蝉しぐれ (文春文庫 ふ 1-25)

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (470ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167192259

感想・レビュー・書評

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  • おおよそ一人の男が大人になっていく過程で経験するものが詰まっている作品。

    時と共に少しずつ変化していく友情の形。

    色恋の芽生えや年上女性に対する憧れと潔癖。

    一心で取り組む世界の話。

    世間に出るようになって経験する大人の世界と大人の男との出会い。

    そして歳月が流れてどんなにお互いの環境が変わったとしても変わることのない想い。

    琴線にぶんぶん触れます。

    読んでいると主人公を読んでいるようでその実自分を振り返っているような気にさせられると思います。

    読後感がとても清々しい一冊。

  • ちょっともうー、勘弁してくださいよ。
    我々インターネッティング世代の20代男性ともなると、時代小説とか「あー、ちょっと自分ら和風とか無理なんで(笑)」とか言いながらスターバックスでMacbookAirとかをこれ見よがしに触っちゃうわけじゃないですか。まあそんなことはしたことないんだけど、イメージ的にそんな感じだし、そうありたいという憧れは秘めてるわけじゃないですか。

    で、そんな感じで斜に構えつつも、たまにはまあシャレでこういうのもね、的なテンションで本作を読み始めると、これがまあ面白いし、やめられない止まらない状態。一気に読みきってしまいました。

    なぜジョブズの申し子たる僕が、こんなに本作を楽しめたのかというのを分析してみると、時代小説ではあるもののジュブナイルであったり、成り上がりストーリーであったり、そういう男心をくすぐる要素がふんだんに散りばめられており、またそのフォーマットをなぞっているからなのかなーとか思ったりしました。

    あと、これは誰しもが思うのでしょうが、逸平っていうキャラがいいよね。やっぱりこういう、ちょいワルだけどいいヤツの親友ポジションのキャラクターには魅力を感じてしまいます。

    それに、主人公のひたすらストイックなところも、現代日本人がとう忘れてしまった心が感じられて良いんですよね。家を重んじ、父母を尊び、そして己には常に厳しく繰り返される鍛錬の日々。こうだよ! やはり男子たるものこうじゃないと!!

    そんな憧れの気持ちを主人公に抱きつつ読み進めていたのですが、嫌悪を抱いていたはずの不道徳な男女の交わり的なものを、わりとあっさり自分に許してしまうシーンがあったりしたので、人間の本能やべえってなりました。

    あと全然関係ないけど、僕はもうすぐ30になるしApple製品はなにも持っていないので、最初のほうに書いているのは大体全部ウソです。

  •  義母の蔵書で見つけて初めて読んだ藤沢作品。好きです、この世界。もっと早く出会うべきだった!少年藩士 文四郎が成長していく姿を、細やかな描写でまさに”描き出して”います。季節の移り変わり、情景・・読んでいると、自分もそこにいるかのように風景が浮かびあがってきます。
     文四郎とお福のかなわぬ恋・・ラストは思わず涙。
     自分の思うように生きることが難しかったこの時代、それでもその道を、ただ真っ直ぐに歩いていく・・武士道を感じます。

  • 初の藤沢周平作品でした。

    作品全体を通して感じたのは、武士の清々しさ。
    全体にさらっとしているようだが、素朴な力強さを感じずにはいられない。

    切なさとスッキリとが入り交じった最終章でしたが、読後感はとてもよかったです。

  • ほんまにええ話でした。しんみり、しみじみ、切なく、嬉しく、悲しく・・・藤沢周平が好きになった一冊。

  • 1人の武士の人生を書いた作品。切ない感じ。派手さは一切ナシ。ラストらへんにちょっとわあっと思うところがあるだけ。舞台が時代物だけど、構造としては男の切ない恋心が描かれたドラマです。

  • ひたむきな少年藩士の成長の物語。悲運と忍苦。清冽な人生だ。ロマンチストの男性が好きな話なんだろうけど、ラストのしかけに、女性の心をもぐっととらえる藤沢ワールド。

  • 時代小説と言うのだそうです。NHK私の一冊。児玉清氏の推薦図書でした。清朗、颯爽、清々しい時間。友情、儚い恋。昔々の、自分の中にも在った生気の蘇る思いがしました。牧文四郎。小和田逸平。島崎与之助。なんとも素敵な仲間でした。家名のため、その誇りのため、全てが独立し、徹底した克己が当たり前だった時代。美しい自然描写にまだ懐かしさを感じられる自分でもありました。

  • 少年時代の友情、淡い初恋、勧善懲悪の爽快感。
    ド定番の時代もの。
    物語はさくさく進み、続きがどうなるのかと気になって一気に読みました。

    田圃道に滲む夕陽や、松林でけたたましく鳴く蝉の声。
    実際に体験したことはないはずなのに、なぜか懐かしい郷愁におそわれる。

    「高い空に、銀盤を嵌めたような月が光り、人影もない屋敷町の幅ひろい道を照らしていた」

    文四郎に身の危険が迫っている夜の描写。銀盤のように冷たく感じる月の夜、という鋭く、どこか不穏な空気感が醸し出されている。

  • 歴史小説を初めて読んだんですが、藤沢周平の文章は景色や状況の表現がとても綺麗だなと感じました。内容も1人の若い武士が成長していく物語で、いくつもの試練を乗り越えていく様子がとても面白かったです。特に後半は大きな事件も起きてくるので、止まらなかったです。

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著者プロフィール

1927-1997。山形県生まれ。山形師範学校卒業後、教員となる。結核を発病、闘病生活の後、業界紙記者を経て、71年『溟い海』で「オール讀物新人賞」を受賞し、73年『暗殺の年輪』で「直木賞」を受賞する。時代小説作家として幅広く活躍し、今なお多くの読者を集める。主な著書に、『用心棒日月抄』シリーズ、『密謀』『白き瓶』『市塵』等がある。

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