人工知能と経済の未来 (文春新書)

著者 :
制作 : 井上智洋 
  • 文藝春秋
3.57
  • (55)
  • (143)
  • (131)
  • (33)
  • (5)
本棚登録 : 1425
感想 : 147
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784166610914

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  •  私たちの脳と身体は神経系で複雑につながっており、身体知はそのような総体によって獲得されています。人間は無数の身体感覚を持っており、それがスポーツばかりでなく、学問や芸術、ビジネス、対人サービスにとって必要な技能やひらめきを与えています。ホーキング博士が言うように脳は確かに筋肉ではありませんが、筋肉は脳のように思考に関与しています。
     AIがたとえ人口の身体であるロボットに搭載された倒しても、その身体は生命であるところの人間のものとは異なっています。そうであるならば、そのAI・ロボットは人間が獲得しているような身体知を自ら発見し獲得することはできません。(p.94)

     われわれはもう一度手段より目的を高く評価し、効用よりも善を選ぶことになる。われわれはこの時間、この1日の高潔でじょうずな過ごし方を教示してくれることができる人、物事のなかに直接のよろこびを見出すことができる人、汗して働くことも紡ぐこともしない野の百合のような人を、尊敬するようになる。(ケインズ、p.243)

  • 全体的にとても有用。BIに関する部分も分かりやすく、基本的な考え方を説明してくれているので役に立つ。

  • 著者の説明が非常にわかりやすい。それだけに、最終章でベーシックインカム(BI)に論点が移る流れが非常にわかりにくい。AIが高度に発達した社会にはBIが必要としつつ、筆者はAIが発達しない社会においてもBIが導入されるべきと主張しており、BIに対する主張にいささか唐突感を覚えた。

  • ★4.6(3.57) 2016年7月20日発行。2回目の読了だったとは。今回改めてこの本の素晴らしさを実感できた。前読んだときはベーシックインカムなんてあり得ないと思ったが、今回読んでみると、確かにこの考えもあり得るかもと。それにしても2030年以降の世界が、ディストピアになるかユートピアになるか・・・。真剣に我々の未来を考える必要があるのに、今の若者はこの現実に気付いているのだろうか。日本が今後どう進もうと、世界は待ってはくれない。一刻も早くこのAIの世界に追いついていかないと・・・。この第四次産業革命がスタートすると思われる2030年、この予言の書の結果は如何に。ディストピアでないことを祈る。

  • 2018.05.20読了

  • この本の著者も、名の知れたAIの研究者もやはりAIに対しては、過剰な期待を抱いてはいないようです。シンギュラリティという、AIが人間の能力のすべてを超越して、社会の中心になるというのは現状ではSFの世界の妄想にすぎないようです。最後の章に於いて、AIが労働を奪った後に、人間がどのように所得を得て生きてくのかと言った議論にベーシックインカムの議論がありますが、日本で実現するには相当な思いきりと改革が必要なようで、現実にはちょっと実現しにくいと感じました。

  • 最近少しずつプランドハプンスタンスが時代に合うようになってんじゃないかってスタンスにシフトしつつある。
    この本で言うと「仕事が機械に奪われる事を恐れるのは、有用性を重視する資本主義思考に染まってるから」って論理と通ずるものがある。
    金利上昇を前提とすれば、「将来の為に今を我慢する」という山登り型のキャリア観は正しい。転職が前提になり「成長」がキーワードになっても”勝ち馬に乗る”という視点が生まれただけで本質的にはそんなに違いはない。
    が、これからはマーケットキャップが富を生む時代に更にシフトしていくと思う。ただでさえ身近な需要は飽和に向かっているのにこれから先は更なる生産性革命が起きるのだとすれば尚更。

    一方、内容としては、AIで雇用が減る論理がザックリだからBIの展開がトンデモに見えるのが勿体無い気がする。サービスの需要が飽和しない限り(そしてそんなことは当分ありえない)仕事がなくなることはない、と考えている派。
    BI自体の有用性は理解できたから別で議論した方が良さそう。

  • 著者的には、AIが知性の大部分を超えるとは思うがすべてを超えるとは思わない、全脳エミュレーションじゃないとだめらしい、感覚の通有性は出ない、需要不足による失業の問題が出る、マクロ政策はじゃぶじゃぶで行くべし、貨幣は長期的に中立ではない、AIとロボットで雇用は2045年に全人口の1割、純機械化経済では需要が制約になりうる、汎用AI研究進めるべし、資源制約はナノテクで何とかする(のだが結構大変そう)、純機械化経済では過剰性の社会が来る、対策としてはベーシックインカム、という立場。
    どうも資源制約のところが私としては引っかかる。それと、1割の人間の欲とAIの純粋性と。
    読んでると読めてしまうがどうも何べん読んでもうまく腑に落ちないし、毎回書けるマップも違う。ポランニーの時はすっと落ちたのになんでだか。

  • 全体として、具体的な数字を用いた説得力があったが、人間の感性の観点が欠如していたように思えた。合理的だが、現在の世界を動かしているのは資本家やその政治家多いので技術だけでは世界の貧富の差が広がるだけだと思った。



    ベーシックインカム制度を資本主義の頂点でもある政治家が導入するかどうか。

  • 人工知能が経済に与える影響を、論理的に推測しようとする試みは参考になる。

    過去何度かの産業革命と同様に、仕事の在り方を一変させるような変化が私たちを待ち受けていることは明らかだ。

    ただし、BIのコンセプトが出てくると途端に怪しくなるのはなぜなのだろう。AIからBIへ的な論説が出た途端に、日本の国家財政が破綻する的な胡散臭い本と同レベルに成り下がるような気がする。

全147件中 51 - 60件を表示

著者プロフィール

経済学者。駒澤大学経済学部准教授。慶應義塾大学環境情報学部卒業。IT企業勤務を経て、早稲田大学大学院経済学研究科に入学。同大学院にて博士(経済学)を取得。2017年から現職。専門はマクロ経済学、貨幣経済理論、成長理論。著書に『人工知能と経済の未来』(文春新書)、『ヘリコプターマネー』『純粋機械化経済』(以上、日本経済新聞出版社)、『AI時代の新・ベーシックインカム論』(光文社新書)、『MMT』(講談社選書メチエ『)「現金給付」の経済学:反緊縮で日本はよみがえる』(NHK出版新書653)などがある。

「2022年 『東大生が日本を100人の島に例えたら 面白いほど経済がわかった!』 で使われていた紹介文から引用しています。」

井上智洋の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
佐藤 優
アンデシュ・ハン...
リンダ グラット...
ジャレド・ダイア...
有効な右矢印 無効な右矢印
  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×