新装版 テロルの決算 (文春文庫) (文春文庫 さ 2-14)

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  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (373ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167209148

感想・レビュー・書評

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  • 冒頭の山口二矢の読売新聞と浅沼稲次郎の背広、運命の必然とは確かに存在するのかもしれないと思った。決行当日の僥倖も運命の必然が導いたものだったのかもしれない。渾身のノンフィクション、そんな言葉がぴったりの作品だと思う。

  • ノンフィクションは大好きだが、沢木耕太郎氏の著書を読むのは実は
    初めて。

    1960年に起きた浅沼稲次郎暗殺事件
    http://p.tl/kP5C
    の犯人17歳の山口二矢と
    政治家浅沼稲次郎の生涯と事件、その後を追ったノンフィクション。

    沢木氏はこの著書を書き初めたのが私と同じ20代後半。
    正直よくもまぁここまで調べたもんだと本当に感嘆した。どうやって調べたんだろう?

    犯人、被害者の生い立ちはもちろん事件当日の動きまで
    本当によく調べている。

    17歳の山口がその純粋性ゆえにテロを決断した考えの推移や、当日いとも
    簡単にテロを完遂してしまう偶然、17歳でありながら落ち着き払ってテロの完結、
    自殺にまで流れていく様がよくわかる。

    個人的には人の決断とはこうあるべき、というのが一番の学び。
    山口の、行為については一切の後悔もなく、穢れなく、ただ事件としての被害者や
    関係者に詫びを入れる様子は本当に17歳か、と思う。

    今はどうかわからないが、当時の右翼では山口は神格化された存在になったそう。
    その理由もよくわかるような内容になっていると思う。

    沢木さんのファンになりそう。

  • 『ぼくらの頭脳の鍛え方』
    文庫&新書百冊(佐藤優選)164
    国家・政治・社会

  • 普段読まないジャンルだったが、興味があったので気にしてみました。
    自分の中にも、原理主義とゆうか潔癖主義なところがあり、この本を読むことがきっかけで右とか左とかに興味を持ってしまうのではないかと言う恐れがありました。結論としてはきれいなだけで正しいのか、きれいなだけで世の中を変えられるのかということをに強い興味を持ちました。
    今、水滸伝も読んでいる途中なので、志の綺麗さと、実行していくことの難しさについて考えさせられました。

  • 浅沼稲次郎は「いねじろう」と読むんだと知ることができました。

  • 浅沼稲次郎がヤマグチオトヤに刺される映像を子供の頃のテレビで決定的瞬間とかなんとかで見た記憶から、この本に至ったが、両者の人物像に迫り、残された世界を追求して描かれた内容に深く引きずりこまれた。
    あとがきも素晴らしい。

  • 若きテロリストと、その対象となった者の双方を、等しく取り上げ、理解しようとする。それによって、この一瞬の出来事を立体的に描くことに成功している。
    素晴らしいドキュメンタリー。

  • 1960年10月12日。東京の日比谷公会堂では自民党・社会党・民社党の
    3党首による立会演説会が行われていた。

    民社党委員長の西尾末広の演説が終わり、社会党委員長の浅沼稲次郎
    が壇上に立つ。

    会場の右翼からは凄まじい怒号とヤジが飛ぶ。警戒する警備陣の
    隙をつくように、ひとりの少年が壇上に駆け上がった。その手には
    鈍く光る刃物が握られていた。

    演説中の浅沼委員長に体当たりするように、手にした刃物で刺殺した
    犯人は山口二矢。当時17歳。

    60年代安保の国会突入の際に亡くなった樺美智子が学生運動の象徴に
    祭り上げられたように、二矢はこの暗殺事件を起こしたことで右翼の
    なかで英雄として祀られることになる。

    本書はテロの対象とされた浅沼稲次郎と、テロリストとなった山口二矢
    のふたりの生い立ちから事件に至るまでを綿密に描いている。

    「万年書記長」と呼ばれた政治家と右翼少年。立場も思想もまったく
    異なるふたりだが、根底には愚直なまでの信念があったのではないか。

    何故、殺されなければならなかったのか。何故、殺さなければならな
    かったのか。61歳と17歳の人生は、「死」によって交錯した。

    テロは憎むべきものである。しかし、本書で描かれている二矢には
    少年期特有の青臭さはあるもの、憎しみが湧かない。それは彼が彼
    なりに、この国を思った真っすぐさが感じられるからだろう。

    そして、一方の浅沼稲次郎には救われなさを感じる。私を滅し、庶民の
    為、党の為に尽くした政治家。与党からも、右翼からも個人としては
    「善人」と評価された人は、その死によって惜しまれるどころか党内
    からは死んでくれてよかったとまで思われる。

    弾圧の時代の浅沼の軌跡は壮絶である。加えて2度にわたる発狂を経て、
    やっと手にした委員長の座にありながら凶刃に倒れなくてはならなかった
    とは。これが「運命」と言うならば、浅沼の運命は哀し過ぎる。

    どちらがいいとか悪いとか、著者は一切の判断を下していない。
    ふたりの人生を積み重ね、事件の背景を描き出したノンフィクションの
    名作である。

  • 「深夜特急」のイメージで読み始めてはいけない。これはまったく異なる種類のもの。細かく調べてはいるのだけど、まったくもって単調な「記録」。

  • これまた、読んでいそうで、実は読んでいない名作を読んでみようシリーズの一環で読んでみた。
    沢木耕太郎の本は、好きな本と嫌いな本に分かれるのだが、この本は好き。ちなみに嫌いな本は、一言で言うとカッコ付けているやつ。
    好きなのは、深夜特急とか。
    恐らく50年程度前の話なのだが、真剣に政治活動をしている人々の姿を見て、今の自身の姿を反省した。
    蟹工船のレビューにも書いたのだが、
    今の人たち(一般人も政治家も)は、少しでも自分が得する事しか考えていない。精神的には乞食のようだ。
    ほんの数十年前の話なのに、今と精神構造が大きく変わってしまったようだ。とても幼稚な方向に。
    生活保護の不正受給なんて最たる事例だ。卑しさを感じるからニュースを見ていても気持ちが悪いのだろう。

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著者プロフィール

1947年東京生まれ。横浜国立大学卒業。73年『若き実力者たち』で、ルポライターとしてデビュー。79年『テロルの決算』で「大宅壮一ノンフィクション賞」、82年『一瞬の夏』で「新田次郎文学賞」、85年『バーボン・ストリート』で「講談社エッセイ賞」を受賞する。86年から刊行する『深夜特急』3部作では、93年に「JTB紀行文学賞」を受賞する。2000年、初の書き下ろし長編小説『血の味』を刊行し、06年『凍』で「講談社ノンフィクション賞」、14年『キャパの十字架』で「司馬遼太郎賞」、23年『天路の旅人』で「読売文学賞」を受賞する。

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