新装版 関東大震災 (文春文庫) (文春文庫 よ 1-41)

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  • Amazon.co.jp ・本 (352ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167169411

感想・レビュー・書評

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  • 現代とは違う軍国主義の時代。大変様子が違うのに驚いた。地震より火災による被害の方が大きかったのは知っていたが、突風で人々が飛ばされたり、本所被服廠跡だけで4万人近くの死者が出たのには驚いた。震災後の騒擾は広範囲なエスニック・クレンジングや露骨な赤狩りでしかないし、強奪や様々な無秩序が巻き起こっていて恐ろしい印象を受けた。甘粕正彦は映画「ラスト・エンペラー」でも悪役だったが、震災の際にも事件を起こしていたとは。色々と驚かされます。政治家や役人は今も昔も大災害の時に悪い意味でのみ目立ってしまうのは残念ですね。

  • 『関東大震災』(吉村昭)「罹災民は、地震発生直後から平時では見られぬ人間性の本質をむき出しにした市民の姿を数限りなく眼にしてきた。そうした行為を数多く目撃した人々は、人間に対する不信感と恐れを根強く抱くようになっていた。」(P154)

  • 「本所被服廠跡・三万八千名の死者」の章で、生き残った二十歳の山岡清真氏の回想は悲惨さ以上に、体験した本人しか分からない真実の凄味が見事なまでに鮮やかに語られている。

  • 今まで、これほどまでの悲惨な災害だったとは知らなかった。本書の帯には

    大震災で何が起きたのか。犠牲者20万人、空前の大災害の真実をあらゆる視点から掘り起した名作

    と書かれている。でもこれはかなり控目な表現に感じた。20万人もの犠牲者はなぜ発生したのか。自分の備忘録として纏めます。

    江戸から東京へ

    地震の揺れによる建物の倒壊による圧死、これは想像できる。阪神淡路大震災だ。崩れた建物の下敷になって亡くなった人。
    特にこの時代は江戸から東京に変わって60年。無理やりの西洋化と過去からの決別。伝統の途絶、都市化、江戸時代の災害やその対策方法を完全に忘れている。
    水道が地震には極めて脆弱であることを忘れて、或いは無視しての市街地化。

    多数の建物の倒壊

    俄西洋風の煉瓦造りや瓦礫の散乱。
    道路が塞がれて、消防活動や避難を困難に。

    火災の発生

    初期消火をすることなく家財道具を持って逃げる人々。自分の財産を守ることのみの意識、それが火を媒介した。避難場所に運び込まれた家財道具が燃えて避難民を焼尽くす。
    被服工廠での地獄。逃惑う人々。炎の竜巻に巻込まれて。焼死体の山、川や池の死体の山。
    死体から物を盗む人々。人身の混乱(パニック)

    第二の悲劇

    富士山噴火、朝鮮人による襲撃、社会主義者革命というデマ。流言飛語に乗じた略奪、暴行。
    平素の差別意識の裏返しか。執拗且つ残忍な襲撃。
    当初は役所、警察、軍も信じた結果、自警団組織など火に油を注ぐ。
    情報不足、不安、パニックから野火の如く広がる。
    集団ヒステリー、集団パニック、寄り掛ることの出来る物、不安から逃げるため。殺すことで自己正当化、自己確認。生きる意味を見つける?

  • 3.11で多くの被災地の悲しい事実を目にして
    最近まで気にしてなかった都市直下型地震
    大正時代に起きた関東大震災の記録を思い出した。

    ただ
    頭の隅っこに追いやられていた遠い記憶は
    曖昧で震源地や被害の大きさなど
    二次災害が何だったのか
    その原因は?
    記憶にとどめておくべき重要な情報が蘇って来ない。

    自宅は海沿いではないが
    勤務地が家族と離れた都内であることから
    津波だけでなく直下型地震の恐ろしさを学ぶ必要があり
    歴史好きの癖に近代史に疎い自分と
    守るべき家族を背負った責任の重さから
    あらためて勉強の必要性に気が付き
    Amazonで早速この作品を手に入れた。

    奇跡的に助かった多くの証言や手記から地震の後の二次災害や三次災害の恐ろしさを知り
    テレビでは目にする事のなかった
    津波で失われた多くの命を奪っていくシーンを想像させられた。

    戦争と同じで危険な目に遭った人間が平常時では考えられない事をしたり
    そんな生命の危険にさせされた状況で
    冷静でいられなくなる人間の弱さを知る事ができた。

    悲しい事に
    この時代も江戸時代の歴史的教訓を活かす事が出来ず
    多くの犠牲者を出した。

    日本という国に生まれたので
    地震を避ける事は出来ないが
    過去の悲しい歴史から学べる筈の多くのノウハウを
    今一度しっかり学び直す機会であるはずってことで
    都心に住むものだけでなく関東に居を構える全ての人がこの本を手に取ることを
    願ってやまない。

