新装版 テロルの決算 (文春文庫) (文春文庫 さ 2-14)

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  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (373ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167209148

感想・レビュー・書評

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  • 日本もかつては多くのテロがあった。幕末、明治、戦前、戦後と、一人の要人を暗殺することで、何かが変わると思っているのか。
    このノンフィクションは、テロによって殺した側と殺された側をそれぞれ描いたものだ。あとがきのところで、作者は、若い二矢が、もし若くして命を絶つことがなければ生きたであろうその後の姿を想像を出来ないという。彼は自らその生涯を終わらせてしまったわけで、自らも将来のことは考えていなかったのだろう。若者は夢を持ち、自らの将来を描くのだが、それは全くなかったのだろう。今の世の中もそういう夢がない若者が多い。

  • ノンフィクションってこんなにドラマチックに描けるんだ!と感動した本。
    私は沢木耕太郎さんの本は深夜特急から入ったけど、この本を読んでその力強さに驚いたことを覚えています。

    その力強さと丁寧さ、そしてわかりやすさで描ききっており、この本を読んだ後、私はしばらくフィクションが読めなくなりました笑
    私とノンフィクションを本格的に出会わせてくれた大切な一冊です。

  • たぶん大学に入ったころ読んだ。山口二矢という名前をこの本で記憶する。ときどき読み返すけど新鮮。

  • 山口二矢について皆さんはどう思っただろうか。私は今まで右翼の手先としか思っていなかった。しかし読んでみてどうだろうか。私は二矢少年は普通の学生だったのでは思った。ただ趣味が思想が右翼に片寄っただけなのではないか。
    浅沼稲次郎は現代をどう思うだろうか。今の世の中は浅沼氏にとって物足りない世の中にと感じるのではないか。庶民のための政治家がいないだけでなく、変わろうとする庶民すらいなくなったからだ。
    この二人が日比谷公会堂の舞台上で人生が重なり合うまでの刻一刻と迫りくる時間には手に汗を握ってしまう。当時の関係者や親族にかなりの時間割いたのだろう。とても生々しい会話、情熱が伝わってくる。
    作者はあとがきで本は歳とらないと書いていた。現代の状況も考えるととてもよく分かる。
    ノルウェーでもテロルにより多くの方が亡くなった。そして日本でもそんなに遠くない昔、テロが起こったことを忘れてはいけないはずである。しかし、この事件に関してはあくまでも過去の一件としか思われてない。ノルウェーにしろ、浅沼刺殺事件の当時は似ている部分がある。それは大衆の混乱なのである。ノルウェーは移民が多い国である。犯人はこう言った。「これからはグローバルと保守の戦いである」と。まさに日本も含めどこまでグローバル化していいのか思考している時代である。そして浅沼刺殺事件の当時は安保闘争であり、これからアメリカと一緒に生きていくことを決める日本の分岐点であった。
    このように大きく時代が変わっている現在なのでこれから必要、心構えとしてこの本を読むべきなのでは思う。

  • 構成にとにかく驚いた。渦巻いてるような流れ。見事だなあと感心。

  • GWで読み終わろうとしたらピンポイントでちょうど
    のニュースが。

    http://mainichi.jp/select/jiken/news/20090503k0000m040074000c.html

    平和とか進化とかいろいろ考える今日この頃です。

  • 日本社会党委員長浅沼稲次郎と、テロによって浅沼を刺殺してしまった山口二矢の物語。17歳の二矢の純粋過ぎる生きかた、社会主義者として生きた浅沼稲次郎の苦悩の人生…、はっとさせられる描写の連続です。そして悲しい結末…。

    沢木耕太郎20代最後の作品。ノンフィクションとしての内容と完成度(まとめられかた)もさることながら、20代でこの描写の巧みさ!というところがまた衝撃的です。

  •  山口二矢烈士と、老政治家浅沼稲次郎双方の人生が交錯した「一瞬」を細かく描いたノンフィクション作品。

     烈」という漢字には烈火、烈々というように激しさ、勢いの良さがこめられている。烈士とは、「激しい気性をもって、自分の信念を貫きとおす男子」を指すらしい。山口二矢烈士は十七という若さで、野党政治家である浅沼稲次郎を討った。そこには、純粋な国を愛する気持ち、憂える気持ちが交錯した結果だと思う。罪を起こした彼に賛同することはできないが、そこまでの行動力や純粋に国を思う気持ちには頭が下がる思いがした。山口二矢烈士の左翼への怒り、それとは同時に右翼への絶望はどのようなものだったのか。自分を奮い立たせ、起こした行動の結果残ったものは一部右翼、保守派からの賛美だけなのか。守りたかった国の未来はこんなものでいいのか。そこまでして残したものは何か私にはわからなかった。

     読んでいて苦しかった作品でした。それは、私もまたこの国を憂えているからだと思う。今となっては、山口烈士のような人間は現れることはない。時代も変わった。なんだかなぁ、こんなもんかあ、と思う世の中だ。今は亡き若き志士に心から同情する。

  • 「若さ」が「純真無垢」であるからといって、自らのなした行動に対してそれが、いかなる意味においても「免罪符」になるとは必ずしも言えないでしょうよ、と一般論として本書を読んでふと浮かんだこと。彼にとっての「最高の瞬間」は、その時のその場所でのそれでしかなかったわけで、筆者の言う、彼の「生きていたら」は全く想像しえない、は思うに説得的。

  • 昭和35年10月12日、社会党委員長の浅沼稲次郎が右翼の少年、山口二矢に刺され死亡する事件を追求したノンフィクション。

    浅沼、山口の双方の生い立ち、背景が丹念に描かれている。最後まで読み終わってから序説を改めて読むと、その意味がわかる気がした。人が信念を持つということについて考えさせれる。

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著者プロフィール

1947年東京生まれ。横浜国立大学卒業。73年『若き実力者たち』で、ルポライターとしてデビュー。79年『テロルの決算』で「大宅壮一ノンフィクション賞」、82年『一瞬の夏』で「新田次郎文学賞」、85年『バーボン・ストリート』で「講談社エッセイ賞」を受賞する。86年から刊行する『深夜特急』3部作では、93年に「JTB紀行文学賞」を受賞する。2000年、初の書き下ろし長編小説『血の味』を刊行し、06年『凍』で「講談社ノンフィクション賞」、14年『キャパの十字架』で「司馬遼太郎賞」、23年『天路の旅人』で「読売文学賞」を受賞する。

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