破壊の本格的な始まりだと著者は捉えているのだ。

    逆に言えば、AIが特化型にとどまるうちは、雇用破壊はそれほど心配する必要はない、と見る立場なのである。

    《汎用AIが出現してしばらくした後に、労働者の多くが雇用されず、汎用AI・ロボットが生産活動に全面的に導入されるような経済が到来する可能性があります。そのような経済を「純粋機械化経済」と呼ぶことにしましょう》

    ただし、9割の人間の仕事が汎用AIに奪われる未来を、著者は必ずしもディストピアとしては描いていない。それは、“労働はAIにまかせ、人間は働かずに暮らせるユートピア”になる可能性もある、というのだ。

    「純粋機械化経済」をユートピアにするための条件として、著者はベーシックインカム導入を挙げる。
    最後の第5章は丸ごと、労働はАIとロボットにまかせ、9割の人々がベーシックインカムで暮らす未来を展望する思考実験に充てられている。

    SF的ではあるが、「AIが人類を支配する未来」などという与太話よりは、まだしも現実味がある気がする。 

  • AIがもたらす未来の姿を経済学的、哲学的視点から解説した著作。近代合理主義によって到来した資本主義社会は、汎用AIの普及によって終焉し、新しい経済=機械化経済が到来するとの実は構想は壮大な著作。もっと深掘りして読んでみたい印象で、新書ではなくハードカバーの大著として構成し直すべき著作。そういう意味でもったいない本です。ぜひ次作期待です。ただしベーシックインカム導入という方向性については「はてな」マーク。付加価値生産活動がもたらす「承認欲求充足」という根元的な効用=著者いうところの「至高性」についてもっと深掘りするとベーシックインカムとは別の世界観を展開できるのではと思います。

  • 2045年のシンギュラリティにかんして懐疑的、ベーシックインカムBIに関して最後は述べられています。流石経済学者。

  • AIの話が中心かと思ったけど、マクロ経済学の話だった。
    本書はAIが発達→労働不要→ベーシックインカムの流れになるとのことであった。
    確かにAIの発展は労働不要になるかもしれないけど、僅か10パーセントだけが働く世の中が2045年までに到来するかわからない。

  • AIが発達し2030年ごろに汎用AIが完成したら労働者の雇用が奪われるかもしれないという話。いまいちピンとこないがそういう未来がもうすぐそこまで来ているのかもしれない。詳細→http://takeshi3017.chu.jp/file7/naiyou26201.html

  • 筆者は新進気鋭の経済学者。本業はマクロ経済学。AIの登場による社会への影響を、主に雇用面から占う。特化型AIの段階では、人が創造性やもてなしを必要とする労働を担うことで人の共存は可能。しかし、汎用AIが登場すると、それらも含め全ての仕事が機械に代替される純粋機械化経済に移行するという。 少し机の上の議論感はあるものの、経済学的な議論については理論的に面白い。ただ、ベーシックインカムに係る部分については、インフレや高所得者の反対といった導入に際する問題についても、脇において議論を進めずに向き合ってほしかった。

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著者プロフィール

経済学者。駒澤大学経済学部准教授。慶應義塾大学環境情報学部卒業。IT企業勤務を経て、早稲田大学大学院経済学研究科に入学。同大学院にて博士(経済学)を取得。2017年から現職。専門はマクロ経済学、貨幣経済理論、成長理論。著書に『人工知能と経済の未来』(文春新書)、『ヘリコプターマネー』『純粋機械化経済』(以上、日本経済新聞出版社)、『AI時代の新・ベーシックインカム論』(光文社新書)、『MMT』(講談社選書メチエ『)「現金給付」の経済学:反緊縮で日本はよみがえる』(NHK出版新書653)などがある。

「2022年 『東大生が日本を100人の島に例えたら 面白いほど経済がわかった!』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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