    様々な国からやってきた肌の色の違う仲間が増えた
    グローバル化が著しい現代のこの国で
    当時犯したような過ちを犯さないためにも。

  • 吉村 昭 「関東大震災」を読む=何が似ていて、何が違っていたのか?
    未だ、熱気が冷めないうちに、読むと、どうしても、感情移入が激しくなりがちで、冷静に読めないので、暫くして、ほとぼりが冷めてから、一気に読んでみた。むろん、東日本大震災との比較、検証である。事前に、予兆としても地震が、かなりの頻度で観測されていたこと、又、その後にも、度重なる強い余震があったこと。安政大地震以来の「50年周期説」についての著名地震学者間での論争があったこと。大震災による火災の被害、とりわけ、薬品火災や、石油ランプに起因した火災が、大規模に、起こりうること、水道網が、壊滅することを、既に、想定していたこと。逆に、パニックを恐れた楽観論の意図的な世論の誘導・流布。避難する人達が、家財道具を持ち出し、それに、火が飛び移って、事態を悪化させたこと。陸軍被服敞跡(現、両国横網公園)での3度に亘る大火災による竜巻も、惨事を拡大させたこと。流言蜚語による無実の人間が、(朝鮮人を含めて、日本人ですら)自警団によって、殺戮されたこと、戒厳令下、流言の防止を目的とした言論統制による唯一のマス・メディアである新聞・報道・言論統制が強まり、ひいては、言論の自由が奪われ、甘粕憲兵隊大尉による大杉栄の虐殺にも、至ったこと。(もっとも、裏付けのない記事を、新聞も、公然と、扇動したのも事実であるが、、、、、。)今日とは異なり、複数のマス・メディア、携帯電話、ラジオ、ネットや、ツィッター、動画サイト、携帯電話のワンセグTVも無いような時代に、確かに、電話・電信網や、水道が、壊滅すれば、根拠のない流言蜚語(井戸に、毒を投じたとか、放火、強奪を集団でしているとか)を信じるなという方が、逆に、当時は、難しかったのかも知れないが、、、、、。地方への鉄道輸送の再開と同時に、流言蜚語が、急速に拡散していったことも、事実である。便所の汲み取りの符号を、殺戮や強盗の暗号と誤解したり、既に、官憲は、9月5日頃までには、それらが、全く、事実とは異なった、全く、根拠の無いことを認識していたのも、事実である。買い占めや売り惜しみが、当時実際あったこと。バラック同然の貧弱な仮設住宅(?)、糞尿処理の問題、遺体・身元不明人の火葬処理の問題、瓦礫・灰燼の処理の難しさ、感染症の広がりの問題、治安の悪化の問題、復興予算の問題、等、、、今回の東日本大震災にも、全く共通する事柄が、列挙されている。実際、津波による被害もあったが、今回の大津波による被害とは、較べるべくも無い。緊急地震速報も、当初は、馬鹿にしていたが、成程、実際に、使用されてみると、今後は、やはり、ある種の実際的な役に立つツールにあるであろう。父方の祖母は、私が幼い頃、「関東大震災の時、あなたのお父さんの手を引いて、隅田川へ、逃げたのよ」と言っていたが、父は、大正7年9月20日生まれだから、丁度、満5歳になる直前であったことになる。祖母は、明治25年生まれだから、30歳一寸の頃であった計算になる。もう、その祖母も、父も、亡くなってしまった。もっと、詳しく、色々と、きいておけばよかったと後悔している。一体、現在の我々と、「何が、違い」、「何が、共通していた」のか?そして、「何が、どうして、今回も、変えられなかったのか?」政治・経済・国際状況・報道姿勢、地震科学・通信技術等、各分野毎に、改めて、熟考、検証してみたい。そんなことは、既に、「想定内」では、無かったのか?と、、、、、、。放射能、原発も、延長線上で、冷静に、再考してみたいと思った。「過ちは、再び、繰り返しません」と、言えるように、、、、、。

  • 文面からとてつもない惨状が伝わってきた。
    また人間は、情報が寸断されることによるパニックにも非常に弱いということが書かれている。代表されるのが朝鮮人の虐殺行為。このような事があった事実は日本人としてしっかりと記憶にとどめ、今後絶対に起こしてはならない。

  • 恐ろしいまでに残酷で悲惨。まさに地獄がそこにあったと。朝鮮人の集団殺害とか大杉栄事件は酷い話だけど、10万人が死んだという事実の方が重いなと…。

  • 関東大震災のことなんて知ってるよ!と思ってましたが・・・
    火事の旋風で吹き飛ばされたトタン屋根で、手をつないでいた友人の頭部が切断された・・・。被災者の証言に基づいて展開される描写は、これまでの「関東大震災」に関する知識をおおきく超えるものでした。この手の本は、一度でなくたまに読むと、日々の生活を大切にしょうと思えます・・・。

  • 火の恐怖は十分に伝わった。

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著者プロフィール

一九二七(昭和二)年、東京・日暮里生まれ。学習院大学中退。五八年、短篇集『青い骨』を自費出版。六六年、『星への旅』で太宰治賞を受賞、本格的な作家活動に入る。七三年『戦艦武蔵』『関東大震災』で菊池寛賞、七九年『ふぉん・しいほるとの娘』で吉川英治文学賞、八四年『破獄』で読売文学賞を受賞。二〇〇六(平成一八)年没。そのほかの作品に『高熱隧道』『桜田門外ノ変』『黒船』『私の文学漂流』などがある。

「2021年 『花火 吉村昭後期短篇集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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